空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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大凍亜連合編・承

ep175 反転する大凍亜獣:ターニングベヒモス

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「まずは挨拶代わりだ! こいつを受け取りなぁあ!!」

 大凍亜連合総帥、氷山地 猛。コードネームをターニングベヒモス。
 そいつとの開戦一発目に放つのは、アタシが両手で作り出した電撃魔術玉。
 そこまでエネルギーを溜めてはいない。どちらかというと牽制目的の攻撃。
 アタシも氷山地の能力を知っているからこそ、この一発目の結末は予想できる。

「小癪な真似やなぁ! 儂にこないなもん、通用せんことを理解でけへんのかぁあ!?」


 バシュンッ


 その予想通り、氷山地は向かってきた電撃魔術玉に手をかざし、瞬く間にかき消してしまった。
 氷山地の能力はエネルギーが持つ熱ベクトルの反転。それすなわち、向かってくるエネルギーの無力化。
 電撃魔術玉みたいな電気エネルギーの塊なんて、氷山地にとっては吹きかけられた息と変わらない。

 ――そんなことはこっちも承知。少しでも気を逸らせればそれでいい。

「ほれ! まだまだアタシの攻撃は終わんないよ! トラクタービーム!」

 そうして作ったわずかな隙を突き、アタシはトラクタービームをステージの上部へと放つ。
 狙うは照明を設置するための鉄骨。それをトラクタービームで引っ張り、氷山地の頭上目がけて落としにかかる。

「質量が伴っとれば、儂を圧し潰せるとでも思うたか? それは温い考えっちゅうもんじゃぁああ!!」


 バシュゥウン!


「チィ!? 落下の運動エネルギーまでかき消すのかい!?」

 だが、これも氷山地に防がれてしまう。
 落下してきた鉄骨を両手で支えるように構え、その衝撃さえも食い止めてしまう。
 本当にまともな攻撃が通らない。熱を反転し、あらゆるエネルギーを無力化する能力がここまで厄介だったとは。

「こないなもんか? こんぐらいやったら、儂にもできる話やぞぉお!!」
「うぐぅ!? このパワーは!?」

 さらに氷山地は食い止めた鉄骨を、アタシの方へと振り回してくる。
 純粋にパワーが凄いのか、体内に内蔵したナノマシンの影響なのか。襲い来る鉄骨に対し、アタシも食い止めるので製一杯だ。

 ――それどころか、触れた鉄骨がどんどん冷たくなり、アタシの体温をも奪い始める。

「間接的にでも、儂に触れたのがマズかったのぅ。どないに超パワーを持った空色の魔女でも、そのパワーを発揮できなきゃタダの小娘や」
「の、能力を伝搬させることもできるとはね……! だ、だったら……もう一発!!」

 どうにも、氷山地の能力はアタシの予想の上を行っている。
 お互いに鉄骨を抱えた状態での押し相撲。この状況は圧倒的にアタシの不利だ。
 氷山地は鉄骨越しにアタシの体温を反転させてくるようだが、直接触っていない分だけその効果はまだ弱い。
 その間に形勢を逆転させるためにも、アタシはトラクタービームでさらにもう一本の鉄骨を氷山地の頭上へと落す。


 ガララァア! ――バシュゥウン!!


「無駄や! 数を増やしたところで、儂の能力の前では全部が無意味! むしろこれで……おどれを挟み撃ちできるわぁあ!!」
「あっぐうぅ!?」

 だが、もう一本の鉄骨も氷山地に決まることはなかった。
 それどころか氷山地は二本となった鉄骨を両脇で抱え、先端にいるアタシを挟み込んで圧し潰そうとしてくる。
 こっちは氷山地の能力で体温エネルギーはどんどん奪われていくし、完全にジリ貧状態。
 アタシも徐々にその力に負けて、体中の骨が軋み始める。

「正義のヒーローつっても、所詮は世間知らずのガキに過ぎへん! こんまま鉄骨に挟み込まれて、後悔しながら死んでまえやぁあ!!」
「んぐ……つ、冷たい……! 潰れる……!」

 氷山地も勝ちを確信したように、鉄骨に能力をかけながら、アタシをそのまま挟み込んでくる。
 こちらの体感からすると、ペンチで挟まれたような気分だ。鉄骨ももう極低温まで冷え切り、アタシの体もどんどん熱を失っていく。
 アタシはこのまま、冷たい金属に挟まれて死ぬしかないのかね――



 ――ただ、これで最後のチャンスは訪れた。



「……ねえ、あんた。超電導磁石って……知ってるかい?」
「あぁ? この期に及んで、何をほざきおるんや?」
「リニアモーターカーとかは聞いたことあるでしょ? あれに使われてる原理さ。極低温まで冷やした金属に電気を流すことで、超強力な磁力を持った磁石を作り出す。それによって発生した磁界により、物質を一気に加速させて発射させる……って、こっちはリニアレールガンの話かね?」
「さっきから何をわけ分からんことをほざいとるんや? 体が冷えすぎて、頭に血ぃも回らんようになったか?」

 二本の鉄骨を両脇で抱える氷山地に対し、アタシはこれからやることを軽く口にしてみる。
 まあ、理解してもらおうとは思っていない。こっちだって、氷山地が少し考えている間に反撃の準備をしたいだけだ。

 ――体内の生体コイルをフル稼働。同時に体内へと溜まった電力はまだ解き放たず、コンデンサのように蓄える。
 勝負は一瞬。体内の電力を一気に放出して、まずやることは――


 バチバチバチィィィイ!!


「鉄骨に放電やと!? せやけど、それが無意味なこと――」
「これはただの第一段階さ! 今この鉄骨はアタシの電力により、リニアレールガンと同じ発射台へと変化した! そして――」

 ――アタシを挟み、反対方向に氷山地がいるこの鉄骨のレールに大量の電気を流し、超電導磁石へと変える。
 無論、これだけで終わるはずがない。このレールガン発射台と化した鉄骨も、氷山地の能力ですぐに効果が解けてしまう。

 だから、アタシもすぐさまこの即席レールガンの弾丸を用意する――



「このアタシ自身が……このレールガンの弾丸だぁああ!!」
「なっ……!?」



 ――その弾丸とは、他でもないこのアタシ自身。
 レールガンと化した鉄骨の間で支えていた両手を放し、そのまま身にかかる勢いに任せて前へと進む。
 氷山地は熱ベクトルを反転させるが、その能力は両手でしか使えない。

 その両手を塞ぎ、能力で冷え切った鉄骨をレールガンへと変え、先端に氷山地を捉える。

 ――これこそがアタシの用意した、氷山地を倒すための切り札だ。

「氷山地ぃぃぃいい!!」
「く、来るな! クソッ! その勢いだって、儂の能力で――」

 氷山地も鉄骨から手を放し、アタシを迎え撃とうとする。だが、その判断はもう遅い。
 レールガンの弾丸そのものとなったアタシのスピードなんて、発射された時点で反応できるものじゃない――



「どりゃぁあああ!!」


 ボゴォォォオオンッ!!


「バグアァ……!?」



 ――その勢いから放たれたアタシの拳は、氷山地の懐に完全に決まった。
 鉄骨から両手を放したことがかえって災いしたのか、氷山地はその勢いを殺しきれず、大きく後方へ吹き飛んでいく。

「……ワームホールを作ってるその装置も、あんた自身の身で責任を持って止めちまいな」
「ク……クソがぁあああ!!??」

 そして氷山地が吹き飛んだ方角にあるのは、ワームホールを生成していたメビウスの輪。
 あれさえ壊せば、このワームホールも納まる。歪んだ時空も元に戻る。



 ――その引導は、引き金を引いた氷山地自身にやってもらおう。


 ドギュアァァアア!!


「わ、儂の野望が……。過去の……改変が……」
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