空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
197 / 465
星皇カンパニー編・転

ep197 魔王城と化した要塞を突破するぞ!

しおりを挟む
「辿り着くことができるか……って、また何か準備して――」


 ビュゥン! ビュゥン!


「――って、うわわっ!?」


 アタシが地下室を出たタイミングを合図とするかのように、館内放送でラルカさんが不吉なことを口走ってくる。
 そしてその言葉の通り、突如廊下の陰から何かがアタシ目がけて飛んできた。

 どうにも、アタシも単純に社長室に向かえるわけではなさそうだ。
 潜入前に抱いた魔王城のような星皇カンパニーの印象も合わせて、本当にこのダンジョンと化した本社ビルを踏破しないと、社長室まで辿り着けそうにない。

「こ、これって、ドローン!? にしてはベーゴマみたいなデザインで、刃までついてるなんて、殺傷力剥き出しにし過ぎでしょ!? これもラルカさんの用意したトラップ!?」
【いえ、今回は自分や部下は関与しておりません。こういう室内戦においては、その道の専門家にお任せします。将軍艦隊ジェネラルフリートの五艦将が一人、艦首将がミス空鳥のお相手をさせていただきます】
「まーた、将軍艦隊ジェネラルフリートのお仲間さん!? アタシ一人相手に、最高幹部をさらに追加投入するかねぇ!?」
【それぐらいの実力だとは評価しています。艦首将の包囲を掻い潜り、見事自分のいる社長室まで辿り着いてください】

 やはりと言うべきか、流石と言うべきか。ラルカさんはアタシが星皇カンパニーに忍び込むことを予測した段階で、対策はすでに打っていた。
 アタシに襲い掛かるのは、刃を回転させながら飛んでくるベーゴマ。いや、ドローンと言うべきなのだろうか?
 ドローンの飛行性能とベーゴマの突進性能をハイブリッドさせたような、宙を舞う旋回斬撃兵器。空は飛ばないけど、同じような玩具を見たことがある。
 それも一つではない。躱しても躱しても、次から次へとアタシ目がけて襲い掛かってくる。

 ――そして、これらを操っているのはラルカさんではなく、以前の巨大サイボーグ艦尾将とは別の将軍艦隊ジェネラルフリート幹部。
 戦力を増強していたとは聞いていたけど、まさか最高幹部がもう一人、対空色の魔女アタシ用に投入されていたなんて。

「もしかしてとは思うけど、その五艦将ってのが全員この場に集ってるとか!?」
【それについてはご安心ください。今この国に集結させられた五艦将は、自分を含めて四人です】
「ああ、そうかい! 五人のところを、四人に留めてくれて感謝するよ! まあ、アタシ一人に四人も用意してる時点で、大概な話だけどねぇ!」

 なんとかベーゴマドローンを避けながら前へ進み、館内放送で声をかけるラルカさんにも文句を述べる。
 もっとも、こんな状況でアタシが文句を述べたところで、ラルカさんが何かをどうこうするはずがない。てか、この人も今は見物者か。
 アタシの迎撃は完全に艦首将と呼ばれる仲間に任せ、淡々とこちらの言葉に返事だけしてくる。

 ――それにアタシの方も、今はラルカさんに構っている暇はなさそうだ。


 ビュゥン! ビュゥン! ビュゥン!


「ちょ、ちょっと!? まだ数が増えるってのかい!? これを全部艦首将とか言う奴が、一人で操作してるってこと!?」

 デバイスロッドに飛び乗り、宙を舞いながら廊下の中を飛んで先を目指すも、ベーゴマドローンの脅威は一向に収まらない。
 距離を放して逃れようとしても、新たなベーゴマドローンが追加で投入され、アタシの前方を塞ぐように立ちはだかってくる。
 これらを操る艦首将本人の姿は見えないが、これだけの飛来物を同時に並行して操作するなんて、並大抵の技術ではない。

 ――物陰からアタシの命を刈り取ろうとする、これまた暗殺に特化したような技。
 将軍艦隊ジェネラルフリートという軍隊の脅威を、改めてこの身に感じてしまう。

「ともかく、こっちも早く最上階を目指した方が良さそうだ! どれだけ数が多くても、屋内で振り切ればこっちのもんよ!」

 それでもアタシだって、敵襲は覚悟の上でここへ乗り込んだのだ。泣き言なんて言ってられない。
 ベーゴマドローンは数を増やして襲い来るが、一度振り切ってしまえばこっちのもんだ。
 わずかな隙間を縫い、非常階段のある突き抜けを上がって最上階を目指せば――



 カァアン! ズバンッ!!


「ぐうぅ!? ベーゴマドローンが……反射してきた!?」



 ――なんとかやり過ごせたと思った矢先、周囲を旋回していたベーゴマドローンが突如加速して、アタシの腕を切り裂いてきた。
 アタシも予想できなかった変則的な加速だが、どうやらベーゴマドローン同士が衝突することで、一つのベーゴマドローンに推進力を集中させてきたということか。
 これもどこかでアタシを狙う艦首将様の技らしいけど、本当にとんでもないことを仕掛けてくる。
 旋回するコマ同士の推進力を合わせ、アタシを狙ってくるだって? 単純に見えるけど、回転や場所とかを相当見極めないとできない芸当だよ?

 ――ラルカさんが屋内戦を一任した意味が分かる。

「全体が回転してるからか、トラクタービームもまともに反応しないじゃん! せめて、本体がどこにいるのかが――」


 カァアン! ズバンッ!!


「ぐぬうぅ!?」

 アタシは非常階段の突き抜けをロッドで上昇して逃げ続けるも、ベーゴマドローンの猛攻は止まらない。
 下から虫が湧き上がってくるかのように、いくつものベーゴマドローンが反射し合いながら、アタシの体を切り刻んでくる。
 非常階段に逃げ込んだのがマズかった。この狭いスペースでは、アタシの方が飛んで火にいる夏の虫という奴だ。
 回転のせいでトラクタービームで投げ飛ばすこともできず、操縦する本体の姿も確認できず、アタシはどんどんと服の上からボロボロに刻まれてしまう。

「ハァ、ハァ……! 乙女の柔肌を狙ってくるなんて、なんともいやらしいドローンなこった! こうなったら、まずはこれをどうにかしないと!」

 一発一発は耐えられても、この数の暴力はアタシでも凌ぎきれそうにない。
 下手に逃げの一手を打つよりかは、まずはこいつらを全部叩き落した方が戦略的か。
 そう思ったアタシは一度踊り場に飛び降り、デバイスロッドを両手で構えて――

「吹っ飛べぇえ!!」


 カッキィィンッ!!


 ――ベーゴマドローンを野球のボールよろしく、フルスイングでバッティングし始めた。
 数も多いし、一度打ち返しても反射して再度襲い掛かっては来る。だけど、このままアタシも切り刻まれ続けるのは嫌だ。
 こちらも負けじと、襲い来るベーゴマドローンをバッティングしまくり、とにかくその連撃を振り払う。


 カキィン! カキィン! ――ズバンッ!


「いってて……! 全部は無理だけど、これで十分な時間はできたかねぇ! そいじゃ……これでトドメだぁああ!!」

 全てのベーゴマドローンを打ち落とすことは流石に無理だ。アタシは別にプロ野球選手でも何でもない。
 それでも、非常階段の下から這い上がってくるベーゴマドローンは、そのほとんどがアタシのバッティングで下方へと集中していく。

 ――このタイミングなら、あの厄介な旋回する刃も一掃できる。
 たとえトラクタービームは効かずとも、瞬間的な衝撃には耐えられまい。

 アタシはデバイスロッドから手を放し、両手の平を合わせて力を込め、その間に出来上がったものを眼下へ叩きつけるように放つ――



「電撃魔術玉ぁぁああ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...