空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
228 / 465
魔女と家族の新たな日常編

ep228 野暮な取材はお断りさ!

しおりを挟む
「ですが、あの騒動の最中にあなたを目撃したという情報も――」
「ノーコメントったら、ノーコメント。アタシがあの一件に関わってたとしても、話すことなんてなーんにもないよ」

 アタシも盛大に関与していた、星皇社長によるワームホール事件だが、そのことは世間に多少なりとも知れ渡っている。
 知れ渡ってるって言っても『星皇社長が大凍亜連合をバックから動かしていたらしい』とか『空色の魔女が白い魔女装束でいたらしい』といった噂レベルの話だ。
 だけども、マスコミさんからしたらそんな噂話でも、食いつくには十分な餌みたいでね。最近はアタシが騒動に駆けつけた場に現れては、その話をしつこく聞いてくるのよ。

「ただ、大凍亜連合の暴動と星皇社長の失踪は同時期に起こっており、そこに空色の魔女も居合わせていたのです。何か知っていることがあれば、話していただきたいのですが……?」
「本当に何も話せないのさ。……星皇社長の件については、本当に何もね」

 それでも、アタシはこの手の取材に関しては徹底的にはぐらかして対応している。
 だってさ、この話の行きつく先って、結局はもうこの世界にいない星皇社長の話なのよ? そんなことを今更ほじくり返して、どうなるって言うのよ?

 星皇社長は公には行方不明って扱いになってるし、そこの真実を追いたくなる気持ちも分からなくはない。
 あの人は噂の通りに大凍亜連合をバックで操るどころか、将軍艦隊ジェネラルフリートなんて言う傭兵部隊とも契約していた。
 そして『我が子を蘇らせるために、世界を巻き込もうとした』という真実をアタシは知っている。
 こんなことが世の中にリークしてしまえば、もうこの世界にいないとは言っても、星皇社長の尊厳を傷つけてしまう。

 ――アタシはただ、それが嫌なんだ。
 確かに星皇社長の行いは許されざるものだったけど、アタシが最後に見たあの人の姿は狂気から解放され、自らの行動への責任を果たした一人の人間だった。
 別にこれだって、アタシがそう思うからそうしてるだけって話。だけど星皇社長の尊厳を傷つけないためにも、アタシはこの真相を語るつもりなどない。

「そ、そうですか……。では、一部で目撃情報が上がっている白い魔女装束についても、ノーコメントと言うことで?」
「あー……うん。あれもノーコメントでお願いね。これからはいつも通り、この黒い魔女装束でやってくつもりだから」

 それと、インタビュアーさんも語る白い魔女装束――モデル・パンドラについても詳細は伏せておこう。
 こっちに関しては星皇社長の尊厳っていうより、単純に説明が面倒なのよね。
 パンドラの箱の話だってあるし、そもそもモデル・パンドラ自体が普段のヒーロー活動自体に向いてないってのもある。

 変身ブローチに収納不可で、装着中はガジェットも使用不能。
 さらに星皇社長との決戦の時にも感じたんだけど、あれってかなり燃費が悪いのよ。
 あの時は必死だったし他に手がなかったからそれでよかったけど、日常の中でヒーローとして急遽出動する必要が出てくると、こういう携帯性と燃費の悪さは大きなデメリットだ。
 まあ、モデル・パンドラを使わなきゃいけない事態なんてそうそうないし、むしろ使わずに済むならそれが一番。
 よって、今後も普段のヒーロー活動においては、初期の黒い魔女装束で十分だ。



「……ッ!? 隼さん、あのビルの屋上!」
「む……!? まだ取り残しがいたってか!?」



 アタシが軽く取材を受けていても、ショーちゃんは警戒を怠らずに何かを見つけてくれたようだ。本当に頼りになる。
 指差してくれた方向に軽く目をやると、スナイパーライフルを構えた男がこちらを狙っているのが見える。
 とはいえ、その銃口はブレブレだ。ラルカさんみたいな超凄腕のスナイパーというわけでもなく、アタシを敵視しつつも戦い慣れしてない下っ端構成員ってところか。
 あの様子だと、まともに引き金も引けそうにないね。

 どうにも、アタシもこれまでの活動の中で『戦いの勘』みたいなのが見えてきたようだ。
 本当はそんなもの欲しくもなかったんだけどね。まあ、成り行きだから仕方ないね。

 ――とりあえず、見つけてしまった以上は早々に対処させてもらいましょう。
 アタシ以外の人に当たったら大変だ。

「ちょいと失礼~。ヒーロー記者会見もお開きでね~」
「そ、空色の魔女さん? 杖なんか構えて、何をするつもりで?」

 周囲に群がっていた報道陣をかき分け、アタシは手に持っていたデバイスロッドをスナイパーライフルのように構える。
 先端はこちらを狙うスナイパーに合わせ、あっちと同じように片目を瞑って狙いを定める。

 ――これは星皇社長がアタシに託してくれた改良型デバイスロッドが可能にした新技だ。
 導電率の向上とコンデンサのような蓄電機能を両立させ、そのエネルギーを一気に解放する電気の弾丸――


 ビュウゥウン!!


「つ、杖からビームが!?」
「見ろ! あのビルの屋上にまだ誰か隠れてたぞ!」

 ――ありていに言えば、ビームライフルという奴だ。威力も調整して、屋上にいたスナイパーも無力化完了。
 コンタクトレンズのターゲット機能も合わせれば、こういった遠距離狙撃もできるようになった。
 星皇社長の技術はやっぱり凄い。短時間の間にこんなことを可能にする機能を搭載してくれるなんて、アタシにだってできるかどうか。
 そもそも星皇社長はアタシの能力を見知ってるだけで、解明まではできていなかったはずだ。これってつまり、設計図なしでこんな技術を搭載してくれたってことよ? これ、マジで凄くね?

 ――できることなら、星皇社長にはお礼を言ってからお別れしたかったもんだ。

「他に敵さんが隠れてる様子はなさそうだねぇ」
「ボクも確認した。大丈夫」
「そっか。そいじゃ、アタシ達は帰るとしましょうか」

 ともあれ、これにて今回の大凍亜連合残党討伐は終了。ショーちゃんとも再度周囲は確認したし、用が済んだ以上は直帰したい。
 そろそろ夕飯の時間でお腹も空いてきたからね。アタシとショーちゃんは一緒になって宙に浮くデバイスロッドに腰かけ、帰り支度を始める。

「す、すみません! もう少し取材を……!」
「残念だけど、アタシにも生活があるもんでね。こういう時、アタシが何て言うか知ってる?」
「え、えーっと……確かスペイン語で……」
「スペイン語であることまで出て来てて、肝心な言葉の方が出てこないの? てか、あれってスペイン語だったんだ」

 報道陣はまだしつこいけど、こっちは空を飛べるんだ。飛んでしまえば、撒くことなんて造作もない。
 そしてこういう時、アタシには決め台詞みたいなものがある。インタビュアーさんは喉の辺りまで出かかってるけど、どうにもあと一歩で出てこない感じ。

 そうやって悩んでいる間に、アタシはお暇させてもらおう。
 もちろん、答え合わせ的に決め台詞を口にしてだ。



「そいじゃ……アディオース!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

処理中です...