空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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新世代ヒーロー編

ep249 何でこのタイミングでそんな話になっちゃうの!?

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「――というわけで、あの時の二人に頼んでおいた」
「お国を動かすんじゃなくて、世論の方をネットで動かす……。タケゾーは本当に策士なもんだ」
「そうは言っても、実際に中心となって動いてくれるのは俺じゃないがな」

 休日に出かけてまでアタシのために動いてくれたタケゾーは、夕方になると我が家へと帰ってきた。
 アタシやショーちゃんのヒーローとしての立場を守る作戦に動いてくれたみたいだけど、それは同級生のインフルエンサーによってちょっとしたミームを起こすというもの。
 塵も積もればなんとやらとはいえ、この情報社会なご時世なら効果はありそうだ。現状の世論自体も空色の魔女に肯定的だし、期待も湧いちゃうね。

 ――それにしても、タケゾーはよくこうもポンポンと作戦を思い浮かべてくれるもんだ。
 アタシには無理だね。超ひも理論を紐解くよりも難しい。

「武蔵さん、ありがとう。これからどうなるか、ボクも期待する」
「俺もあの二人のことは信頼してるし、俺自身も期待して待つとするよ」
「にしても、アタシとタケゾーにフラれた二人が付き合うとはねぇ……。しかも、もうホテルでヤることヤってるとか……」

 ショーちゃんもタケゾーのファインプレーに感謝を述べてるけど、アタシとしてはそのインフルエンサー二人組の動向にも驚きだ。
 アタシ達夫婦のそれぞれにフラれる形になったのに、それがきっかけで結ばれるなんて、それなんて恋愛ゲームな話? まあ、アタシとしてもそこは素直に祝福しよう。

 ただ、そんな話を聞く中で思うこともある。
 付き合い始めたカップルはもうホテル直行で営みをしてるのに、アタシとタケゾーはまだそういう関係になってない。
 別に競うわけじゃないんだけど、それでもどこか遅れのようなものを感じてしまう。
 もう結婚してだいぶ生活も落ち着いてきたし、そういう関係にもなっていいのではなかろうか?
 こんな体質だから子供ができるのは怖いけど、きちんとゴムつけてヤれば大丈夫だよね?

 ――でも、タケゾーの方はどうなんだろ?

「……ねえ、タケゾー。アタシ達はさ……その……まだしないかな?」
「え? あ、ああ……。その……隼さえよければ……?」
「……疑問形に疑問形で返さないでよ」

 その場の流れで思わず質問しちゃったけど、タケゾーもタケゾーでどこかおどけている様子。色々と思い切った作戦は立てるのに、こういうところはどうにもヘタレだ。
 まあ、アタシもタケゾーのことをどうこう言えないか。今だって心臓バクバクで緊張しまくってるし。

「ほ、ほらさ! ちゃ、ちゃんと避妊すれば……ダイジョばない!?」
「ダ、ダイジョばないって……どっちだ!? つ、つうか……隼はその……いいのか!?」
「タ、タケゾーさえよければだよん!?」
「お、おお、落ち着け! こ、声が震えてるぞん!?」

 お互いにこれまでにないほど緊張で口が震え、まともな会話にもなりはしない。
 両手を二人であたふたさせながら、よく分からないモーションで何かを説明しあう。

 ――まあ、その何かってのは所謂『夫婦の営み』の話なんだけどさ。
 ダメだ。もうアタシの頭は完全にオーバーヒートしている。タケゾーの顔も真っ赤だし、これでは話も何もない。

 てか、そもそもはタケゾーがついでで聞いた話を持ち出すのが悪いのであって――いや、アタシだって別にタケゾーとヤるのが嫌なわけではなくて――というか、むしろ内心奥底でそろそろ『バッチ来い!』ぐらいの気概だから、これはこれでいい機会で――



「……お布団、敷く?」
「ショ、ショーちゃん!? そんな気を使わなくていいからね!?」
「そ、存在が頭から抜けてた……!?」



 ――と思考が錯乱するせいで、ショーちゃんがいることさえも忘れてこんな話をしてしまった。
 なんてはしたない母親と父親なんだ。タケゾーと揃って顔を押さえ、その場にうずくまるしかない。

「だったら、お風呂の用意する?」
「そ、そういう気遣いはいらないんだけど、そろそろお風呂の時間だね……」
「そ、そうだな……。この話は終わりにして、風呂に入ろうか……」

 結局のところ、アタシもタケゾーもお互いにヘタレてしまい、続きをベッドでという話にはならなかった。
 息子のショーちゃんに異様な気の遣われ方までしてしまうし、もう穴があったら入りたい。てか、そういう知識はしっかり残ってたのね。

 でも、タケゾーのことは今もしっかり愛してるわけだし、そういう一歩進んだ関係にもなりたい。そもそも、そういう過程をすっ飛ばしてたし。
 なんだか名残惜しさも感じちゃうけど、いきなりアタシとタケゾーが合体する話なんて、考えただけで脳内回路が焼き切れる。

 ――話の発端はタケゾーだけど、アタシもヘタレすぎて涙が出てくる。





「ふぅ……いいお湯だったねぇ。タケゾー、ショーちゃん。晩御飯に――あれ?」
「風呂から上がったか、隼。ショーちゃんなんだが、少し面倒なことになった……」

 ショーちゃん、タケゾー、アタシの順番で風呂から上がってくると、タケゾーがどこか青い顔をしながらリビングで待っていた。
 そして、その手に握られているのは一通の手紙。とっくにお風呂を終えたショーちゃんも見当たらないし、これは何がどうなっているのだろうか?

「まさか、またショーちゃんが誘拐されたとか? そして、その手紙は犯人の要求と? だとしたら、すぐにでも出発して――」
「いや待て。この手紙はショーちゃん自身が書いたものだ。俺が夕飯の準備で目を離した隙に用意したようだ」
「ショーちゃんが手紙を書いて消えた? それもそれでどゆこと? とりあえず、アタシにも見せてくんない?」

 タケゾーはどこか一周回ったような冷静さを保っているが、アタシの脳内では様々な可能性が駆け巡る。
 誘拐でないとするならば、まさか家出? アタシとタケゾーがいやらしい話題なんか出したせいで、愛想を尽かせて出て行っちゃったとか?
 もしそうだとしたら、やっぱりすぐに探しに行く必要がある。
 ショーちゃんが書き残した手紙から、何か分かればいいのだが――



『ショーちゃんより。ボク、二人の営みの邪魔になりそう。今夜は顔が怖いバーのおじさんのところに行きます。二人とも、頑張って』



 ――何かどころか、全部分かってしまった。
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