空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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将軍艦隊編・序

ep294 タケゾー「声は確実に集まっている」

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 インフルエンサーカップルとの話を終え、俺は計画を次の段階へと移す。
 余計な時間はかけていられない。長引けば長引くほど、隼の立場は苦しくなる。
 俺の考えた計画の力になれる人物にもスマホで連絡し、早速会うこととなった。

「お疲れ様です、玉杉さん。急な話を持ち出してすみません」
「武蔵か。俺も事情は把握してる。……隼ちゃんもかわいそうなもんだ」

 その人物とは、俺達一家とも関わりの深い玉杉さんだ。
 先に入れておいた一報を聞き、経営しているバーを貸し切り状態にして待っていてくれた。
 この人も隼の背負っていた借金のキリトリ役だったのに、今では頼れる相談役だ。
 隼のことが本当に心配なようで、険しい顔をしながら俺を迎え入れる。

「しっかし、武蔵もとんでもねえことを考え付いたもんだな。確かにそうでもしねえと、世論なんてもんは動かせねえけどよ」
「その件についてですが、俺が依頼した通りにできそうですか? 正直、時間をかけるわけにもいきません」
「話を通せる連中には通しておいた。『以前から空色の魔女には肯定的』だった人間なら、この街にごまんといる。俺から借金してる連中なんかにも、利息緩和の条件を出して従ってもらうようにした」
「そこまでしてくれたんですか……!?」
「俺だって、空色の魔女の――隼ちゃんのファンには違いねえ。使える手はいくらでも使うさ。現状で行けば、この街の人間は味方してくれるだろうよ」

 表情こそ険しいが、玉杉さんは俺の意図を汲み取り、もうすでに大きく動いてくれていた。
 この人は裏社会にも人脈を持っているが、それは表社会でも通用する話だったようだ。
 俺が依頼していた通り、集められるだけの声を集める準備は整いつつある。

「作戦の結果までは俺にも読めねえが、確実に力になってくれる人間は集められてる。ネットの評判だかミームだか知らねえが、そんなポッと出の話なんざ、空色の魔女をずっと前から知ってる人間には関係ねえさ。事実、話を聞いた連中は『この街のヒーローのピンチは見過ごせない!』ってなもんで、全員協力的だったぜ」
「俺もそう信じてましたよ。後は政府が動くよりも早く、一斉に行動に移せれば……」

 かなり急な俺の作戦だが、それでも玉杉さんは信じて動いてくれている。
 本当にありがたい話だ。『この国全体の世論』は無理でも、空色の魔女に助けられてきた『この街の世論』だけならば、俺達の力で早急に動かすことができる。
 元より、この街の今があるのは空色の魔女のおかげだ。

 ――街を救ってきたヒーローを、今度は街の人間が救う番だ。



「……お? 色々と盛り上がっちゃってる感じ? オレッチだけじゃなく、タマッチャンにアカッチャンまで動いてたとはね」
「あ、あなたは……フクロウさん?」



 そうして話を進める俺と玉杉さんのもとに、一人の男が店へと入ってきた。
 俺も何度か会った壮年の男。玉杉さんの旧友にして将軍艦隊ジェネラルフリートの末端構成員であるフクロウさんだ。

 ――つうか『アカッチャン』とは俺のことか? この人、結構変なあだ名をつけたがるな。

「……フクロウ。どうして今この場に姿を見せた? お前のことだから『将軍艦隊ジェネラルフリートの手先』ってわけではねえだろ?」
「タマッチャンはオレッチの事情を知ってるからいいけど、アカッチャンには伏せておきたいんだよね。ちょいとタイミングをミスった感じかね?」

 フクロウさんのどこかおどけた調子に思わず困惑するが、何かしらの目的があってやって来たのは間違いないようだ。
 ただ、それはあくまで『玉杉さんと二人だけで話をしたかった』という前提が垣間見える。
 この人についてもVRワールドから帰って来た時といい、かなりの裏を抱えている人だ。
 旧友である玉杉さんにしか話せない話もあるのだろう。



「……そんなに俺の存在が気になるのでしたら、ここであなたの正体を言い当ててみましょうか? そうすれば、お互いに腹を割りやすくなるでしょう?」
「……ほぉう? オレッチの正体を言い当てるだなんて、アカッチャンはまるで探偵だね?」



 ならば、俺がこの場でフクロウさんが隠している秘密を言い当てれば、しがらみも何もない。
 何を話しに来たのかは知らないが、今の状況を考えれば俺にとっても有益な話なのは想像できる。

 ――何より、俺にはこの人の正体が見えつつある。

「フクロウさん。あなたは以前に俺達一家と会った時、VRワールドでの話を聞いてきましたよね? いや、正確には『コメットノアの話が聞きたかった』といったところでしたか」
「……その話から、どうやってオレッチの正体を推理するってんだい?」
「コメットノアは星皇カンパニーが所有する大規模なマザーAIであり、そのベースにはあの星皇社長の頭脳が使われています。将軍艦隊ジェネラルフリートに所属しながら、別行動でその詳細を探る意味。まるで『星皇社長との関り』を匂わせる態度。そこから少し推理すれば、仮説ぐらいは立てられます」
「…………」

 俺は思ったことと感じていたことを、そのままフクロウさんへと語り掛ける。
 証拠としては薄い話だが、フクロウさんはどこか神妙な顔で口数も少なくなっていく。
 その態度を見れば、俺の仮説もあながち間違いではないと考えられる。

「あの人の関係者ならば、ネットで少し調べれば出てきます。国内有数の著名人ともなれば、サイトにまとめられてもいますからね。俺が思うに『戦闘機パイロット界の梟雄きょうゆう』と呼ばれたこの人とか、いかにもフクロウさんっぽくないですか?」
「……どうにも、オレッチが気を付けるべきは魔女のソラッチャンじゃなくて、夫のアカッチャンだったみたいだな。……こりゃ、負けを認めた方がいいもんかね?」

 話を続けながらスマホで調べ物をする俺を見て、フクロウさんもどこか観念したような態度をとり始める。
 おそらく、俺の仮説は正解だ。こっちも家族を持つ身として、フクロウさんからは同じような気配を感じてはいた。

 ――それら全てに確信を持ちながら、俺はスマホの画面に映し出された『その人物』の名を口にする。
 『フクロウ』という偽名も、もはや意味を成さない。



「フクロウさん。あなたの本名は『星皇せいのう 久永ひさなが』じゃないですか? 数年前に星皇せいのう 時音ときね社長と離婚した元夫の……」
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