空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
327 / 465
将軍艦隊編・破

ep327 タケゾー「俺の役目を見失ってはいけない」

しおりを挟む
 俺と宇神が二人だけで話し合っていると、船室にいたはずのフクロウさんもデッキに上がって来た。
 口調自体はいつものように軽いが、その顔には妙な重みを感じる。

「あ、あの……隼の意識は戻ったんですか?」
「いや、まだだ。もうじきではあるらしいがな。それより、オレッチもちょいと話に混ぜてくんない? 人生の先輩として、アカッチャンには言っておきたいことがあるからさ」

 俺が身じろぎするのにもお構いなく、フクロウさんもデッキの柵に手を突きながら話に割り込んでくる。
 確かにこの人は星皇社長の元夫だから、人生としても妻帯者としても先輩ではある。
 だが、俺に話とは何だろうか?

「アカッチャンはさ、いい男の条件って何だと思う?」
「いい男の条件? やっぱりモテるとか、どことなく深みがあるとかですかね……フクロウさんみたいに」
「お? そこでお世辞に走っちゃう? 一理あるけど、そいつは『大勢の女性にモテる男』の条件だ。オレッチが言いたいのは『一人の女を幸せにできる男』の条件ってことさ」
「一人の女を……?」

 俺もまだ若いせいか、フクロウさんのような大人の話にはついていけない部分がある。
 それでもフクロウさんは俺にも分かるように、話を紡いでくれる。

「己が無力であろうとも、傍で支えになろうとする。どんな苦しみも一緒に受け止め、負担してくれる。そういう男こそが、本当の意味でいい男ってもんさ。……アカッチャンみたいにな。オレッチにはできなかった道だ」
「フクロウさん……」
「弱音を吐きたくな気持ちも分かる。だが、それはここだけに留めておきな。今の話をソラッチャンが聞けば、逆に不安にさせちまう。アカッチャンはソラッチャンを不安にさせるような男じゃないだろ?」

 その話を聞いて、俺にも少し意図が見えてきた。心のどこかで不安のあまり、俺自身が弱気になっていてはダメだ。
 空色の魔女が世間の批判の的になった時だって、隼と一緒になって将軍艦隊ジェネラルフリートから逃げた時だって、前を向いて純粋に目的を目指していたから成し遂げれたことだ。
 俺に戦う力がないことなんてもう当然の話であり、それ以外の方法で隼を支えると心に決めたじゃないか。
 一般人であろうとも、俺は街のヒーローである空色の魔女の夫。どんな苦境にあろうとも、挫けている場合じゃない。

「アカッチャンにはオレッチと同じ道は辿って欲しくなかったからさ。ちょいとお節介を焼かせてもらったよ」
「フクロウさん……。いえ、ありがとうございます」

 フクロウさんがこの話を持ち出したのも、かつての自分自身と重ね合わせたのが理由にあるようだ。
 星皇社長の傍にいることに耐えられず、逃げ出してしまったが故の後悔。先人のお節介というのも悪くない。

 ――俺だって後悔する結末は嫌だ。

「赤原君。君が傍にいるということは、空鳥さんにとってこれ以上にないほどの力となる。安っぽい物言いかもしれないけど、そういう絆の力は彼女のヒーローとしての力よりも今は頼りだ」
「宇神……。ああ、そうだな。俺は俺の方法で隼の力になる。あいつがこれからどう動くかは起きてからだが、俺はどこまでもついて行く」
「それに戦う力については……いや、まだ言う話じゃないか。気にしないでくれ」
「……? まあ、宇神に考えがあるならそれを信じるさ」

 宇神もフクロウさんの意見に同調するように俺を励ましてくれる。
 その最中でどこか気になることを言いかけていたが、こいつは考えなしに言葉を選ぶタイプじゃない。今は深く追求せず、信じることにしよう。



「み、みんな! 隼さん! 目を覚ました!」
「ショーちゃん! そうか……よかった……」



 男三人での話が落ち着くと、ショーちゃんが駆け寄って状況を伝えてくれる。
 どうやら、隼の意識が戻ったようだ。俺も安堵から少し体の力が抜ける。

「隼さん、みんなに話があるって。何か考えがあるみたい」
「病み上がりだってのに、あいつは本当に休むことを知らないな……」
「だけど、空鳥さんの意識が戻ったと聞くと、希望も見えてくるね」
「それもまた、ヒーローの人柄ってもんだろうよ。そして、それを一番支えられるのはアカッチャンといった家族さ」

 だが、次なる脅威が迫りつつある。安どの溜息をしている暇もない。
 隼も状況を理解して、何かしらの手立てを考えているようだ。
 あいつは普段、策略やら何やらを考えるタイプじゃない。ヒーローとしての力が通用する戦況でもない。
 それでも隼が動くと決めたならば、俺は喜んで傍にいて支えてみせる。



 ――この入り混じった思惑の果ての結末を、隼ならば選べると信じる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

処理中です...