空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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将軍艦隊編・急

ep334 交渉を成立させる条件が出された!

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「クジャクって確か、隼が観光案内したウォリアールの王族だったか……?」
「う、うん……。でも、なんでこの交渉の場に……?」

 モニターに突如映し出されたのは、青い髪をしたいかにもな貴婦人の姿。かつてアタシが観光案内をしたウォリアール王族というお偉いさん、クジャク・スクリードさんだった。
 確かにクジャクさんならば、フロスト博士よりも立場は上になる。ある意味、将軍艦隊ジェネラルフリートをも自在に操れる人だ。

 ――実際、無断極秘来日で牙島やラルカさんを引っ掻き回してたし。

【私の方でも隼殿や将軍艦隊ジェネラルフリートのその後は気になっており、フロスト艦橋将から報告は受け取っていた。裏で先程の話も聞いていたが、隼殿は将軍艦隊ジェネラルフリートとの戦いを終わらせたいとお望みのようだな? それも自身だけでなく、国そのものを守るためにとな?】
「そ、それはそうなんだけど……」
【ハハハッ! 相も変わらず、隼殿は人一倍の強さを持ちながらにして、誰よりも傷つけあうことを恐れているようだ! 実に珍妙と思いつつも、面白き思想よ!】

 どうやら、さっきまでアタシ達がやっていた交渉についても、クジャクさんはこっそり聞いていたらしい。
 てっきり五艦将だけだと思ってたのに、なんだか騙された気分だ。まあ、こっちがどうこう言える立場じゃないんだけどさ。

【隼殿はそのように地に伏してまで、これ以上の戦いを拒むのか? 自らが標的にされずとも、争いそのものが終わることを望むか?】
「……うん。軍事国家ウォリアールのお偉いさんには分かんないかもしれないけど、この国にとって戦争クラスの争いごとは普通じゃないのよ。アタシは人々の日常を守りたい。どれだけ人より力を持っていても、その望みのために使いたい」
【その守りたい日常の中に、隼殿を虐げる人間がいたとしてもか?】
「ああ、そうだね。アタシのことに否定的だろうと親しくなかろうと、守れる人はみんな守りたい。臆病なヒーローと言われようが、そこは譲れない信念ってもんさ」
【……フッ。ツバメは実に強き娘を育てたものだ。私ではこうもいかなかっただろう】

 クジャクさんにもアタシの意向を伝えると、どこか満足したような声を漏らしている。とりあえず飲み込んでくれたってのがモニター越しでも感じられる。
 てか、またアタシの母さんの名前を出さなかったかな? 『ツバメ』って、母さんのことだよね?
 以前も別れ際に父さんと母さんの名前を口にしてたし、もしかして知り合いか何かなのかな?

【隼殿の意向は私も理解した。こちらも観光案内の恩義として、その意を汲み取れるように配慮いたそう】
「いや、観光案内の恩返しはVRゲームを買ってもらった分で十分なんだけど……?」
【ハハハッ! そう申すでない。望み通りに戦いを終焉させる、またとない機会であるぞ?】
「それはありがたい限りなんだけど……本当にそんなことができるの?」
【私のひと声があれば、将軍艦隊ジェネラルフリートであろうとも手を引かざる得ない。もっとも沽券の問題もある故、ただで手を引かせることはできぬがな】

 アタシの疑問など他所に、クジャクさんは話を進めていく。気にはなるけど、今は目下の課題が優先だ。
 なんだか、またしてもクジャクさんがアタシに手を差し伸べてくれてるし、本当にこの戦いを止められるならば願ったり叶ったりだ。
 ただ気になるのは、アタシの願いを聞き入れるために何かしらの条件があるということ。
 それっていったい、何のことだろうか?



【フロスト艦橋将。先だって申していた通りの手筈で頼む】
「へいへーい。俺様もクジャク様のご命令とあらば、従わねーわけにもいかねーもんで。……フレイム、出ろ」
「……フオオオォ」



 その条件を示すかのように、クジャクさんはフロスト博士に合図を送る。その合図を聞いたフロスト博士もまた、弟のフレイムへと合図を送る。
 フレイムはその巨体で他の五艦将の前へ躍り出てくるけど、なんだかアタシも嫌な予感がしてくる。

【隼殿とその内縁者よ。これより、ウォリアールという『戦いの中で生きる国家』の流儀に従ってもらう。その方らでフレイム艦尾将を打ち倒してみせよ。それができれば私の権限をもってして、将軍艦隊ジェネラルフリートを完全に此度の戦いから撤収させる】
「……ええぇ!? こ、ここでフレイムと戦って勝てってこと!? じょ、条件を出してくれたのはありがたいけど、ちょいと無茶が過ぎないかな!?」
【ならば、フレイム艦尾将も含む将軍艦隊ジェネラルフリートの総力により、大規模な戦争を仕掛けようか? そう考えれば安い話であろう?】

 もうなんだかこういう展開もお約束だ。アタシがこの場でフレイムを倒せば、将軍艦隊ジェネラルフリートも戦いをやめてくれるというのはありがたいし分かりやすい。
 クジャクさんは簡単に言ってくれるけど、正直今の戦力では厳しい。モデル・パンドラを装備してても厳しい。
 前回はフクロウさんや街のみんなの援護があったから勝てた話だ。てか、今回はタケゾーを守らなきゃいけない。

 ――これぐらいの条件でないと釣り合わないってことなんだろうけど、ちょいとこっちが不利すぎない?

「ルールは簡単だ! 戦場はこのフィールド内! こっちはフレイムしか戦わねーから、勝てばテメーらの望みに従ってやるよ!」
「下手な交渉よりは簡潔で分かりやすいけど、せめてタケゾーは避難させてくんない!?」
「クジャク様も言ってただろーが。『その方らで』だから、そっちの戦力はテメーら二人だ。別にそのフィールド内でならば、どー戦っても構わねーぞ? 衝撃に耐えうるよーには設計してあるし」
「戦い方以前にタケゾーの避難を優先させて!? いや、マジで!?」

 ルール説明とかも行われるけど、アタシとしてはタケゾーの避難が優先だ。正直、こんなことに巻き込んでしまったのが申し訳ない。
 こんなことなら、心寂しくてもアタシ一人でこの場に来ればよかった。アタシの馬鹿。少しは予測できたじゃんか。

【さあ! ヒーローとそれを支えし者の夫婦よ! 今この場にて力を示し、この試練を乗り越えてみせよ!】
「クジャクさん!? ゲームの裏ボスみたいなこと言わないでよ!? ど、どど、どうしよう!? と、とりあえず、タケゾーはどこかに隠れて――」

 一応は終戦の筋道も見えてきたのに、色々と壁やら何やらが多すぎてアタシもパニック状態だ。
 そもそもフレイムに勝利するってだけでも無茶苦茶な条件だけど、とにかくタケゾーの安全が第一だ。
 そう思ってタケゾーの方に振り返って声をかけると――



「……なあ、隼。これってもしかして、昨日戦ったフラグシップギアじゃないか?」
「……はへ? 本当だ。なんでこんなところに……?」



 ――タケゾーは逃げも動じもせず、室内の隅に置かれた一台の戦車に関心を寄せていた。
 前輪代わりの二本のドリルのおかげで嫌でも思い出す。昨日、あれに襲われたんだよね。
 アタシも交渉に意識を向けてたから、全然気づかなかったや。タケゾーもよくこの状況でそっちに意識がいったもんだ。

「ボス。どうしてフラグシップギアがあそこに置いたままなのですか?」
「あー、万一俺様が直接戦闘の場に出ることになった時、白陽炉があるこの場所なら稼働できるから置いてたんだった。フレイムに搬入させてそのままだったな」
「そういえば、そんなこともおっしゃってましたね。動力部以外は復帰可能なんでしたっけ?」
「そーゆーことだ。まー、別にあそこに置いててもいーだろ。どーせ動かねーし」

 フロスト博士とラルカさんもフラグシップギアのことで少し話をしてるけど、流石にアタシ達が盛大に大破させたせいで故障はしているらしい。
 でも壊れてるのは動力部だけってことは、何か別のもので補えば動くってことだよね? このスペース内でなら、どんな手を使ってもいいってことだったよね?

 ――アタシ、いいこと思いついちゃったかも。

「タケゾー! フラグシップギアのコクピットに乗って!」
「えっ!? これって動かないんだろ!? どうするつもりだ!?」
「動かないんだったら、動かせるようにすればいいだけの話さ! こいつを使えば、フレイムにだって対抗できる!」

 思いついたら動くが早し。タケゾーに詳細を説明するよりも早く、アタシ達はフラグシップギアへと乗り込む。
 タケゾーはコクピット。アタシは機体上部。毎度の如く即席だけど、アタシにはこいつを動かす手段がある。

 ――白陽炉に近いエネルギーなら、アタシの手でも生み出せる。



「アタシ自身が動力源となって、フラグシップギアを起動させる! タケゾーは操縦をお願い!」
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