空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
373 / 465
ウォリアール新婚旅行編

ep373 もう面倒だからカジノに行きたい!

しおりを挟む
「まあ……その……この話はここまでにしねえか? また栗阿が発狂から心停止して、記憶障害にもなりかねねえ……」
「……そうだね。アタシ達も込み入った話を聞き過ぎてごめんね」
「とりあえず……すまなかった」

 フェリアさんがあまりに言い辛そうに事の真相を語るので、アタシとタケゾーも思わず謝罪してしまう。
 どっちみち、こっちもこの話を終わらせたかったところだ。着地点を探すより、理解を放棄したい。
 なんだか『まあ』とか『その』とかの言葉が増えて、話を繋げなくなってるしね。

「私は何故あんなことに? 私は何故あんなことに? 私は何故あんなことに? 私は何故あんなことに? 私は何故あんなことに?」
「何回言うのさ、洗居さん……。もうアタシ達も突かないから、安心してよ? ね?」
「申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません」
「……ダメだ、こりゃ」

 後、洗居さんが色々と限界だ。いや、もうとっくに超えてるっぽいけど。
 こっちも聞きたいことは他にあるし、早いとこ話題の方向を変えちゃいましょうか。

「ねえねえ、フェリアさん。そもそもなんでアタシがウォリアールに呼ばれたわけさ? 計らいで新婚旅行って形にしてもらったけど、本来の理由はそっちだよね?」
「……そのことか。それは俺の口からは言えねえんだ。この話を持ち出した人間が直接言うつもりらしいが……」

 洗居さん達の恋模様も気になるけど、個人としては今回の経緯の方が気になる。
 新婚旅行なんて提案を持ち出してくれるぐらいだから、何か悪い話ではないはずだ。これまでみたいに将軍艦隊ジェネラルフリートと交戦なんて話になるとは思えない。
 だとしても、アタシ一人を名指しで――しかもフロスト博士みたいなウォリアールの大物が関与してまで、わざわざ呼び出した理由は今も見えてこない。
 いい加減、引き伸ばしすぎじゃないかな? フェリアさんも内容は知ってるのに、どうして話してくれないのかな?

「……まっ、いっか。近々代表者的な人が話してくれるなら、今アタシが悩んでも仕方ないよね。それより、もっと新婚旅行的な話題がしたいや」
「そ、空鳥は相変わらず豪気というか、大雑把というか……」
「こっちの件にもツッコまないでくれると助かる……」

 でも、考えすぎても仕方ないよね。フェリアさんとタケゾーには呆れ顔をされるけど、新婚旅行による観光だってしたい。
 クヨクヨ悩むより、グイグイ楽しいことを考える。それがヒーローとしてアタシが学んだ生き様だ。

 ――違うや。空色の魔女になる前からアタシはこんな感じだったや。

「この後の予定ってどうなってるの? 話もあるみたいだけど、やっぱ観光がしたいよねぇ」
「空鳥への話ってのは、今日の夜にするらしい。夕食までの間は自由行動だな」
「よっしゃ! そいじゃ、カジノ行きたい!」
「栗阿もこれぐらい切り替えが上手けりゃなぁ……。とりあえず、カジノがご所望なんだな。ならちょっと待ってくれ。ラルカに案内してもらうよう取り次いでみる」

 そんなわけで、アタシは移動中にもフクロウさんから教えてもらったカジノへまず向かうことにした。
 課題は多いけど、楽しむところは切り替えて楽しまないと損だ。フェリアさんも少し席を外し、案内役のラルカさんに繋いでくれる。

「では私はその間、空鳥さん夫婦のご夕飯の用意をしておきます。腕によりをかけてお待ちしているので、時間になったらこちらにお戻りください」
「え? 夕飯って、洗居さんが作ってくれるの? こういうのって、給仕担当の人がするんじゃないの? 洗居さん、ウォリアールの王族になるんだよね?」
「王族になるとは言っても、私は主婦になるわけです。お料理も花嫁修業の一環として身に着けておく必要があります」
「……なんだろう。耳が痛い」

 洗居さんは席に残って夕食の話をしてくれる。作ってくれるのは嬉しいけど、それってまたラルカさんの胃痛案件にならないかな?
 でも、その姿勢はやはり尊敬できる。『超一流の清掃用務員』(の肩書はもう関係なさそうだけど)は伊達じゃない。
 いつだってチャレンジャーとは恐れ入る。

「……安心しろ、隼。お前はただ、料理スキルが絶望的なまでに壊滅してるだけだ。練習してどうにかなる話じゃない」
「……それって慰め? どっちにしても泣いていい?」

 アタシなんか、チャレンジしても壊滅した結果しか目に浮かばない。もう何回失敗したか分かんないもん。
 だけど、我が家にショーちゃん農場だってできたわけだし、少しぐらいは料理もできるようにならないとね。まずは野菜を切るところから。
 流石に料理スキルの限界が『カップ麺に湯を注いで三分待つ』というのはいただけない。

「あっ、そうだ。洗居さん達にお土産があったんだった」
「お土産ですか? そのスイッチがついたカプセルのようなものが?」
「これは収納カプセルね。ちょいとアタシの方で開発したんだ」
「流石は空鳥さん。私では想像もできないものを発明されますね。中身は何でしょうか?」

 ここでアタシは一つ思い出した。ショーちゃんから託されていたお野菜を洗居さんにもおすそ分けするんだった。
 空鳥工場印の野菜が入ったカプセルを取り出し、机の上に中身を出力してみる。
 明らかに容量違いなのに出現する、ショーちゃんから受け取った野菜の数々。本当にこの技術って便利だよね。デジタル収納マジ半端ない。
 ショーちゃんが新商品予定の『凄くきめ細やかなとろろになる山芋』も含めて用意してくれたので、レパートリーも豊富だ。

「野菜……ですか? どうして野菜が手土産に?」
「実は最近、我が家で工場野菜の栽培と出荷を始めてね。これらは全部それで作られたものさ」
「空鳥さん、工場、野菜栽培、出荷……。私の中でどうにも話が繋がりませんが、ありがたくいただいておきます。見た限りでも非常に質が良く、高濃度の農耕魂ノウコウルを感じます。本日の夕飯にも使ってみましょう」

 洗居さんは少し首を傾げながらも、用意した野菜を受け取ってくれた。『農耕魂ノウコウル』なんて謎ワードも出てくるけど、そこは言及しないでおこう。
 むしろ、ようやくアタシのよく知る洗居さんらしい一面が見れてきた。フェリアさんとの婚約でツッコミが追い付かないほど発狂してたけど、やっぱり洗居さんは洗居さんだ。
 願わくば精神的にも落ち着いて、フェリアさんと幸せな家庭を築いてほしいもんだ。

「待たせて悪かったな。ラルカとも連絡が取れて、カジノへ案内できるそうだ。引率にはフクロウがついてくれるとよ」
「お? ようやくだねぇ。……てか、引率はフクロウさんなのね。あの人がカジノに行きたいだけだったりしない?」
「そこは気にすんな。俺と栗阿も一緒に行こうと思うんだが、構わねえか?」
「え? 一緒に?」

 そんなこんなしていると、カジノに行くために手筈を整えていたフェリアさんも戻ってくる。
 カジノとフクロウさんの組み合わせがなんだか気になるけど、それ以上に気になるのはフェリアさんの提案だ。

「洗居さんは残って夕食の準備をするって言ってたんだが?」
「え? いや、俺から栗阿には事前に『一緒に行けたら行こう』って話を通して――って、まさか……?」
「…………」

 タケゾーも尋ねるは、フェリアさんと洗居さんの意見がどこかチグハグになっているこの違和感。フェリアさんも一度は首を傾げるも、すぐ何かに勘付いて洗居さんの方に目を向ける。
 目線を向けられた洗居さんは顔を赤くしながら黙ってそっぽを向いてるけど、アタシもなんとなく読めてきた。

 これまで見てきた壊れっぷりから予想するに、きっと洗居さんはフェリアさん絡みで緊張して――



「栗阿! お前、料理を口実に外出を拒んだだろ!? いい加減に慣れてくれよ!?」
「も、申し訳ございません……。や、やはり、フェリアと一緒に外出はハードルが……!」

「……この二人、本当に大丈夫なのかな?」
「……俺にも分からん」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

処理中です...