空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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ウォリアール新婚旅行編

ep393 アタシには王家の血が流れている。

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「ク、クジャクさんはアタシの出生についてを直接話したかったんじゃないの? ほ、本題って何さ?」
「これまでの話は本題を述べるための前提に過ぎない。隼殿に自身の出生を知ってもらった上で、私から願い出たいことがある」

 ちょいとハードな話の連続で小休止を挟もうとするも、クジャクさんにはまだ話したいことがあるようだ。しかもここからが本題とのこと。
 アタシからしてみれば『実はウォリアール王族の末裔だった』ってだけで十分なのに、ここから何を話すというのだろうか?
 出生の話自体が『前提』だったり、クジャクさんからアタシへ『願い出たい』なんて言ってるのも気になるけど――



「隼殿にはウォリアール王族へと戻り、次期トップとなってほしい。それこそがその方を呼び出した本当の理由だ」
「へ……えぇ!? ア、アタシがウォリアールの次期トップに……!?」



 ――思わず目玉が飛び出そうな話が、クジャクさんの口から飛び出してきた。
 確かにアタシはウォリアール王家の血を引く者だけど、その起源である母さんはとっくに王家から抜けている。アタシにだってそんな気は一切ない。
 それに何より、ウォリアールの次期トップはもうとっくに決まっているはずだ。

「ちょ、ちょっと本当に待ってよ!? ウォリアールの次期トップって、フェリアさんじゃないの!? 洗居さんとの婚約だって決まってるし、向こうが本筋じゃなかったけ!?」
「ふむ。隼殿も多少の事情は理解しておられるか。確かにウォリアール王家の本筋にして、順当な次期トップはフェリア・スクリードではある。この度は婚約も決まり、妥当な見解ではあるだろう。……とはいえ、フェリアではダメな理由があるのだ」
「フェ、フェリアさんじゃ……ダメ……?」

 アタシは頭の中に浮かんだ疑問をそのままぶつけるも、クジャクさんやウォリアールにも事情があるように感じられる。
 そりゃ、一国のトップとなれば簡単には決められない理由だってあるだろう。固厳首相も言ってたけど、クジャクさんの血筋にも王位を継ぐ権利があるのは知ってる。
 だけど、いったいどこに『フェリアさんではダメで、アタシなら大丈夫』という理由があるのだろうか?

「フェリアは戦闘訓練を積んで実力自体は確かに申し分ない。この『戦いの中で生きる国家』たるウォリアールのトップにつくには、何よりも力がモノを言うのでな。とはいえ、彼には実績と呼べるものがない」
「じ、実績って……?」
「フェリアはこれまで、舞台に立って何かを成し得てきたわけではない。そんな人間ではいくら王族とはいえ、納得しないウォリアール国民もいるであろう。その点隼殿ならば、ここに至るまでに確かな実績を築き上げている。星皇カンパニー社長の暴走を食い止め、内閣総理大臣の野望を打ち砕き、その中で交戦した将軍艦隊ジェネラルフリートさえも退けた。これらの実績があり、さらに王家の血を受け継いでいるとなれば、隼殿が次期トップに立つことに国民も納得がいくであろう」
「そ、そんなこと言われたって……」

 クジャクさんの言いたいことも分からなくはない。アタシはこれまで空色の魔女として、数々の戦いに身を投じてきた。
 だけど、そんなものは『なるようになった』話でしかない。アタシはただ、自分が思うがままに戦ってきただけだ。

 ――戦うこと自体は好きでやってない。

「隼殿がトップとなるならば、将軍艦隊ジェネラルフリートとて納得せずにはいられまい。実際にその力を体感した立場だからな」
「だ、だけど……アタシは戦うのは好きじゃないし、そんな国のトップだなんて……」
「尻込みする気持ちも分かる。だが、この国には誰よりも強いトップが必要なのだ。無論、夫である赤原殿とて悪いようにはしない。二人の関係はそのままに、王族としてウォリアールへ戻ってきてほしい」

 アタシとしてはこの一件、有無を言わさず断りたい。でもクジャクさんの押しが強く、中々話を断ち切れない。
 そもそも話が全部いきなりすぎる。アタシが王族の血筋だったからって『はい、次期トップになります』なんて答えられるわけがない。
 これまでのアタシは貧乏エンジニアからヒーローになり、幸せな家庭を築く主婦にもなった。ちょっとおかしな点はあるけど、世間的には一般人の枠で生活してきた。

 ――アタシは今の日常を手離したくはない。



「何より、フェリアが選んだ婚約者は戦いとは程遠い世界に生きる人間であろう? そんな人間にウォリアール王族を任せるのも忍びなくはないか?」
「えっ……!? あっ……!?」



 そんなアタシの願望を刺激するように、クジャクさんはさらに一つの現実を突き付けてくる。
 もしもここでアタシが王族に戻らなければ、フェリアさんと婚約している洗居さんはウォリアールという軍事国家の渦中に投げ込まれてしまう。ウォリアールの裏側を耳にした今、そのことが一番念頭に入ってくる。
 フェリアさんへの愛情でさっきは暴走してたけど、洗居さん自身は戦いの中で生きる人じゃない。
 それを踏まえると、アタシの方が適任な気さえしてしまう。

「無論、隼殿が王族に戻ったからとて、フェリア達をないがしろにする気はない。必要ならば、かつてのツバメ達と同じように王族を抜けさせることもできる」
「そこまでしてでも、アタシをウォリアールへ戻したいの……?」
「左様だ。ただ、私にとっては国家としての立場以外の想いもある。二十年間触れ合うことのできなかった姪っ子と、少しでも共に過ごせる時間が欲しい。ウォリアールでの生活については、当然私の方でも保証させてもらう。不自由にさせはしない」
「…………」

 クジャクさんとしてはこれまで何もできなかった親族のアタシに対し、何かしら貢献したい思いがあるのも見て取れる。
 アタシだって母さんのお姉さんから話を聞きたい。もっと母さんや父さんの話を聞きたい。
 だけど、それは今の日常を手離してまで欲しいものだろうか? 同時に洗居さんをこのままクジャクさんが言った通りの渦中に置き去りにしてよいものか?

 ――ダメだ。アタシの中でも色んな思考が混ざり合い、どれを選ぶべきかが見えてこない。

「急にこのような話をしたのは申し訳なくも思う。だが、できることならば早期に判断を願いたい。隼殿の夫婦の滞在は一週間を予定している故、その間に答えを聞きたいものだ」
「一週間……か。人生の一大決心をするにしては、短い考察期間だねぇ……」

 その後、クジャクさんは少しだけ話をして部屋を後にした。アタシはすぐにみんなの元へ戻ることができず、ソファに座りながら頭を抱え込んでしまう。
 これまで何も気にすることなんてなかった。空色の魔女になってからだって、ここまで思い悩んだことはない。
 こうなることが分かっていたからこそ、両親はアタシに真実を伝えなかったのだろう。



 ――だけど、アタシには間違いなくウォリアール王家の血が流れている。
 この事実を知ってしまった以上、目を背けることなどできはしない。
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