空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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もう一つの故郷編

ep403 野菜事業を進出させよう!

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【……成程、俺も話は把握した。確かにウォリアールにおける農業については、国でも議論に上がってたところだ。空鳥の発案通りにいくならば、国のためにもなるな】
「アタシも思い付きではあるんだけどさ、悪くない話だと思うのよ。フェリアさんの立場なら、色々と進められるんじゃないかな? 空鳥工場での野菜栽培の技術をアタシが提供するから、是非とも事業を拡大してほしいのよね」

 アタシがタケゾーに電話した後に繋いでもらうのは、一緒にいるウォリアール王子のフェリアさん。こういう時、権力のある人とのパイプって便利だよね。
 そして提案するのは、空鳥工場野菜の技術をウォリアールに進出させる計画。我が家の工場地下プランターでも急速に育ってくれるぐらいだ。あれならばメガフロートであろうとも、野菜を育てることができる。
 それを孤児院で展開できれば、大きな収入になるはずだ。

「アタシがカジノで稼いだ一千万クレジットで頭金になるかな?」
【頭金としてならそれでも十分だ。赤原もこっちでグーサインしてるし、予算のことは問題ねえよ。……だがよ、本当に構わねえのか? こっちとしては大助かりだが、いくらなんでも至れり尽くせりじゃねえか?】
「そこは気にしなくて大丈夫さ。アタシにとっては難しい技術じゃないし、頭金もどうせ余らせてた分だからね。こうするのが一番効果的だと思うのよね」
【空鳥は本当にお人好しだな。赤原が傍にいて面倒見たがるのも分かる気がするよ。この件はフロストにも話を通しておく。あいつなら空鳥が提供してくれる技術も理解できるだろうし、バックアップに回ってもらうさ】
「そうだね。後のことはフェリアさんが主導の元で方々に手を回してくれると助かるや。アタシもウォリアールの内政事情には疎いからね」

 フェリアさんもアタシの提案を聞くと、快く話を進めてくれる。電話越しでタケゾーもオッケーしてくれてるらしく、提案自体は問題なく進められそうだ。
 余ってた一千万クレジットもこれなら効果的に使えるよね。クジャクさんも『投資に使えばいい』みたいに言ってたし、こういう使い方も悪くない。
 投資なんて初めてやったけど、この孤児院のためになるならばドンと来いだ。

「よし! これでオッケーだね! 近々こっちにお国のお偉いさんから連絡が来るだろうけど、その人達には話を通しておいたよ。アタシの持ってる栽培技術を提供するから、それでこの孤児院を盛り上げちゃってよ」
「そ、そのようなことをなさってくれたのですか? あ、あなたは一体何者で……?」
「うーん……まあ、通りすがりの正義のヒーローってことで」

 外で敷地を観察しながら、院長先生にも軽く事情を説明しておく。
 母さんが作った孤児院なのだから、娘のアタシも困っているなら見過ごせない。アタシも責任を感じてたし、これで全てがいい方向に向かうならばそれに越したことはない。
 正体についてはノーコメントだけど、これでアタシも少し気が晴れた。母さんやラルカさんも関わっていた孤児院のためだからね。

「あ、ありがとうございます! まだ事情は呑み込めませんが、あなたがこの孤児院のために動いてくれたことには感謝します!」
「まあ、アタシの気まぐれだけどね。何か問題でも起こったら、そん時はまた動くからさ。これでも技術者だし、責任もって対応するよ」

 院長先生もアタシが孤児院のためにお国へ掛け合ったことは理解できたのか、軽く涙を浮かべながら感謝してくれる。
 まさかアタシが偶然生み出しちゃった技術が、巡り巡って母さんの故郷で役に立つとは思わなかった。これもまた、運命って言えるのかもね。

 最初に真実を告げられた時は困惑したけど、こうやって誰かのために動けるっていうのはスッキリする。
 たとえ因縁深いウォリアールであっても、それはそれ、これはこれ。困ってる人がいるならば動かずにはいられないってのがアタシの性分だ。

 ――この国はアタシにとって『もう一つの故郷』とも言える国。そこに住む人々が少しでも幸せになれるならば、アタシなんかの力が役に立つのならば、王族だ何だは関係なく役立てたい。

「それにしても、あなたの姿を見てるとあのお方のことを思い出しますね」
「ん? あのお方って?」
「ツバメ・スクリード様です。あのお方も今のあなたと同じように、困っている国民には自らの知識を活かして手を差し伸べてくださりました。そういえば心なしか、あなたの顔はツバメ様に似ているような……って、ただの偶然ですよね。私も知り合ったばかりの人にこんなことを言ってごめんなさいね」
「……いや、構わないさ。むしろありがたくも思えるよ」

 どうやら母さんもこの国にいた時、今のアタシと同じように技術者として支援もしていたらしい。
 そういう話を聞くと『やっぱり親子だなー』なんて感じちゃう。父さんだってウォリアールのメガフロート化に尽力してたし、こういう家系なのかもね。

 ――アタシがヒーローになったことも含めて、なるべくしてなった話ってところか。



「……なんや陰で聞き耳立てとったら、随分この国で好き放題に動いとるみたいやな。思い立ったら行動の魔女娘が」
「んげっ!? あ、あんたは!?」
「も、もしや、牙島左舷将ですか!? どうしてこちらに!?」



 ほんのり胸元が温かくなってたところで、誰かが孤児院の屋根の上から関西弁で声をかけてきた。
 まあ、ウォリアールにおいて『関西弁で話す人間』なんて限られてくるし、もう振り向くより前に牙島だってことは分かっちゃう。
 屋根の上でヤンキー座りしながら語り掛け、こっちが気付くとそのまま眼前へと飛び降りてきた。
 なんでここにいるのよ? こいつが出てくると、いつもロクなことがないんだけど?

「ワイもラルカから話は聞いとってな。一応は護衛の意味も含めて、遠巻きに様子を伺わせてもろたわ。安心せい。お前があれこれフェリア様に掛け合った件については、別にワイも口を挟まへん。ウォリアールの内政側がやる話なんざ、ややこしそうやしな」
「そりゃまたご苦労かつありがたいことで。てことは、今回は本当にあれこれ面倒を持ち込んだってわけじゃないんだね?」
「お前、ワイを疫病神か何かと思うとるんか? むしろ面倒事はそっちが現在進行形で持ちこんどるやろが」
「あれ? アタシがウォリアールの農業事情に首を突っ込むのが不満?」
「そっちやない。……お前がそもそもこっちに来た理由の方や」

 牙島は院長先生を避けるようにアタシを手で導き、小声で話を始めてくる。
 院長先生にはきちんと言葉を交わしたかったけど、牙島の話を聞くにこれ以上はアタシの正体が勘付かれてしまう。
 ここでは『野菜の栽培技術を与えてくれて、忽然と姿を消した謎のヒーロー』ってことで折り合いをつけ、牙島の話に集中した方が良さそうだ。
 ウォリアール王族の件についてはアタシも折り合いをつけないといけないからね。今でも悩んではいる。

「お前、自分がどないしたらええんか悩んどるんやろ? せやったら、ちょうどええ話があんで」
「何さ? あんたからいい話なんて初めて聞くんだけど?」
「一応、今は『クジャク様の姪っ子』って肩書があるからな。つっても、ワイの方も言伝を頼まれただけなんやが」

 正直、牙島のこういう態度は珍しいけど、話があるなら聞いておく必要がある。
 ラルカさんから五艦将へも伝達が行き渡っているらしく、その関係で牙島は提案を持ってきてくれたらしいけど――



「ボスがお前と話をしたいやとさ。あん人からなら、知りたいことも色々と聞けるやろ」
「フロスト博士が……!?」
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