空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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もう一つの故郷編

ep405 アタシの力はこの国に求められてるのかな?

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「ラルカさんの話、アタシもなんとなく分かるよ。あの人、別に殺し屋とか傭兵でなくても、戦わずに普通に生きることだってできたよね」
「星皇カンパニー社長秘書として潜入した時だって、あいつの能力なら十分にこなせる役目だったってー話だ。ただ、別に俺様も無理強いしてまで、他人を戦いの世界に巻き込もーとしてるわけじゃーねーよ」

 フロスト博士の世間話から繋がるのは、アタシとも因縁深いラルカさんの立場について。
 牙島についてはGT細胞のプロトタイプにあの性格もあって、自ら率先して戦いに身を投じているのは理解できる。
 だけど、ラルカさんの方は違う気がする。うまく言えないけど『そうする道しか選べなかった』って気がするのよね。
 あの人って戦いの場に出てきても、どこか業務感覚が強いって言うのかな? 少なくとも『好きでやってる』って思えないのよ。

「もしもラルカがウォリアールで育ってた時、戦い以外の選択肢が取れたのならば、わざわざ将軍艦隊ジェネラルフリートに入ることもはなかっただろーよ」
「ボスのフロスト博士がそれ言っちゃう? 実際、アタシも同じようには思ってたけどさ」
「変に多方面で優秀過ぎたのに、選択の幅が狭かったってーのが原因だ。GT細胞やナノマシンなんて技術がなくても、ただ純粋な訓練だけで五艦将になれるだけの実力があったってーのは、恵まれてはいても不幸な話ってーとこか。もっとも、これまでウォリアールで成り上がる選択肢なんて限られてた。ここは『戦いの中で生きる国家』だからな」

 フロスト博士もアタシの考えに同調し、どこかラルカさんの生き方に憂いを感じているように見える。
 マッドサイエンティストや食わせ者な側面が強かったけど、意外とこの人も考えてるのね。流石はウォリアールの重鎮。

 思えばラルカさんは母さんが創設孤児院で育ち、そこでは『戦い以外でも生きられる道』を探している。
 今でもウォリアールにとっては難しい道であることは、アタシもこれまでの様子を見て想像できる。どれだけ他の産業があったとしても、根底には戦いの存在が消えない。

 ――母さんの目指した形が実現しないってのは、娘としてもどかしい。



「たーだーしー、今後はラルカのような人間も減るかもしれねーな。……どこぞの誰かさんが発案した農業計画のおかげでな」
「……へ? もしかして、アタシのこと?」



 ちょいと苦悩するアタシの顔を覗き込みながら、フロスト博士はさらに話を続けてくる。
 てか、孤児院に空鳥工場式野菜栽培技術を提供するって話、フロスト博士の耳にも入ってたのね。まあ、当然か。この国じゃ重鎮だもん。

「俺様もフェリア様から話を聞いたが、あの技術は本当に確かなものだってーのか? だとしたら、世紀の大発明だぞ?」
「あー、うん。またフロスト博士にも技術レポートは送るよ。大発明だとかはアタシも思ってなかったや。空色の魔女の能力を使ってるし、あんまり公にできる技術じゃないのよね。でもフロスト博士なら応用もできると思うよ。根本的には人工太陽の技術だし、そっちにもノウハウはあるでしょ?」
「サラッととんでもねーもん作りやがるな……。ある意味、オメーがツバメ様とその旦那の娘ってーのに一番納得できちまう。いずれにせよ、あの技術はウォリアールを変革させちまうよーな技術だ」

 思えば、アタシもそこまで深く考えてはいなかった。だって、偶然に偶然が重なって生み出した技術だもん。

 人工太陽で野菜を栽培できるように品種改良したら、偶然とんでもない成長速度と質を持った野菜が完成。
 その人工太陽にしたって、アタシが自らの開発物であるマグネットリキッドを誤って口にした結果、偶然手に入れた力。
 さらに言えば、マグネットリキッドで空色の魔女というヒーローになり、活躍できるようになったのも偶然。

 ――こうしてみると、本当に偶然が重なりまくってるよね。しかも全部が結果としていい方向に傾いてるし。
 アタシって、漫画や小説の主人公か何かですか?

「本当にオメーのおかげで、ウォリアールの農業問題は全部解決しちまうかもしれねーからな。まるでツバメ様の再来を見てるよーだぞ? ウォリアールのメガフロート化にも匹敵する偉業じゃねーか?」
「そう言われると、ただの偶然と片付けたくもなくなるよね。……やっぱ、運命ってあるのかもねぇ」

 冗談はさておき、アタシのこれまでの道のりは今この時、ウォリアールというもう一つの故郷へと繋げられた。
 非科学的と疑いたくなっても、運命という存在を信じたくなってしまう。こうしてアタシは両親と同じ道のりを歩んでいる。

 何よりも両親でさえも遂げられなかった目的を、アタシには叶えられる力がある。
 やっぱり、アタシはウォリアールに導かれた通り、このまま新たな世界に踏み出すべきなのかな? この国のことだって他人事じゃないし、力になれるならそうするべきなのかな?

「まー、ここでの話は俺様の個人的な話だ。別にオメーをウォリアールに引き留めよーとも考えてはいねーよ」
「クジャクさんと違って、フロスト博士は消極的なもんだねぇ」
「ただでさえ俺様には将軍艦隊ジェネラルフリートって組織での問題があるってーのに、国からの余計な問題は増やしたくねーっての。でもまー、オメーがウォリアールの王位を継ぐことになれば、俺様もおとなしく従ってやるよ。手綱を握りたきゃ好きに握れ。オメーにはそれだけの権威も能力もあるってーことだ」

 結局、ここでもアタシの心は固まらなかった。むしろアタシなんかで一国を救えるなら、それでもいいとさえ思えてくる。
 フロスト博士にもなんだかんだで認められてるし、強要されなくても強制力を感じてしまう。

 ――それでも、アタシにはまだ決めらんないよ。

「……フロスト博士。ここのお酒、いくつかもらってもいいかな? お代は払うからさ」
「別に金なんていらねーっての。オメーの件でなら領収書も切れるし、好きなだけ持っていけ。つーか、まだ飲む気なのか?」
「うん……まあね。ちょいと空でも眺めて、気持ちを落ち着けながら考えたい気分さ」

 フロスト博士にわざわざ時間を作ってもらうも、アタシは再びお酒片手に陽が暮れ始めた外へと赴く。
 こういう時、焦っちゃいけないのは理解してる。だけど、絡まり合った事象の糸が心を縛って苦しめてくる。
 そのせいで焦りが抑えられないし、実際に時間をかけられないのも事実だ。自分でも整理できなくて、ついついお酒の力に頼っちゃう。



 ――本当にこんな状況で、アタシは後悔のない将来を選べるのだろうか?
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