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波乱万丈の始まり
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支度を済ませ、寮の廊下に出る。
磨かれた床に光が細長く落ち、掲示板の角が少しめくれている。誰かの笑い声が遠くで弾け、すぐに溶けた。
ラスは歩幅を合わせてくる。
静かな足取り。迷いのない方向感覚。横顔を盗み見れば、睫毛の影が瞬きのたびに揺れた。
「アリー、今日は一限から? 俺、実験室に寄るから途中まで一緒でいい?」
「助かる」
なんでもない会話。だが、こういう“普通”の積み重ねが、のちの分岐に効いてくる。
親しすぎず、そっけなさすぎず。
アリエスという枠をはみ出さないバランスを、靴紐みたいにきっちり結び直す。
中庭を横切る風が、花粉を細かな光にした。季節は、確かに進んでいる。
教室棟に差しかかったところで、ラスがふっと足を止めた。俺も立ち止まる。
「さっきのさ。……“にやけ”、何かいいこと?」
一拍置いて、俺は笑う。脇役としての、ほどよい笑顔で。
「朝の空気、好きやねん」
「……そっか。じゃ、遅刻するから急ご」
それ以上踏み込まない距離が、ありがたい。
教室の前で、軽く息を吸う。
この扉の向こうで、来年――俺はシリウスと出会う。
“最初の友達”として、彼をペンダントへ、そしてハーレムへ導く。
それが、俺の“役”。
(逃すものか。最前列)
取っ手に触れ、そっと押す。
朝のざわめきが、こちら側に流れ込んだ。
――俺の、波乱万丈な脇役転生生活は、まだまだ始まったばかりだ。
磨かれた床に光が細長く落ち、掲示板の角が少しめくれている。誰かの笑い声が遠くで弾け、すぐに溶けた。
ラスは歩幅を合わせてくる。
静かな足取り。迷いのない方向感覚。横顔を盗み見れば、睫毛の影が瞬きのたびに揺れた。
「アリー、今日は一限から? 俺、実験室に寄るから途中まで一緒でいい?」
「助かる」
なんでもない会話。だが、こういう“普通”の積み重ねが、のちの分岐に効いてくる。
親しすぎず、そっけなさすぎず。
アリエスという枠をはみ出さないバランスを、靴紐みたいにきっちり結び直す。
中庭を横切る風が、花粉を細かな光にした。季節は、確かに進んでいる。
教室棟に差しかかったところで、ラスがふっと足を止めた。俺も立ち止まる。
「さっきのさ。……“にやけ”、何かいいこと?」
一拍置いて、俺は笑う。脇役としての、ほどよい笑顔で。
「朝の空気、好きやねん」
「……そっか。じゃ、遅刻するから急ご」
それ以上踏み込まない距離が、ありがたい。
教室の前で、軽く息を吸う。
この扉の向こうで、来年――俺はシリウスと出会う。
“最初の友達”として、彼をペンダントへ、そしてハーレムへ導く。
それが、俺の“役”。
(逃すものか。最前列)
取っ手に触れ、そっと押す。
朝のざわめきが、こちら側に流れ込んだ。
――俺の、波乱万丈な脇役転生生活は、まだまだ始まったばかりだ。
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