コミュ障な言霊師の放浪記

永沢 紗凪

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第1章

護衛二日目

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 翌朝、ツクヨは何とか迷惑をかけることなく起きることに成功した・・・と言っても半分フラウに叩き起こされたようなものなのだが。
「それでは皆さん、今日も一日よろしくお願いいたします」
 朝食を終えるとすぐに一行は出発した。
 このまま順調にいけば今日の夕方までには目的地チシクまで辿り着くそうだ。
「今日も何事もなく終わればいいですね」
「そうね」
 そんなのん気な会話をカナデとしながら馬車に揺られていたツクヨは索敵を行ってはいてもあまり警戒心を持ってはいなかった。昨日と同じように何事も起こらず、世間を騒がせている盗賊に出くわすことなく平和に初依頼を終える気満々だったのである。
 そんなツクヨの楽観的な思考が完膚なきまでに打ち砕かれるのはもはやお決まりと言ってもいいだろう。
「ツクヨ、モンスターの反応はない?」
「あ、はい。この近くにはいないみたいです」
 カナデが定期的にモンスターの有無を聞いてくる。昨日はぽつぽつ出現していたはずのモンスターが今日は鳴りを潜めていた。ツクヨとしてはとても平和な事だったのだがカナデは少し厳しい表情になる。
「おかしいわね・・・ここまでモンスターと一匹も出くわさないなんて異常だわ」
「そう、なんですか?」
 どうやらモンスターと出くわさないのはただの偶然というわけではないらしい。
「ちっ、俺としたことがこんなことに気付かなかったとは・・・」
 耳元でフラウまで苦い表情をしている。
「フラウは何が起こってるのかわかったの?」
「ああ、いつの間にかけられたのかはわからないが・・・これは一種の魔術スキル、幻術だ」
「幻術・・・?」
 そんな魔術があるなんて知らねーよ、聞いてねーよ!と抗議したくなるがとりあえず事態はそれどころではなさそうだ。
「ここはすでに敵さんのテリトリーってことだ。いつ、どこから襲ってくるのかも察知するのは不可能。残念ながらお前の索敵も意味をなさない」
「え、嘘、それってかなりやばいんじゃ」
「ああ、馬車を止めて防御壁を張れ。それで敵に備えるのが現状やれる精一杯だろう」
 馬車を止めろといきなり言われても・・・と戸惑うがすぐに耳元で催促されるので、ツクヨはとりあえずカナデに声をかけた。カナデも異変を感じ取っていたためにすぐにうなずいて前の二人に知らせに行ってくれた。馬車が止まると、ツクヨはすぐに周囲に防御壁を張った。馬車の中では何事かと商人たちがざわつく。が、すぐにヨーセルが一喝したので静かになった。さすがだ。
「何かあったのか?」
 馬車から降りてきたリアンとザカリ―が説明を求めてきた。ツクヨはフラウから聞いたことを三人に告げた。
「幻術とは・・・考えていなかったがそうだとすると厄介だな」
「幻術を使う盗賊とかハイスペックになりすぎでしょ」
 幻術というのはツクヨが持つ言霊と同じ魔術スキルと呼ばれるもので、魔法とは違い、素質があるものにしか使うことができないらしい。さらにこれほど大掛かりな幻術となると複数の術師がいると考えてまず間違いない。
「あの、幻術ってどうやったら解けるんですか?」
「そうだな・・・俺もそんなに見たことないから一般的な知識しか持ってないが、術師を倒せばたいていの魔術は解けると思う」
「術師って簡単に言うけど、幻術の場合術師を見つけることなんてほぼ不可能なんだよねー」
「おそらく相手もこちらが術に気づいたことには気づいているはず。今は出て来てくれるのを待つしかないわね」
 どうやらあまりいい打開策はないようだ。ちらりとフラウに目をやるとすぐにそらされた。
 おーう。丸投げですか。というか妖精ってすごいんじゃないのか?どうすごいのかはわからないがとりあえずこの状況をどうにかできる術を持っているのでは?
「人に頼るな。少しは自分で考えろ」
「人ではなく妖精様に頼ってますよ?」
「ほう・・・言うようになったじゃねえか。そいつが素か?」
「おい、話そらすなよ」
「・・・ちっ」
 フラウが小さく舌打ちする。でも仮にフラウが何かできたとしても、確かにいろいろと問題はあるのだ。何しろフラウの姿は今ツクヨにしか見えていないのだから。
「さっきからぶつぶつ言ってるけどどうかした?」
「え、いや、何でもないです」
 ツクヨはフラウと会話しているのだが傍から見たらただ一人でぶつぶつ言ってるだけの危ない人だ。自覚してからとんでもなく恥ずかしくなって思わず顔を伏せ気味になる。
 横でけらけら腹を抱えて笑っているフラウをぶん殴りたい衝動に駆られるが何とか抑えて横目で睨むだけにとどめた。

 そして、事態は唐突に動き出す。
「何!?」
 突然周囲の空間が奇妙に歪み始める。すぐさま臨戦態勢をとる四人に向かって黒い人影が襲い掛かってきた。
 三人が剣で応戦している間にツクヨはうまく敵の目を誤魔化して距離を取り、三人から遠い距離にいる賊に向かって魔法をぶっ放す。馬車に防御壁を張っていたので先に馬車ではなく護衛役の方を潰そうという考えのようだ。
 しかしいったいこれだけの賊がどこから湧いて出てきたのか・・・。さっきまでは何の反応もなかったというのに今はざっと数えても十人以上はゆうに超えるほどの賊たちがこの周囲を完全に包囲している。
「うっわー・・・」
「こら、お前もちゃんと働け護衛!」
 怖気づく暇もなくフラウに急かされるが、モンスターと違って相手は人間であるので殺さないように攻撃魔法を放つのは地味に神経を使うのだ。ツクヨは面倒になって、というとあれだが攻撃から拘束の方に移行した。
「グラサイド・アンぺロス・エニスカイシー・シンクラシティ」
 舌を噛みそうになりながら最低限の語句を並べて魔法を発動する。
 賊どもの足元から草の蔓が伸び、次々に拘束していった。
「な、何だ!?」
 驚きながらも蔓に剣を突き立てるが強化を施してあるそれは切れるどころか傷一つ付かない。
「魔法って便利だよねー」
 ツクヨは少し離れた場所で次々と戦闘不能になっていく賊どもを眺めていた。
「あんまり過信しすぎるなよ。魔力量には気を付けろ」
「う・・・はい」
 素直にうなずきながら、ツクヨは索敵に集中する。術師を探そうと思ったのだがやはりそう簡単にはいってくれなさそうだ。
「索敵まで狂わせる幻術ってホント反則なんですけど・・・」
「まあ魔術スキルってのは大概チートみたいなもんだからなー」
 こればっかりはどうしようもない、とフラウは肩をすくめて見せる
「チートか・・・チートにはチートで対抗するしかないとか?」
「お前の言霊か?・・・まあ可能性はあるかもしれんが」
 そもそも言霊ってどこまで言葉を具現化してくれるものなんだろうか。どっかの半妖みたいに物質を生み出すことまで可能なのか、それともこの間無意識に使ってしまったような、何かの動きを自在に操れるぐらいにとどまるのか。不確定要素が多すぎる。さすがにぶっつけ本番でやるのはマズいか。
「というか、これだけ味方がやられてるっていうのに術師たちは幻術を解いて撤退しようとか思わないの?」
「何か勝算があるのかもなー」
 フラウの物言いがあまりにのん気なので拍子抜けしてしまう。
「おーい、そっちは無事かー?」
 全員片づけ終えたのだろう、リアンがそう言ってこちらに近づいてくる。後ろからカナデとザカリ―も続く。
「私も商人の方も無事です」
「にしてもいったい何なんだ?こいつら、本当にただの盗賊か?」
 実際の腕は全く大したことなくあっさり全員を捕らえることができたが幻術が解かれない以上身動きができないままであることに変わりはない。
「捕らえたやつに聞いてみたけど、やっぱり口を割らないね」
 ザカリ―がお手上げだと肩をすくめた。
「まあでもこのままじゃいたずらに時が過ぎていくだけだ。向こうもそれはわかってるだろ。さっさと行動を起こしてくれることを願うが・・・」

『ではさっさと要件を済まそうか』

 突然響いた声に、ツクヨは体を強張らせた。
 三人も武器を持つ手に力を込めている。
 声の主の姿は見えない。これも幻術の為せる技なのだろうか。この空間に響き渡るようなその声はさらに続けた。
『まずは我々の同胞を解放してもらおうか。それから馬車から全員降りろ』
「おうおう。随分上から目線でものを言ってくれるじゃないか」
 ザカリ―が挑発的に言う。
 商人たちを馬車から降ろして馬車ごと持っていくつもりなのだろうか。
『我々の幻術に囚われているお前たちに抗う術はない。死にたくなければ大人しく従え』
「お前ら、いったい何者だ。ただの盗賊ではないだろう」
『左様。我々は盗賊などという下品な輩ではない。我々は高き志を持つ者。全ては我々の悲願のため』
 何でもいいが我々って何回言うんだろう。偉大さを出そうとしているのだろうがいい加減しつこい。
「悲願?」
『これ以上の情報を与えるわけにはいかぬ。さあ大人しく指示に従え』
 その悲願とやらのために馬車の荷を奪うというのか。目的は知らないがやってることは下品とか言ってる盗賊と何も変わらないじゃないかと思う。まあこういう人たちは自分がやってることは絶対に正しいと思っているだろうから何を言っても無駄なのだろうけれど。
「姿も現さないような臆病術師に従う義理はないな」
 リアンはあくまで強く出る。
『ならば仕方あるまい。力でねじ伏せてくれるわ!』
 言葉と同時に四人の背後の空間が裂け、四つの人影が姿を現した。
 いきなり背後を取られ、為すすべなく拘束される。首筋には鈍く光る銀色の刃が当てられていて、一気に形勢は不利となった。
「さあ、拘束を解け、女」
 またまた突然ツクヨの前に人が現れて、そう言った。声からしてさっきまで天の声みたいな感じで話していた人と同じ人物だろう。ツクヨとしてはこのいきなり現れるというのは心臓に悪いので本当にやめて欲しい。
「ツクヨさん!」
 カナデが焦ったように呼ぶ声が聞こえる。
「お前はなかなかの魔法使いのようだが・・・どうだ、こんな奴らではなく、我々について来ないか」
「はい?」
 突然何を言い出すんだろうこの人は。寝言は寝て言えや。
「お前がこちらに来るというならお前の仲間にはてを出さないと約束しよう。どうだ。悪い話ではないだろう」
 どこをどう判断したらいい話なんだ。ツクヨにとってのメリットが何もないじゃないか。それにこんな危ない人たちには付いていっちゃいけませんって小学校で習ったぞ。
「すいません。遠慮させていただきます」
 ツクヨは苦笑いを浮かべながら当然のセリフを吐く。
 正面の術師の顔が不機嫌そうに歪む。
「残念だよ。これほどの逸材を、我が手で殺さなければならないとは」
 首筋に当てられた刃が動く。
 これはちょっとやばいかもしれない。さっきまで魔法を使いまくっていたし、不確定要素が多すぎるのであまり使いたくはないがここはもうイチかバチかだ。

「砕けろ」

 ツクヨは小さく呟くようにそう言った。
 瞬間、甲高い音と共に刃が砕け散る。
 どうやらうまくいってくれたようだ。代わりに魔力がごっそり持っていかれたが仕方ない。相手さんが驚いている隙に残りの魔力を使って前後にいる術師二人を他の連中と同じように拘束する。本当は三人の後ろにいる連中も拘束したかったのだがさすがに魔力の回復が追いつかなかった。
「なっ!」
 拘束され、身動きが取れなくなり焦る眼前の術師の首筋に元の姿に戻した鎌の刃を当てた。先ほどとはまるで立場が逆転した構図になる。魔力を一気に消耗したせいか、いつもより鎌が重く感じられた。
「三人を、放してください」
 ツクヨは三人を拘束している連中に向かってできるだけ強い声音で言い放つ。震えていないか少々不安だったが、すんなりと刃を引いてくれたので安堵した。拘束が解けた途端に三人は素早く背後の人物を昏倒させた。さすがの手際の良さだ。
「大丈夫!?」
 カナデがすぐに駆け寄ってきて心配そうにこちらを窺う。
「大丈夫です」
 反射的にそう答えるがぶっちゃけもう限界近い。つい先ほどのフラウの忠告を無視して魔力を使いすぎたことに若干反省する。さっきからフラウの視線が痛いったらありゃしない。
「貴様・・・何をした」
 睨みつけてくる術師に誰が教えてやるかバーカと内心で唾を飛ばす。
「幻術を解きなさい」
 カナデが冷ややかな視線を向け、低い声でそう命じた。隣で見ていたツクヨもその目に恐怖を感じてしまう。
「くっ・・・」
 術師は悔しそうにしていたが周囲の空間に亀裂が入ったかと思うとパリンッと音を立てて砕け、一気に景色が変わった。途端に索敵が機能し始める。これで一件落着か、と思いきやそうはいってくれないのが現実の非情さというものだ。
「嘘・・・」
 むしろこれは幻術であってほしいと思うレベルだった。
「熊・・・?」
「アルコーダだ!」
 アルコーダという熊のようなモンスターが眼前に迫っていた。
 幻術が解けた途端に眼前に巨大モンスターとかどんなトラップだよと嘆いている暇はない。カナデたちは左右正面に分かれてアルコーダに斬りかかった。ツクヨも加勢したいとは思うが下手に攻撃魔法を放ってカナデたちに当ててしまってはマズい。
「どうしよう・・・」
「貴様、我の質問に答えよ」
 完全に空気とかしていた術師が苛立ちを含んだ声音で言うので、ツクヨはそちらへ視線を向ける。
「あの、あれの弱点とかってわかります?」
 ツクヨはそう言ってアルコーダを指さす。術師は怒りに顔を真っ赤にしているが拘束されている身でそんな顔をされてもあまり怖くない。むしろ滑稽だ。
 何も知っていそうにないので役立たずだなと思いながら術師を放置して三人が戦っている方へ足を向ける。
 アルコーダはその巨体からして腕力は強そうだし、その毛皮も高い防御力を持っているようでかなり苦戦を強いられている。鎌を持ってはいるが三人の戦闘能力には遠く及ばないツクヨが割って入ったところで足手まといにしかならないだろう。魔力が回復しきっていないので拘束魔法をかけることもできない。完全に役立たずだ。ツクヨはとりあえず馬車の方に向かい、商人たちの安全を確保することにした。とはいっても、馬車を囲うように張った防御壁は未だ健在なので中の人たちに被害はないとすぐにわかるのだが。
「あのモンスターは三人が何とかするだろ。お前はしばらく大人しくしてろ」
 フラウの声音にはまだ若干の不満が含まれている。どうやらまだ言霊を使ったことを怒っているようだ。
「すいません・・・」
「何が」
「いや、その、勝手に使ってみたりして・・・?」
 何でそこで疑問形なんだよー!と内心で自分に怒鳴りながら横目でフラウの様子を窺う。
 無言が空気をさらに重くする。
 重くなったその空気をぶち壊したのは嬉しくない獣の如き咆哮だった。驚いて顔を上げると、アルコーダの咆哮で動きを封じられたカナデたち、そしてカナデに迫る太く鋭い爪が見えた。
「アミ―ナ・トイコス!」
 反射的に叫ぶようにそう唱えていた。カナデを守るように出現した防御壁は鋭い爪を弾き返した瞬間に砕け散る。そのわずかの間にリアンとザカリ―が二人掛かりでアルコーダの腕を斬り落とした。さらに畳みかけるようにカナデも斬りかかる。片腕を失くしたことでバランスを崩したアルコーダに止めを刺すように三人の剣がほぼ同時にアルコーダの首を貫いた。
 何とか難を逃れたようだ。ツクヨは安堵と共に息をゆっくりと吐きだした。
「はー、一時はどうなることかと思ったよ」
 ザカリ―が深いため息をついた。
「お疲れ様です。すいません、私何もできなくて・・・」
 疲れ切っている三人を見ているとどうにも罪悪感がわいてくる。
「いや、むしろ助かったわ。ツクヨさんの防御壁がなかったら大怪我どころでは済まなかったと思う。ありがとう」
 カナデはそう言ってくれたがそれくらいしかできなかったのであまり感謝をされても困る。とりあえずはいえ、と言って苦笑いを浮かべた。
「さて、予定がだいぶ遅れてしまった。先を急ごうか」
 リアンに言われてハッと思い出す。すでに日は高くなっている。今からチシクを目指しても日が暮れる前にぎりぎり到着できるかどうかというところだ。賊を引き連れた状態でもう一晩野宿するような事態だけは避けたい。
 賊を加えた一行は急いでチシクへの道を進み始めたのだった。
 結局、徒歩の賊という厄介な荷物を抱えた状態で急いだところで日没に間に合うはずもなく、もう一度野宿をする羽目になったのは言うまでもないことか。
 護衛は予定より一日オーバーして、チシクに無事到着できたのは出発してから三日目の昼前のことだった。
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