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第十七話 シオンの機嫌とダークマター
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桃色ピューレもとい桃色イモムシを土に埋めて、これ以上被害者が出ないようにする。
安らかに眠れ。桃色イモムシよ。
俺は気絶したシオンを担いで、皆のところへ戻った。
その時に背中の眠け覚ましのツボを押してやる。
これは、気絶したやつにも効くからな。
「いたい・・・」
よし。
何とか目を覚ましたな。
「あれ?一体、私は何を見てたの?・・・」
「気にするな」
俺は無理矢理、誤魔化す。
じゃないと、また気絶する可能性があるからな。
それに忘れていたなら、トラウマとして残らないから、都合が良いんだ。
「むっ!ジェイク、私を下ろして!」
「うん?ああ、悪い」
そっと、シオンを下ろす。
シオンは俺を罵倒するかと思ったが、顔を赤くして、俯いてしまっている。
どうしたんだろう?
「あっ、あの、あのね。私、重くなかった・・・」
なんだ。
そんなことか。
そんなの答えは決まってるじゃないか、
「重かったよ!!」
「・・・・・」
シオンから表情が消えた。
無だ。
無の表情。
さっきまでの顔の赤さが嘘のように色が変わり、青白い色になっていた。
やっちまった。
本当はめちゃくちゃ軽くて、重さなど感じなかったのだが、ついからかおうと冗談を言ってしまった。
ここは素直に謝ろう。
「ごめん!本当は軽かった。すげぇ軽かったすよ。もう軽すぎ。羽毛かと思っちゃったよ。シオンは重くなんてないよー」
「・・・」
「うぐっ、いや、本当にすみません。傷つけるとかそんな気持ちは全くありませんでした。だから、許してくれ。この通り!」
俺は頭をおろす。
九十度のお辞儀だ。
ガイウス爺さんも婆ちゃんが怒った時はよくこうしてた。
「・・・」
だが、未だシオンは黙ったままだ。
アカネとリリーシャに助けてとアイコンタクトを・・・あっ!目をそらすな!
「シオン!機嫌を直してくれ!なんでもするからっ!」
もうこれしかない。
だが、俺がなんでもすると言ったところで無意味だろうな。
「うん!いいよ!許す!」
ほらな。
やっぱり、何も喋らないじゃ・・・へっ?
「ほら、バカジェイク。早く再開する!」
「お、おおう」
今まで無表情だったシオンが一転。
目の前には満面の笑みを浮かべたシオンがいた。
「ほら!ジェイクのバカ!早く!」
シオンが俺の手を握って、歩き出す。
俺は半ば引っ張られる形でシオンに付いて行った。
と、そこでシオンがふと足を止めた。
「どうしーー」
「あのねジェイク。さっきの約束。守らないと・・・」
シオンの雰囲気が氷のように冷たくなって、
「殺すから」
その一言で俺はちびりそうになった。
▲▲▲▲▲
あれから、桃色イモムシを探して、俺たちは西の大草原を歩いていた。
シオンは完全に正常に戻っており、先ほどまでのやり取りが嘘のようだった。
「あれ以来、こないですねー」
リリーシャが息を吐いて言う。
そうなのだ。
あの桃色ピューレ以来、一切桃色イモムシの反応を感じない。
桃色イモムシは実は1メートルほどのクソデカイイモムシなので、すぐに見つかると思ったのだが。
「正直言って、大量発生とか嘘なんじゃない」
「うーん。どうなんだろうな。まだ大草原の奥とは言えないしな」
「しかも、桃色イモムシなんて、全然強くないじゃない。一匹の討伐報酬が高かったから緊張してたけど」
えっ!
アカネはあれで緊張してたの!?
鼻歌を歌いながら、スキップして歩いてたのに!?
「それよりもお腹が空きましたねー」
リリーシャが呑気にもそんな事をのたまう。
「おい。ここは言わば戦場だぞ。あまり、皆の意欲を削ぐ発言はーー」
グギュゥゥゥゥ
リリーシャがジト目を俺に向ける。
対する俺は顔が熱い。
「め、飯にしようか」
「やったぁーーー!」
俺は自分の鞄からフィリオネ特製サンドイッチを取り出す。
アカネも鞄から何かを取り出すようだ。
あっ、そう言えば、サンドイッチを作ってきたんだっけ。
馬車に乗ってた時に言ってたなぁ。
「皆!私もサンドイッチを作ってきたの!フィリオネのサンドイッチも良いけど、私のも食べて!」
「アカネさんのサンドイッチ。私、食べます」
「あっ、そうですね。私もいただきます!お腹すいちゃったって一番初めに言ったし、量が多いのは嬉しいです!」
まぁ。
断る必要もないし、せっかくのアカネの厚意だしな。
「俺もいただこうかな。アカネ、ありがとうな」
俺はフィリオネのサンドイッチを皆に配り終わってからアカネのサンドイッチを待つ。
っていうか、はよ、サンドイッチ取り出せや。
「今日のは、一番の出来よ!」
ようやくアカネが鞄からサンドイッチを取り出す。
紙に包まれているようで、そこそこの大きさだった。
なかなかボリューミーじゃないか。
「アカネさん、いただきます」
「アカネさん!いただきますぅ!」
二人が包み紙を外して・・・止まった。
なんだ?
「お、俺もいただくよ」
包み紙をゆっくりと外して、固まった。
「お、おい。こ、こここれは何だ?」
俺は包み紙の中を指差しする。
僅かに指が震えていた。
「もちろん!サンドイッチよ!」
そんなはずない。
これがサンドイッチなはずがない。
さぁ、こいつの説明を始めよう。
まず、色が黒い。
とにかく黒いのだ。
真っ黒である。
パンの部分が黒く、具の部分も黒い。
ほんのり薄い黒でも、少し他の色が混じった雑な黒色じゃない。
漆黒。
具を見てみよう。
暗黒物質をゆっくりとめくると、暗黒物質があった。
うん?具は・・・・何だ?
え?具から何でこんなに紫色の煙が出てんの?
しまった!
紫色の煙を少し吸ってしまった!
頭がクラクラしてきた。
ポトッ
一瞬、力が緩んで、ダークマターが地面に落ちる。
シュワアアアアアアア
土が煙を上げながら溶ける。
「いやああああああああああ!!!」
どこかで悲鳴が聞こえた。
否。
俺が悲鳴を上げていたのだ。
「おんどりゃあ!!」
考える間もなく、ダークマターを蹴り抜く。
一つ確信した事がある。
「これがサンドイッチなわけあるかい!!」
ただの毒劇物である。
俺に蹴り抜かれた毒劇物は弧を描きながらぶっ飛ぶ。
「あああ。せっかく・・・せっかく作ったのにぃ!」
「うるせえっ!!どうやったらこんな黒く出来んだよ!」
アカネが俺の行動にやいやいと文句を言う。
確かに俺はアカネの厚意を思っきし否定してしまった。それには非常に申し訳ないと考えている。
だけど、これは受け入れられん。
さすがに無理です。
「ううう。うぅ。ううううう」
アカネが泣きまくる。
すまん。
どうしようも無かったんです。
「私!食べますっ!」
どんよりとした空気を察してリリーシャが何をトチ狂ったのかそんな事を言い出した。
「いただきますっ!」
「へ?・・・ほんと?」
「やめろおおおおお!リリーシャ!」
俺の思いは届かず、リリーシャはダークマターにかぶりついた。
「んむ。んむ。んむ」
リリーシャはダークマターを食っている。
だ、大丈夫なのか。
俺の心配をよそにリリーシャは問題なくサンドイッチを噛み続けている。
「んむ。ん・・・ごくり」
皆が固唾を飲んでリリーシャを見つめる。
「・・・・ど、どうなの?」
アカネが涙目でリリーシャに聞く。
クワッ!
リリーシャは突然目を見開き。
「美味しいですよっ!美味しいですっ!アカネさん!」
う、そ。
「本当に?リリーシャ本当?」
「はいっ!」
リリーシャが興奮した様子で返事を返す。
ああっ。
俺は何て事をしてしまったんだ。
食べ物を粗末にした挙句にアカネの作ったサンドイッチを毒扱いしたのだ。
とたんに罪悪感が俺を襲う。
「私も。食べます」
シオンがリリーシャの反応を見て安心したのか、サンドイッチを食べようとした。
俺も捨てたサンドイッチを取りに行って、食べるべきだろう。
そう思って、動こうとしたその時だった。
ばたりとリリーシャが倒れたのだ。
「・・・・・・ふぇ?」
アカネがリリーシャのように言葉を漏らす。
おいおい。
まさか・・・これの原因って・・・
ポワァ
リリーシャの開いた口から紫色の煙が出てきた。
「サンドイッチじゃねぇかあああああああ!!!」
俺はすぐにリリーシャを起こして、腹を叩く。
「・・・・うぇ」
よし!
暗黒物質を吐き出したな!
「シオン!回復だっ!」
「もう詠唱終わってる。『ヒール』」
シオンが魔法名を唱えた後、優しい緑色の光がリリーシャを包み込んだ。
紫色の顔色だったのが、元の綺麗な透き通った美しい肌に戻っていった。
「ふぇ・・・・私、何を・・・」
シオンとアカネ用のダークマターを遠くの土に埋めてから数十分後、リリーシャが目を覚ました。
どうやらさっきの出来事を忘れているらしい。
シオンの時と同じだ。
「何も、ないよ(ニコッ)」
俺は無理矢理誤魔化しました。
▲▲▲▲▲
「うぅ。ごめんなさいぃ」
リリーシャが目を覚ます前、俺たちにアカネが謝ってきた。
どうやら責任を感じているらしい。
俺は萎れた草のようになっているアカネを見て、ぷっと吹き出した。
「な、なによぅ」
俺を責める覇気がない。
本当に落ち込んでいるようだ。
ああもう!仕方ねぇな!
「お前は悪気があった訳じゃないんだろ?」
「・・・うん」
「なら今回の事はただの事故!誰の責任でもねぇよ」
「・・・・でも」
「いつまでもぐちぐち言ってんじゃねぇ!!そんなのはアカネに似合わない」
「私に・・・・似合わない?」
「そうだ。アカネはもっと不遜で、傍若無人で・・・・堂々としているのが似合うよ。だから、ずっとぐちぐち言うのは似合わない」
俺が言い切るとアカネはうつむいた。
そして、両手でほっぺたを挟み込むように叩く。
ぱっと顔を上げた。
顔が赤くなっていたが、どこか吹っ切れた様子の表情だ。
「ふ、ふん。今日は上手くいかなかったけど、今度は美味しいのを作るんだから!」
スゥとアカネは息を大きく吸い込む。
「だから・・・その時は食べてね」
潤んだ目で上目遣いをして、俺を見つめるアカネ。
素直に可愛いと思った。
「ああ!任せな!」
俺はアカネのように仰け反って答えた。
▲▲▲▲▲
その時、桃色イモムシ達は皆、気づく。
西の大草原の奥地に潜んだ桃色イモムシ達は一斉に動き出した。
桃色イモムシ達は、それを感じた瞬間に本能で動いたのだ。
何が桃色イモムシ達を駆り立てたのか。
それは桃色イモムシ達にはわからない。
ただただ、まだ見ぬそれを求めたのだ。
桃色イモムシ達は動き出した。
桃色イモムシ達の先にはジェイク達のパーティーがいる。
そして、そこに目的のものがあるのだと確信した。
桃色イモムシ達は動き出した。
まだ見ぬダークマターを求めて・・・・
安らかに眠れ。桃色イモムシよ。
俺は気絶したシオンを担いで、皆のところへ戻った。
その時に背中の眠け覚ましのツボを押してやる。
これは、気絶したやつにも効くからな。
「いたい・・・」
よし。
何とか目を覚ましたな。
「あれ?一体、私は何を見てたの?・・・」
「気にするな」
俺は無理矢理、誤魔化す。
じゃないと、また気絶する可能性があるからな。
それに忘れていたなら、トラウマとして残らないから、都合が良いんだ。
「むっ!ジェイク、私を下ろして!」
「うん?ああ、悪い」
そっと、シオンを下ろす。
シオンは俺を罵倒するかと思ったが、顔を赤くして、俯いてしまっている。
どうしたんだろう?
「あっ、あの、あのね。私、重くなかった・・・」
なんだ。
そんなことか。
そんなの答えは決まってるじゃないか、
「重かったよ!!」
「・・・・・」
シオンから表情が消えた。
無だ。
無の表情。
さっきまでの顔の赤さが嘘のように色が変わり、青白い色になっていた。
やっちまった。
本当はめちゃくちゃ軽くて、重さなど感じなかったのだが、ついからかおうと冗談を言ってしまった。
ここは素直に謝ろう。
「ごめん!本当は軽かった。すげぇ軽かったすよ。もう軽すぎ。羽毛かと思っちゃったよ。シオンは重くなんてないよー」
「・・・」
「うぐっ、いや、本当にすみません。傷つけるとかそんな気持ちは全くありませんでした。だから、許してくれ。この通り!」
俺は頭をおろす。
九十度のお辞儀だ。
ガイウス爺さんも婆ちゃんが怒った時はよくこうしてた。
「・・・」
だが、未だシオンは黙ったままだ。
アカネとリリーシャに助けてとアイコンタクトを・・・あっ!目をそらすな!
「シオン!機嫌を直してくれ!なんでもするからっ!」
もうこれしかない。
だが、俺がなんでもすると言ったところで無意味だろうな。
「うん!いいよ!許す!」
ほらな。
やっぱり、何も喋らないじゃ・・・へっ?
「ほら、バカジェイク。早く再開する!」
「お、おおう」
今まで無表情だったシオンが一転。
目の前には満面の笑みを浮かべたシオンがいた。
「ほら!ジェイクのバカ!早く!」
シオンが俺の手を握って、歩き出す。
俺は半ば引っ張られる形でシオンに付いて行った。
と、そこでシオンがふと足を止めた。
「どうしーー」
「あのねジェイク。さっきの約束。守らないと・・・」
シオンの雰囲気が氷のように冷たくなって、
「殺すから」
その一言で俺はちびりそうになった。
▲▲▲▲▲
あれから、桃色イモムシを探して、俺たちは西の大草原を歩いていた。
シオンは完全に正常に戻っており、先ほどまでのやり取りが嘘のようだった。
「あれ以来、こないですねー」
リリーシャが息を吐いて言う。
そうなのだ。
あの桃色ピューレ以来、一切桃色イモムシの反応を感じない。
桃色イモムシは実は1メートルほどのクソデカイイモムシなので、すぐに見つかると思ったのだが。
「正直言って、大量発生とか嘘なんじゃない」
「うーん。どうなんだろうな。まだ大草原の奥とは言えないしな」
「しかも、桃色イモムシなんて、全然強くないじゃない。一匹の討伐報酬が高かったから緊張してたけど」
えっ!
アカネはあれで緊張してたの!?
鼻歌を歌いながら、スキップして歩いてたのに!?
「それよりもお腹が空きましたねー」
リリーシャが呑気にもそんな事をのたまう。
「おい。ここは言わば戦場だぞ。あまり、皆の意欲を削ぐ発言はーー」
グギュゥゥゥゥ
リリーシャがジト目を俺に向ける。
対する俺は顔が熱い。
「め、飯にしようか」
「やったぁーーー!」
俺は自分の鞄からフィリオネ特製サンドイッチを取り出す。
アカネも鞄から何かを取り出すようだ。
あっ、そう言えば、サンドイッチを作ってきたんだっけ。
馬車に乗ってた時に言ってたなぁ。
「皆!私もサンドイッチを作ってきたの!フィリオネのサンドイッチも良いけど、私のも食べて!」
「アカネさんのサンドイッチ。私、食べます」
「あっ、そうですね。私もいただきます!お腹すいちゃったって一番初めに言ったし、量が多いのは嬉しいです!」
まぁ。
断る必要もないし、せっかくのアカネの厚意だしな。
「俺もいただこうかな。アカネ、ありがとうな」
俺はフィリオネのサンドイッチを皆に配り終わってからアカネのサンドイッチを待つ。
っていうか、はよ、サンドイッチ取り出せや。
「今日のは、一番の出来よ!」
ようやくアカネが鞄からサンドイッチを取り出す。
紙に包まれているようで、そこそこの大きさだった。
なかなかボリューミーじゃないか。
「アカネさん、いただきます」
「アカネさん!いただきますぅ!」
二人が包み紙を外して・・・止まった。
なんだ?
「お、俺もいただくよ」
包み紙をゆっくりと外して、固まった。
「お、おい。こ、こここれは何だ?」
俺は包み紙の中を指差しする。
僅かに指が震えていた。
「もちろん!サンドイッチよ!」
そんなはずない。
これがサンドイッチなはずがない。
さぁ、こいつの説明を始めよう。
まず、色が黒い。
とにかく黒いのだ。
真っ黒である。
パンの部分が黒く、具の部分も黒い。
ほんのり薄い黒でも、少し他の色が混じった雑な黒色じゃない。
漆黒。
具を見てみよう。
暗黒物質をゆっくりとめくると、暗黒物質があった。
うん?具は・・・・何だ?
え?具から何でこんなに紫色の煙が出てんの?
しまった!
紫色の煙を少し吸ってしまった!
頭がクラクラしてきた。
ポトッ
一瞬、力が緩んで、ダークマターが地面に落ちる。
シュワアアアアアアア
土が煙を上げながら溶ける。
「いやああああああああああ!!!」
どこかで悲鳴が聞こえた。
否。
俺が悲鳴を上げていたのだ。
「おんどりゃあ!!」
考える間もなく、ダークマターを蹴り抜く。
一つ確信した事がある。
「これがサンドイッチなわけあるかい!!」
ただの毒劇物である。
俺に蹴り抜かれた毒劇物は弧を描きながらぶっ飛ぶ。
「あああ。せっかく・・・せっかく作ったのにぃ!」
「うるせえっ!!どうやったらこんな黒く出来んだよ!」
アカネが俺の行動にやいやいと文句を言う。
確かに俺はアカネの厚意を思っきし否定してしまった。それには非常に申し訳ないと考えている。
だけど、これは受け入れられん。
さすがに無理です。
「ううう。うぅ。ううううう」
アカネが泣きまくる。
すまん。
どうしようも無かったんです。
「私!食べますっ!」
どんよりとした空気を察してリリーシャが何をトチ狂ったのかそんな事を言い出した。
「いただきますっ!」
「へ?・・・ほんと?」
「やめろおおおおお!リリーシャ!」
俺の思いは届かず、リリーシャはダークマターにかぶりついた。
「んむ。んむ。んむ」
リリーシャはダークマターを食っている。
だ、大丈夫なのか。
俺の心配をよそにリリーシャは問題なくサンドイッチを噛み続けている。
「んむ。ん・・・ごくり」
皆が固唾を飲んでリリーシャを見つめる。
「・・・・ど、どうなの?」
アカネが涙目でリリーシャに聞く。
クワッ!
リリーシャは突然目を見開き。
「美味しいですよっ!美味しいですっ!アカネさん!」
う、そ。
「本当に?リリーシャ本当?」
「はいっ!」
リリーシャが興奮した様子で返事を返す。
ああっ。
俺は何て事をしてしまったんだ。
食べ物を粗末にした挙句にアカネの作ったサンドイッチを毒扱いしたのだ。
とたんに罪悪感が俺を襲う。
「私も。食べます」
シオンがリリーシャの反応を見て安心したのか、サンドイッチを食べようとした。
俺も捨てたサンドイッチを取りに行って、食べるべきだろう。
そう思って、動こうとしたその時だった。
ばたりとリリーシャが倒れたのだ。
「・・・・・・ふぇ?」
アカネがリリーシャのように言葉を漏らす。
おいおい。
まさか・・・これの原因って・・・
ポワァ
リリーシャの開いた口から紫色の煙が出てきた。
「サンドイッチじゃねぇかあああああああ!!!」
俺はすぐにリリーシャを起こして、腹を叩く。
「・・・・うぇ」
よし!
暗黒物質を吐き出したな!
「シオン!回復だっ!」
「もう詠唱終わってる。『ヒール』」
シオンが魔法名を唱えた後、優しい緑色の光がリリーシャを包み込んだ。
紫色の顔色だったのが、元の綺麗な透き通った美しい肌に戻っていった。
「ふぇ・・・・私、何を・・・」
シオンとアカネ用のダークマターを遠くの土に埋めてから数十分後、リリーシャが目を覚ました。
どうやらさっきの出来事を忘れているらしい。
シオンの時と同じだ。
「何も、ないよ(ニコッ)」
俺は無理矢理誤魔化しました。
▲▲▲▲▲
「うぅ。ごめんなさいぃ」
リリーシャが目を覚ます前、俺たちにアカネが謝ってきた。
どうやら責任を感じているらしい。
俺は萎れた草のようになっているアカネを見て、ぷっと吹き出した。
「な、なによぅ」
俺を責める覇気がない。
本当に落ち込んでいるようだ。
ああもう!仕方ねぇな!
「お前は悪気があった訳じゃないんだろ?」
「・・・うん」
「なら今回の事はただの事故!誰の責任でもねぇよ」
「・・・・でも」
「いつまでもぐちぐち言ってんじゃねぇ!!そんなのはアカネに似合わない」
「私に・・・・似合わない?」
「そうだ。アカネはもっと不遜で、傍若無人で・・・・堂々としているのが似合うよ。だから、ずっとぐちぐち言うのは似合わない」
俺が言い切るとアカネはうつむいた。
そして、両手でほっぺたを挟み込むように叩く。
ぱっと顔を上げた。
顔が赤くなっていたが、どこか吹っ切れた様子の表情だ。
「ふ、ふん。今日は上手くいかなかったけど、今度は美味しいのを作るんだから!」
スゥとアカネは息を大きく吸い込む。
「だから・・・その時は食べてね」
潤んだ目で上目遣いをして、俺を見つめるアカネ。
素直に可愛いと思った。
「ああ!任せな!」
俺はアカネのように仰け反って答えた。
▲▲▲▲▲
その時、桃色イモムシ達は皆、気づく。
西の大草原の奥地に潜んだ桃色イモムシ達は一斉に動き出した。
桃色イモムシ達は、それを感じた瞬間に本能で動いたのだ。
何が桃色イモムシ達を駆り立てたのか。
それは桃色イモムシ達にはわからない。
ただただ、まだ見ぬそれを求めたのだ。
桃色イモムシ達は動き出した。
桃色イモムシ達の先にはジェイク達のパーティーがいる。
そして、そこに目的のものがあるのだと確信した。
桃色イモムシ達は動き出した。
まだ見ぬダークマターを求めて・・・・
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