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第1章・旅立ち

14.旅立ち

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  武器の調達を終えた俺とレイアスは、途中で昼食を挟んだ後ギルドへと向かった。武器も手に入り、そろそろ次の街へ進む頃合いだと思ったからだ。
  フィザさんとの契約条件は1年以内に結果を残すこと。そのために、まずはもっと規模の大きいギルドの中で力を見せていく必要がある。S級の功績ってのがどのくらいのものになるのかは分からないが、少なくともこの村に留まってそれを達成するのは難しいだろう。
  そしてフィザさんも言っていたように、功績を残すために活動をすれば必ず目立つ時が来る。その時に所属しているのが大きな街のギルドなら多少なりそれも緩和されるだろうが、このままここにいたら注目も余計に集まるし面倒な連中も集まってくる。そうしてこの村に迷惑を掛けるのは避けたい。

「エリューシャさん、こんにちは」

「あ、ユウスケさん。それにレイアスさんもこんにちは。お二人のお陰でヒナミ草が沢山用意出来てお医者様も喜んでましたよ」

  ギルドを通して依頼されたものが無事にギルドに届けられた場合、それをそのまま依頼主に渡すやり方とギルドが量を管理して各所に配布するやり方の2つがあるらしい。ヒナミ草は希少価値はそれほどでもないが何をするにも必要で、あれだけの量を採集出来ることは稀なのだそうだ。そこのところは不毛だが盗賊に感謝だ。

「それは良かったです」

「今日は何の御用ですか? 依頼なら、お二人にお願いするほどのものは今は無いですね……」

「いえ、そうじゃなくてですね。そろそろもっと大きな街へ行こうと思ってるんです」

  必要かどうかは分からないが、俺の存在はある程度の秘匿性がある。ギルドに支援してもらうってのは要するに何かやり過ぎたりしたときの揉み消し役ってことだ。何の予告もなく別の大きなギルドに移れば、またそこでも面倒な話が始まる可能性がある。

「あー、そうですか……やっぱり行っちゃうんですね」

  エリューシャさんは残念そうに言った。やはりこの平和な村では、ギルドという存在は刺激が少ないのだろう。

「もう、フィザさんがあんな条件出すから……」

  ブツブツと文句を言いながらも、エリューシャさんはとある街の資料を見せてくれた。

「この村から北東……昨日お二人が行った森と反対方向に約48キロほど行ったところに『セイレン』という大きな街があります。そこにはここよりも大きなギルド支部もありますし、今から鳥を飛ばせばお二人のことも説明しておけます」

「なるほど……レイアス、48キロってどのくらいかかる?」

「ふむ……まあ半刻もあれば着くな」

  ちなみにここでいう半刻ってのはだいたい30分くらいのことだ。一刻で1時間くらいを表す。

「じゃあ出発は夕方で十分だな」

「ああ」

「分かりました、それではすぐに連絡をしておきますね」

「助かります」

  書類に必要事項を記入していく。冒険者歴に3日と書くのはやや抵抗があるが、まあ今は仕方がない。ステータスは非公開に丸をつける。それと従魔契約は有に丸。

「よし……これで大丈夫です」

「ありがとうございます。色々とお世話になりました」

「いえ、こちらこそ。たまには遊びに来てくださいね?」

「約束します」

  軽く手を振り、俺達はギルドを後にした。必要な道具はあらかた揃っているし、移動手段もレイアスがいるから問題無い。出発の準備はほぼ出来ている。


ーーーティナにも言っとかなきゃな。


  短い間とはいえ、色々と世話になった。ミナを諭すのは大変そうだが、何も言わずに出ていくなんてことはできない。




ーーーーーーーーーーーーーーー




「というわけでな。今日の夕方にはここを出ることにした」

「ほえ~、また急だね」

  場所はレストのカウンター席の端。俺が最初に座った席だ。隣にはレイアス、カウンターの中にはティナとミナ。
  昼飯目当ての客があらかたいなくなったこの時間は、レストもかなり落ち着いていた。

「え~、お兄ちゃん行っちゃうの?」

  ミナが悲しそうな目でこちらを見つめている。

「ああ、ごめんな。また来るから」

「う~……」

  ああ、泣きそうな顔……。

「ほらミナ、泣かないの。ユウスケにだってお仕事があるんだから。我慢しないと嫌われちゃうよ?」

「がまん……する……」

  意外にもティナはしっかりした姉をやっているようだ。宿屋を営んでいるんだから無許可で人の部屋に突入してきたりはしてほしくないが、大切なところはちゃんとしている。

「セイレンの街か~。確かにあそこならここよりも仕事には困らないだろうね」

「知ってるのか?」

「うん、まあ……」

  煮え切らない答え。あまり問い詰めるのもナンセンスだな。

「何にせよ色々と世話になったよ。またそのうち帰ってくるから」

  考え方によっては、この村が俺にとっての故郷になるのかもしれない。最初に訪れた村だからってのもあるが、それ以上に平和なこの村の空気が好きなのだ。

「分かった! たくさんお土産話聞かせてね!」

「ミナもいい子で待ってる!」

  二人分の弾ける笑顔に、だいぶ勇気づけられた。

  これから面倒なこともあるだろうが、俺にはちゃんと味方になってくれる人達がいる。相棒がいる。天から見守ってくれている親友がいる。
  
  きっと大丈夫だ。そう信じている。
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