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2部
5話 セティ発情再び
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メンフィスの視察から帰って三日後、セティは体の内の熱を感じた。
風邪をひいての発熱ではない、体の芯が疼くような熱さだ。そして、どうしようもない怠さも感じる。
「ヘケト、なんだか熱があるようで……怠いんだ」
火照った顔で訴えるセティに、ヘケトは直ぐに発情だと察して侍医を呼びにやる。侍従頭のクヌムは急ぎウシルスへ知らせる。
皆、セティの発情はいつ来てもおかしくないと、心構えは出来ている。
侍医が慌ててやって来た頃には、セティの発する甘い香りがベータにも分かるほどになっていた。
「セティ様、お薬を煎じておりますので、今少しお待ち下さい」
最初の発情の時、粉薬が全く効かなかった。その反省から研究した結果、粉薬より薬湯が効果的との結論になった。
「さあ、少々苦いですがこれをお飲み下さい。お体もお楽になると存じます」
少々どころか、かなり苦い。セティは顔をしかめながら薬湯を飲む。そこへ、ウシルスっもやって来た。
「セティ、具合はどうか? 薬湯を飲んでおるのか?」
ウシルスには部屋に入る前から、香りでセティの発情は分かった。護衛の近衛兵のアルファも、それを察して皆下がっていた。アルファには危険な香りだ。
「兄上……」
ウシルスを見上げるセティの顔は、熱で色付き眼は潤んでいる。
「セティ、きついのか? 薬湯を飲めば楽になるぞ」
セティは残りの薬湯を、苦い、まずい、と思いながら何とか飲み干す。
そんなセティをウシルスは、相当苦いのだろうと思いながら見守る。可哀想とは思うが仕方ない。見守る中、薬湯よ効いてくれと願う。
最初の時はあの男が抑えたが、今はいない。いざとなれば己がとも思うが、今はまだその時ではない。未だ時は熟成していない。
ならば、侍医団の力に、薬に頼るしかない。
ウシルスは、ハーデスのセティへの求婚を信じていない。自分の立場に置き換えれば、はっきりと分かる。見知らぬ国のオメガを妃に迎えるなど有り得ない。
ならば、自分は着々と、ことを進めていく。最初の発情から三月。セティの発情の間隔は三ヶ月かもしれない。
今回と、あと二、三度は薬で……その後は……。
セティは熱のある体でネフェルを求めた。この時のセティが求めたのはハーデスではなくネフェル。ネフェルはハーデスだけど、あの最初の発情の時、セティを抱いて、この熱を抑えてくれたのはネフェル。
セティを幻の中で抱いたのはネフェル。
ネフェル、ネフェル……抱いて、抱いて……。
「ネ……ネフェル……」
僅かにセティの口から漏れた。
ウシルスの耳には入った。
セティよ、あの者はいない。側にいるのはこの兄だ。
セティ、そなたを助けてやれるのは、この兄だけだ。
心配した、姉のアティスもやって来る。
「どうじゃ様子は? 薬湯を飲ませたのか?」
「少しましになっているようだ。やはり薬湯の方が効くようだな」
セティの額の汗を拭ってやりながらウシルスが言う。
「そのようじゃな。ああ、でもまだ辛そうではあるな」
そう言いながら、セティの手を握るアティス。
可哀想なセティ、オメガに生まれたばっかりに……不憫さが募る。
セティは、『はあ、はあ……』と息は荒いが、最初の時のように激しくネフェルを求めるようなことはない。
やはり薬が効いているのか、それとも熱で喘ぎながらも、ネフェルがいないことは分かっているのか……。
「このままお眠りになられれば、よろしいのですが……」
侍医が心配気に言う。今回の薬湯は、眠りを誘う薬草を多く配合した。それを、より体に染み渡らすようにと、薬湯に煎じたのだ。つまり、強引に眠らせて、発情から逸らせばいいのではないかと言う、侍医団の結論になった。
侍医としても、効いてくれるようにと、願うばかりだ。何しろ侍医団にとっても、オメガの発情を薬で抑えるのは初めてのことで、全てが手探りなのだ。
「効いているようだな、息づかいが静かになってきた」
「ええ、そのようね……良かった」
セティの息づかいが少しずつ穏やかになり、横に付いている、姉と兄も安堵の表情になる。
姉と兄の手を握りながら、セティはやがて眠りにつく。
「眠ったようだな。今回の薬湯は効いて良かった。次回からも同じものを用意せよ」
侍医も心底ほっとしながら、「はい、承りました」と答えた。一番安堵したのは侍医かもしれない。
こうして皆が祈るように見守る中、セティの二度目の発情は、なんとかやり過ごすことができた。
そして、三ヶ月後また同じようにセティは発情した。
その時も同じ薬湯を飲み、発情は抑えられた。しかし、眠らされた後、目覚めたセティは憔悴していた。これは、半ば強引に眠らせることによる副作用だと侍医は言う。
そのため、余り長くこの薬で抑えることはできない。セティの心身がもたない。
だからといって他の方法も難しい。つまり、オメガの発情を抑えるのはアルファ。それが自然の摂理である。それを、薬で抑えるのは自然に逆らう事。
セティの体のことを考えるなら、アルファが抑えてやるのが一番。おそらく、それは心にも影響する。薬の副作用で憔悴するのは体だけではなく、心も弱るだろう。それが侍医団の見解だった。
風邪をひいての発熱ではない、体の芯が疼くような熱さだ。そして、どうしようもない怠さも感じる。
「ヘケト、なんだか熱があるようで……怠いんだ」
火照った顔で訴えるセティに、ヘケトは直ぐに発情だと察して侍医を呼びにやる。侍従頭のクヌムは急ぎウシルスへ知らせる。
皆、セティの発情はいつ来てもおかしくないと、心構えは出来ている。
侍医が慌ててやって来た頃には、セティの発する甘い香りがベータにも分かるほどになっていた。
「セティ様、お薬を煎じておりますので、今少しお待ち下さい」
最初の発情の時、粉薬が全く効かなかった。その反省から研究した結果、粉薬より薬湯が効果的との結論になった。
「さあ、少々苦いですがこれをお飲み下さい。お体もお楽になると存じます」
少々どころか、かなり苦い。セティは顔をしかめながら薬湯を飲む。そこへ、ウシルスっもやって来た。
「セティ、具合はどうか? 薬湯を飲んでおるのか?」
ウシルスには部屋に入る前から、香りでセティの発情は分かった。護衛の近衛兵のアルファも、それを察して皆下がっていた。アルファには危険な香りだ。
「兄上……」
ウシルスを見上げるセティの顔は、熱で色付き眼は潤んでいる。
「セティ、きついのか? 薬湯を飲めば楽になるぞ」
セティは残りの薬湯を、苦い、まずい、と思いながら何とか飲み干す。
そんなセティをウシルスは、相当苦いのだろうと思いながら見守る。可哀想とは思うが仕方ない。見守る中、薬湯よ効いてくれと願う。
最初の時はあの男が抑えたが、今はいない。いざとなれば己がとも思うが、今はまだその時ではない。未だ時は熟成していない。
ならば、侍医団の力に、薬に頼るしかない。
ウシルスは、ハーデスのセティへの求婚を信じていない。自分の立場に置き換えれば、はっきりと分かる。見知らぬ国のオメガを妃に迎えるなど有り得ない。
ならば、自分は着々と、ことを進めていく。最初の発情から三月。セティの発情の間隔は三ヶ月かもしれない。
今回と、あと二、三度は薬で……その後は……。
セティは熱のある体でネフェルを求めた。この時のセティが求めたのはハーデスではなくネフェル。ネフェルはハーデスだけど、あの最初の発情の時、セティを抱いて、この熱を抑えてくれたのはネフェル。
セティを幻の中で抱いたのはネフェル。
ネフェル、ネフェル……抱いて、抱いて……。
「ネ……ネフェル……」
僅かにセティの口から漏れた。
ウシルスの耳には入った。
セティよ、あの者はいない。側にいるのはこの兄だ。
セティ、そなたを助けてやれるのは、この兄だけだ。
心配した、姉のアティスもやって来る。
「どうじゃ様子は? 薬湯を飲ませたのか?」
「少しましになっているようだ。やはり薬湯の方が効くようだな」
セティの額の汗を拭ってやりながらウシルスが言う。
「そのようじゃな。ああ、でもまだ辛そうではあるな」
そう言いながら、セティの手を握るアティス。
可哀想なセティ、オメガに生まれたばっかりに……不憫さが募る。
セティは、『はあ、はあ……』と息は荒いが、最初の時のように激しくネフェルを求めるようなことはない。
やはり薬が効いているのか、それとも熱で喘ぎながらも、ネフェルがいないことは分かっているのか……。
「このままお眠りになられれば、よろしいのですが……」
侍医が心配気に言う。今回の薬湯は、眠りを誘う薬草を多く配合した。それを、より体に染み渡らすようにと、薬湯に煎じたのだ。つまり、強引に眠らせて、発情から逸らせばいいのではないかと言う、侍医団の結論になった。
侍医としても、効いてくれるようにと、願うばかりだ。何しろ侍医団にとっても、オメガの発情を薬で抑えるのは初めてのことで、全てが手探りなのだ。
「効いているようだな、息づかいが静かになってきた」
「ええ、そのようね……良かった」
セティの息づかいが少しずつ穏やかになり、横に付いている、姉と兄も安堵の表情になる。
姉と兄の手を握りながら、セティはやがて眠りにつく。
「眠ったようだな。今回の薬湯は効いて良かった。次回からも同じものを用意せよ」
侍医も心底ほっとしながら、「はい、承りました」と答えた。一番安堵したのは侍医かもしれない。
こうして皆が祈るように見守る中、セティの二度目の発情は、なんとかやり過ごすことができた。
そして、三ヶ月後また同じようにセティは発情した。
その時も同じ薬湯を飲み、発情は抑えられた。しかし、眠らされた後、目覚めたセティは憔悴していた。これは、半ば強引に眠らせることによる副作用だと侍医は言う。
そのため、余り長くこの薬で抑えることはできない。セティの心身がもたない。
だからといって他の方法も難しい。つまり、オメガの発情を抑えるのはアルファ。それが自然の摂理である。それを、薬で抑えるのは自然に逆らう事。
セティの体のことを考えるなら、アルファが抑えてやるのが一番。おそらく、それは心にも影響する。薬の副作用で憔悴するのは体だけではなく、心も弱るだろう。それが侍医団の見解だった。
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