星から落ちた王子さま

梅川 ノン

文字の大きさ
30 / 49
2部

7話 星の国からの招待

しおりを挟む
 王宮の前庭に星の国の飛行船が降り立った。
 今回は王宮警備の兵士たちにも、それが星の国の飛行船と直ぐに分かった。その報は、直ぐに王宮中枢部に伝えられた。

 星の国の飛行船! 皆、騒然となった。

 まさか本気だったのか! 

 近衛連隊長が、連隊と共に飛行船へと向かった。

 ヘパイストスが、部下と共に降りてくる。ハーデスを迎えに来た時は平服だったが、今日は正装に威儀を正している。国王ハーデスの正式な使者だからだ。
 ヘパイストスは出迎えた近衛連隊長に、訪問の目的を告げた。国王ハーデスの親書も携えていると伝える。

 近衛連隊長は直ぐに、至政殿へ行き、国王と王太子に報告する。
「国王ハーデスの親書とな。つまり、ハーデス殿は即位されたのだな……だから半年音沙汰なかったのか……。承知した。お通しせよ」

 急報を聞いて王妃、アティス、そしてセティもやって来る。皆で、使者を迎えることになった。

 ヘパイストスを先頭に使者が、至政殿に入って来る。半年前は単に王太子側近だったヘパイストスだが、今は歴とした国王の補佐官だ。

 ヘパイストスは、先ずハーデス帰国直後前国王が崩御したためのあれやこれやで訪問が遅れた詫びを述べる。その後、セティを是非に星の国へ招待したいとの述べ、ハーデスからの親書を渡す。
 親書は、国王あてとセティへあてたもの二通ある。国王も、セティもその場で読み、国王はそれをウシルスにも読ませる。

 求婚より先に、国への招待、そこに何か星の国の事情があるように思われる。受けて良いものか……国王は協議をしてから返事をしたいと思う。
「返事は後ほどさせてもらう。その間、使者殿にはゆるりと過ごされよ」

「ウシルスそなたはどう思うか?」
 ヘパイストスたち使者が立ち去ると、早速国王は下問する。
「あまりにも唐突ですね。大事なセティを行かせるわけにはいきません」
「ですが、兄上!」
 皆がセティを見る。
 セティはハーデス親筆の親書に感動していた。ハーデスは決して自分を忘れていなかった。是非にも星の国へ来て欲しいと書いてあった。行きたい、ハーデスの国へ。そして会いたい。もう半年も会っていない。ハーデスと出会ってから、こんなにも離れていたことはない。会いたい思いは日々募っている。
「わ、わたくしは行きたいと思います。ハーデス様が国王として、正式に招待下さったのです。是非ともお受けしたいと思うのです」
 一国の王が、親筆で認めている招待状。その意味は重い。それは多分どの国でも変わらないだろう。
「一刀両断に断るわけにもいかんだろうな」
「しかし、セティ一人で、余りにも危険です」
 それも当然のこと。友好関係が全くなく、国の情報も皆無。そんなところへセティをやれるのか、答えは否だ。
「それではわたくしが同行しましょう。そして、気働きのできる者を幾人か同行させればよいのでは」
 姉上、また余計なことを……ウシルスは苦い顔をするが、セティの顔はぱーっと明るくなる。
「姉上! 一緒に行ってくださるのですか!」
「しかし、正嫡の王子と王女二人で見知らぬ国へ行き、何かあれば」
「太子の懸念も、もっともだな」
「正嫡の王子と王女だからこそ、見聞を広めることは大事なことと思うのです。恐れているばかりでは何も進みません」
 自分の身の上なら、恐れなどない。セティだから心配なウシルスと、アティスの冒険心とのぶつかり合い。アティスは行ってみたいのだ。星の国へ。セティにことかけた純粋な好奇心でもある。
「ならば、わたくしが同行しましょう」
「それはならん!」
 ウシルスの言を、国王は即座に却下する。却下されてみれば、ウシルスも反論できない。それこそ、王太子の立場がそれは許されないと分かる。しかし、心配だ。姉で大丈夫だろうか……。
「そなた、わたくしだけの同行で心配なら、メニ候も同行させたらいいのではないか? 彼が同行するならわたくしも心強い」
 アティスの言に、セティは大きく頷きながらウシルスを見つめる。何を言わんとしているのかは分かる。行きたいのだろう。全く、兄の心、弟知らずだ……。
 ウシルスは大いに嘆息しながら、メニ候か……あれが同行するならと、考える。
「わかりました。メニ候へは、わたくしから話します。返事はその後で」

「わたくしが同行するのでございますか」
「そうだ。行かせたくはないが、行きたいセティと姉上が収まらぬ。全く困ったものだ。ならば、そなたが同行してくれればと思った」
 ああ、またあのセティ様の潤んだ眼で見つめられたのか……全く甘いことでと思うが、自身も星の国に興味があるのも事実。
 この半年、手を尽くして調べたが、はっきりしたことは未だ分からないのだ。行って見てくるしか星の国を知ることはできないだろう。
「よろしゅうございます。わたくしが同行いたしましょう。この眼でつぶさに見てまいります。かの国を」
「ああ、よろしく頼む」

 星の国からのセティへの招待は、姉のアティスが保護者の立場で付き添い、王太子補佐官のメニ候が同行すると返事をする。
 受けたヘパイストは、断られることも想定していたので安堵する。第一関門を突破した思いだ。直ぐに気を通してハーデスに伝える。喜ぶハーデスの思いが伝わる。これで本格的に出迎えの準備をするだろう。

 セティは浮足立っていた。
 国王になったハーデスからの正式な招待。星の国へ来て、星の国を知って欲しいとあった。そして、セティの素晴らしさを我が国にも知って欲しいと。それはセティにとって最高の賛辞。
 ハーデスは約束を覚えていたのだ。この半年、不安や、辛いこともあったが、良かった。嬉しい……心から嬉しい。そして、早く行きたい。ハーデスの住む星の国へ……。

 ウシルスの指示で、早急に出発の準備が進む。行かせると決まったからには、セティには最高の装いをさせねばならない。
 そして、メニ候に同行させる者の選定も重要だ。メニ候の手足となって星の国の調査をするのだから、優秀でなければ務まらない。ウシルスとメニ候とで、部下の中から特に優秀な者を厳選して選んだ。

 セティには、乳母のヘケトとアニスの母子も同行する。二人はセティから離れることは考えられない。どこへ行くのも同行するのだ。それが未知の国でもだ。

 慌ただしく準備が進み、いよいよ星に国へ行く当日になった。
「セティ、よいかどこへ行こうともそなたはケトメ王国の正嫡の王子。その立場を忘れぬように。堂々と振舞うのだ」
 威厳のある父王の言葉に、セティはしっかりと頷く。
「父上のお言葉を胸に刻み、しっかりと行ってまいります」
「セティや、道中くれぐれも気を付けるのですよ。何かあればすぐに侍医かヘケトに言うのですよ」
 母は心配のため涙目だ。今になって行かせたくないと思っているのだ。
「どうか母上……ご心配なさらずに。必ずや元気で帰ってまいります」
「姉上、くれぐれもセティをよろしくお願いします。セティ、そなたの帰りを待っているぞ」
「心配しなくてもわたくしやメニ候が付いておりますから大丈夫ですよ」
「兄上、お見送りありがとうございます」
 
 見送りの両親と兄、それぞれと言葉を交わした後、セティはアティスと並んで飛行船へと入っていく。
 続いてメニ候はじめ随行の者たちが入り、最後にヘパイストスが大きく礼をしてから入り、扉が閉まる。
 いよいよケトメ王国を離れ、星の国へと向うのだ。
 
 国王王妃、そしてウシルスの三人は飛行船が見えなくなるまで見送った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

塔の上のカミーユ~幽囚の王子は亜人の国で愛される~【本編完結】

蕾白
BL
国境近くにあるその白い石の塔には一人の美しい姫君が幽閉されている。 けれど、幽閉されていたのはある事情から王女として育てられたカミーユ王子だった。彼は父王の罪によって十三年間を塔の中で過ごしてきた。 そんな彼の前に一人の男、冒険者のアレクが現れる。 自分の世界を変えてくれるアレクにカミーユは心惹かれていくけれど、彼の不安定な立場を危うくする事態が近づいてきていた……というお話になります。 2024/4/22 完結しました。ありがとうございました。 

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

目撃者、モブ

みけねこ
BL
平凡で生きてきた一般人主人公、ところがある日学園の催し物で事件が起き……⁈

りんご成金のご令息

けい
BL
 ノアには前世の記憶はあったがあまり役には立っていなかった。そもそもあまりにもあいまい過ぎた。魔力も身体能力も平凡で何か才能があるわけでもない。幸いにも裕福な商家の末っ子に生まれた彼は、真面目に学んで身を立てようとコツコツと勉強する。おかげで王都の学園で教育を受けられるようになったが、在学中に両親と兄が死に、店も乗っ取られ、残された姉と彼女の息子を育てるために学園を出て冒険者として生きていくことになる。  それから二年がたち、冒険者としていろいろあった後、ノアは学園の寮で同室だった同級生、ロイと再会する。彼が手を貸してくれたおかげで、生活に余裕が出て、目標に向けて頑張る時間もとれて、このまま姉と甥っ子と静かに暮らしていければいいと思っていたところ、姉が再婚して家を出て、ノアは一人になってしまう。新しい住処を探そうとするノアに、ロイは同居を持ち掛ける。ロイ×ノア。ふんわりした異世界転生もの。 他サイトにも投稿しています。

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

愛しの妻は黒の魔王!?

ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」 ――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。 皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。 身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。 魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。 表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます! 11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

処理中です...