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4部
1話 ハーデス ケトメ王国へ
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国王ハーデスと共に飛行船へ乗り込んだ顔ぶれは、ハーデスの本気を現したものだ。
随員の筆頭として、宰相アッタロス。そして、王妹のヘスティア、第一の側近であり国王補佐官のヘパイストスとペルディッカス。錚々たる顔ぶれだ。
それだけではなく、セティが王妃になった際、王妃付き侍従長と女官長を務める予定の者も同行している。直ぐにでも、セティに付き従うことができるようにと配慮からだった。
飛行船が、ゆっくりとケトメ王国の王宮の前に降り立った。
ヘパイストスとペルディッカスに続いてハーデスが降りる。ハーデスにとって久しぶりのケトメ王国の地。
ここでの生活が蘇り、懐かしさを覚えた。
今となっては、一心にセティを慕っていたあの気持ちも懐かしい。王太子や王として身を縛るものは何もなかった。
飛行船が降り立った報に接して慌ててやって来た近衛連隊長に、ヘパイストスが来訪の意を告げる。
ヘパイストスの後ろにハーデスの姿を認めた近衛連隊長は驚き、直ぐに至政殿へと急を知らせるため部下を遣わす。
「何っ! ハーデス殿自身が来ているのか!?」
急を聞いた国王、そしてウシルスも驚きの声を上げる。
まさか、本気だったのか――。
しかも、随員に宰相や王妹、補佐官たちも来ているという。本気と認めざるをえない。
とにもかくにも国王自身が来ているのなら、丁重に迎えなければならない。ウシルスの命令で急ぎ迎えの準備を整え、王宮の客殿にてハーデス一行を迎えることになった。
ハーデスは、ケトメ王国の地に降り立った時から、セティの香りを感じていた。香りの感じ方から、セティはおそらく王子の宮にいるのだろうと思った。
早く愛しい方に会いたい……そして、その香りを強く感じたい。心は急くが、落ち着けと己に言い聞かせる。
今の己は、一国の王として、王妃になるべく人として、この国の王子を迎えに来たのだ。それを忘れてはいけない。ただオメガを求めるアルファではいけない。
近衛武官に導かれて客殿へと入ると、やはり愛する人の姿はなく、国王と王太子ウシルスに迎え入れられた。
「本日は突然の来訪お許し願いたい。半年前に宰相を遣わした通り、セティ殿下を我が妃に迎えるべくやってきました。王妃付きの侍従長と女官長となる予定の者も同行させております。何卒セティ殿下を我が妃に迎えることをお許し願いたい。可能なら一緒に我が国へお連れしたいと考えております。合わせてお許し願いたいと存じます」
ハーデスの言上に、国王そしてウシルスも絶句する。
これでは、益々本気と認めざるをえない。しかし、どうするのか……。こちらは、何も信じていなかった。ゆえに、何の心構えも出来ていない。
「ハーデス殿、確かに宰相殿から親書はいただいてはいた。しかし、何分急な事で、申し訳ないが、暫し時間をいただきたい。よろしいかな」
「それは当然にございます」
「ありがたい。それではその間迎賓殿にてお寛ぎ召されよ」
セティは王子の宮で書を読んでいた。すると、微かな香りを感じ、心が浮足立った。
そこへ、星の国の飛行船が降り立ったとの報を聞く。
「ハーデス様だ!」
直ぐに出て行こうとしたがアニスに止められる。じりじりと気持ちが落ち着かない。
早く会いたい! ハーデスは今、この地にいるのだ。直ぐにも飛んでいき会いたい。
しかし、国王は王室一家の話し合いのためにハーデスから時間をもらったのだが、話し合いの中にセティは加えられなかったので、そのままじりじりと待たされることになる。
セティは、何も手の付かない状態で、時を過ごすことになった。
「まさか、本気であったとはのう」
「ええ、驚きました。随員の顔ぶれからも本気でしょう。これだけの者を連れて来るとは……」
国王王妃の、驚きの感想に、自分も驚いたもののウシルスの表情はさえない。いや、全く苦々しくて、怒りまで覚える。
「丁重にお引き取り願いましょう」
「それは、断ると言う事か?」
「はい。既にセティはわたくしの妃にと決まっております」
「太子殿の言う事も分かります。しかし、先方は約束を守ったのです。無下に断るのも失礼に思うのですが」
アティスの言葉に、ウシルスは気色ばむ。
「ならば、セティを星の国へやると言うのですか!」
「そうは言っておりません。ただ、約束を守ったハーデス殿への対応は考えねばなりません」
「そうだな。一国の王が直接やって来るのは、重いことだ。本気だと信じなかったこちらにも責はある」
父王の言葉には、さすがのウシルスも反論できない。確かに、信じなかったのはこちらの落ち度。相手は、約束を守ったのだ。
「セティの気持ちも……セティは今?」
「王子の宮に留めております」
「そうですか。しかし、ハーデス殿の来訪には気付いておりましょう。それを知ったセティが、どう思うか……」
ハーデスが約束を守らねば、いずれはセティの気持ちにも区切りがついただろう。しかし、守った今セティがハーデスを忘れることができるのか……。
母と姉はそれを懸念した。そうなれば、ウシルスとの話もどうなるのか……。分からなくなる。
四人は暫し沈黙した。
その後、国王が口を開いた。
「余がハーデス殿とさしで話そう。そこで見極め結論を出す。皆、それでよいな」
つまり、国王と国王が余人を交えず、さしで話す。そこで決まったことは絶対である。全ての者が従うこと。
三人は、頭を下げて承知を現した。こういう時は、夫や父に対するものではなく、国王に対する敬意がある。
随員の筆頭として、宰相アッタロス。そして、王妹のヘスティア、第一の側近であり国王補佐官のヘパイストスとペルディッカス。錚々たる顔ぶれだ。
それだけではなく、セティが王妃になった際、王妃付き侍従長と女官長を務める予定の者も同行している。直ぐにでも、セティに付き従うことができるようにと配慮からだった。
飛行船が、ゆっくりとケトメ王国の王宮の前に降り立った。
ヘパイストスとペルディッカスに続いてハーデスが降りる。ハーデスにとって久しぶりのケトメ王国の地。
ここでの生活が蘇り、懐かしさを覚えた。
今となっては、一心にセティを慕っていたあの気持ちも懐かしい。王太子や王として身を縛るものは何もなかった。
飛行船が降り立った報に接して慌ててやって来た近衛連隊長に、ヘパイストスが来訪の意を告げる。
ヘパイストスの後ろにハーデスの姿を認めた近衛連隊長は驚き、直ぐに至政殿へと急を知らせるため部下を遣わす。
「何っ! ハーデス殿自身が来ているのか!?」
急を聞いた国王、そしてウシルスも驚きの声を上げる。
まさか、本気だったのか――。
しかも、随員に宰相や王妹、補佐官たちも来ているという。本気と認めざるをえない。
とにもかくにも国王自身が来ているのなら、丁重に迎えなければならない。ウシルスの命令で急ぎ迎えの準備を整え、王宮の客殿にてハーデス一行を迎えることになった。
ハーデスは、ケトメ王国の地に降り立った時から、セティの香りを感じていた。香りの感じ方から、セティはおそらく王子の宮にいるのだろうと思った。
早く愛しい方に会いたい……そして、その香りを強く感じたい。心は急くが、落ち着けと己に言い聞かせる。
今の己は、一国の王として、王妃になるべく人として、この国の王子を迎えに来たのだ。それを忘れてはいけない。ただオメガを求めるアルファではいけない。
近衛武官に導かれて客殿へと入ると、やはり愛する人の姿はなく、国王と王太子ウシルスに迎え入れられた。
「本日は突然の来訪お許し願いたい。半年前に宰相を遣わした通り、セティ殿下を我が妃に迎えるべくやってきました。王妃付きの侍従長と女官長となる予定の者も同行させております。何卒セティ殿下を我が妃に迎えることをお許し願いたい。可能なら一緒に我が国へお連れしたいと考えております。合わせてお許し願いたいと存じます」
ハーデスの言上に、国王そしてウシルスも絶句する。
これでは、益々本気と認めざるをえない。しかし、どうするのか……。こちらは、何も信じていなかった。ゆえに、何の心構えも出来ていない。
「ハーデス殿、確かに宰相殿から親書はいただいてはいた。しかし、何分急な事で、申し訳ないが、暫し時間をいただきたい。よろしいかな」
「それは当然にございます」
「ありがたい。それではその間迎賓殿にてお寛ぎ召されよ」
セティは王子の宮で書を読んでいた。すると、微かな香りを感じ、心が浮足立った。
そこへ、星の国の飛行船が降り立ったとの報を聞く。
「ハーデス様だ!」
直ぐに出て行こうとしたがアニスに止められる。じりじりと気持ちが落ち着かない。
早く会いたい! ハーデスは今、この地にいるのだ。直ぐにも飛んでいき会いたい。
しかし、国王は王室一家の話し合いのためにハーデスから時間をもらったのだが、話し合いの中にセティは加えられなかったので、そのままじりじりと待たされることになる。
セティは、何も手の付かない状態で、時を過ごすことになった。
「まさか、本気であったとはのう」
「ええ、驚きました。随員の顔ぶれからも本気でしょう。これだけの者を連れて来るとは……」
国王王妃の、驚きの感想に、自分も驚いたもののウシルスの表情はさえない。いや、全く苦々しくて、怒りまで覚える。
「丁重にお引き取り願いましょう」
「それは、断ると言う事か?」
「はい。既にセティはわたくしの妃にと決まっております」
「太子殿の言う事も分かります。しかし、先方は約束を守ったのです。無下に断るのも失礼に思うのですが」
アティスの言葉に、ウシルスは気色ばむ。
「ならば、セティを星の国へやると言うのですか!」
「そうは言っておりません。ただ、約束を守ったハーデス殿への対応は考えねばなりません」
「そうだな。一国の王が直接やって来るのは、重いことだ。本気だと信じなかったこちらにも責はある」
父王の言葉には、さすがのウシルスも反論できない。確かに、信じなかったのはこちらの落ち度。相手は、約束を守ったのだ。
「セティの気持ちも……セティは今?」
「王子の宮に留めております」
「そうですか。しかし、ハーデス殿の来訪には気付いておりましょう。それを知ったセティが、どう思うか……」
ハーデスが約束を守らねば、いずれはセティの気持ちにも区切りがついただろう。しかし、守った今セティがハーデスを忘れることができるのか……。
母と姉はそれを懸念した。そうなれば、ウシルスとの話もどうなるのか……。分からなくなる。
四人は暫し沈黙した。
その後、国王が口を開いた。
「余がハーデス殿とさしで話そう。そこで見極め結論を出す。皆、それでよいな」
つまり、国王と国王が余人を交えず、さしで話す。そこで決まったことは絶対である。全ての者が従うこと。
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