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4部
4話 嫁ぎの準備
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半月後、星の国の飛行船でメニ候が帰国した。
メニ候の報告によると、星の国では国を挙げてセティを王妃に迎えるための準備で動いているとのこと。
王太后にも拝謁し直接その意向も聞くことができたとのことで、ハーデスの言葉は事実と認められた。
それを受けてトトメスは、星の国へ戻る飛行船にハーデスとの約束通り、星の国でセティを迎えるための従者を乗せた。これらの者たちは、星の国でセティを迎えるための準備に大いに役立つこととなる。
セティの好みなどを知り、より万全な状態で迎えたいというハーデスの意向に沿うことだった。
「メニ候の報告で先方の本気度は知れた。それにはこちらも応えねばならん。約束の期限まであと二月と少し。準備を加速せねばならんな」
王の言葉に皆が頷いた。ウシルスもだった。事、ここまでくると、もう抗うことはできない。断腸の思いでセティのことはあきらめねばならない。無念だが仕方ない。
確かめるためにメニ候を遣わしたが、ウシルスには半ば分かっていた。一国の国王が直接出向いてきたことで、その本気度は知れていた。ただ、最後の確認をしたかったのだ。最後の抗いだったかもしれない。
ケトメ王国に国王トトメスの布告が発せられた。
第二王子セティは、星の国の国王に嫁ぎ、星の国の王妃になると決まった。
これよりセティが嫁ぐ日まで、国を挙げてその準備をし、全ての国民が、嫁いでいくセティを見送るように。
国王の布告に国民は驚いた。
星の国とはあの星か?! セティ様は星に行かれるのか?!
驚きの中に、徐々に情報が伝わってくる。
星の国の国王が自らやってきて、是非にもと求婚したと!
夢のような話だ! 夜空に輝く星へ嫁ぐ。しかも王妃様になるのだ。まるでおとぎ話のようだと、国民は皆興奮した。
そして、さすがはセティ様だと称賛した。
我が国の至宝セティ様!
セティ様が最高に輝くように、最高の装いで送り出さねばならない。そして花嫁道具は最高の物を準備せねばならない。
国を挙げて喜びと興奮の中で、セティの嫁ぎの準備は進められて行く。
喜びと興奮の中心は無論王宮である。
しかし、その中心であるセティは物静かに過ごしている。
間違いなく主役なはずなのに、自身は興奮とは程遠い心境でいる。決して冷めているわけではない。心穏やかなのだった。
セティは、あと二月と少しでハーデスと会えるという思いよりも、ここにいるのもあとわずかとの思いの方が勝っていた。
自分をここまで優しく育んでくれた家族、そして祖国。
改めて自分はケトメ王国の王子として生まれた幸せを感じている。
セティの結婚を知った全ての者が喜んでくれる。ありがたい……感謝の思いで一杯になる。
短い間ではあるが、ケトメ王国の王子として悔いなきように過ごさねばと思うのだ。
それがセティにできる感謝の表し方なのだ。
「ヘケト、本当にヘケトも星の国へ行くの?」
「もちろんでございます」
ヘケトも、そしてアニスもセティと共に星の国へ行くことになっている。本人たちが強く希望したのだ。
「でも、星の国は遠いよ。ケトメ王国を離れて大丈夫なの。生まれてからずーっと暮らした国だから淋しくないかなって」
「確かにそうでございますが、ヘケトはセティ様が生まれてから片時も離れずお仕えしてきました。わたくしにとってはセティ様とお別れするほうがはるかに辛いのです。半身をもぎ取られるような辛さです。ですから、お供させてくださいませ」
母の言葉にアニスも頷きながら続いた。
「セティ様、わたしもですよ。ずっと以前から、セティ様が嫁ぐ時も必ずお供すると決めていましたから」
「そうか、ヘケト、そしてアニスもありがとう。嬉しいよ。二人が一緒に行ってくれるから凄く心強い。ただ、ここで暮らすのもあと僅かだと思うと、淋しく思うのも事実なんだ」
二人にだからこそ言える、今の本音ではある。
「そうでございますね。王子として幸せに過ごしてこられたからこその思いではありますね。そして……嫁ぐ前はだれしも思う事なのかもしれません」
三人の間に静かな風が流れる。温暖なケトメの風だ。この風を感じられるのもあと僅か……。
「父上母上、そして姉上兄上にそれぞれ感謝の思いを伝えたい。お時間とって頂けるだろうか?」
何よりも一番、自分を愛し育んでくれた家族に感謝の気持ちを伝えたい。子として、弟として。そして、星の国へ行きたい。
「それは良いお考えでございますね。お時間頂けるように侍従頭のクヌム殿からお願いしていただきましょう」
セティの意向は直ぐに、クヌムから伝えられた。
両親や姉兄もそれぞれセティと二人だけで時を過ごしたい。直に伝えたいことがあると思っていたので、直ぐに時間の調整が行われた。
家族にとっても、嫁いでいくセティと最後に過ごす時。貴重な時間になるだろう。
最初に姉のアティス。続いて、兄のウシルス。そして母の王妃。最後に父国王と、それぞれ一晩を過ごすことに決まった。
そしてハーデス来訪の前日は、家族五人で最後の一日を過ごすとも決まった。
メニ候の報告によると、星の国では国を挙げてセティを王妃に迎えるための準備で動いているとのこと。
王太后にも拝謁し直接その意向も聞くことができたとのことで、ハーデスの言葉は事実と認められた。
それを受けてトトメスは、星の国へ戻る飛行船にハーデスとの約束通り、星の国でセティを迎えるための従者を乗せた。これらの者たちは、星の国でセティを迎えるための準備に大いに役立つこととなる。
セティの好みなどを知り、より万全な状態で迎えたいというハーデスの意向に沿うことだった。
「メニ候の報告で先方の本気度は知れた。それにはこちらも応えねばならん。約束の期限まであと二月と少し。準備を加速せねばならんな」
王の言葉に皆が頷いた。ウシルスもだった。事、ここまでくると、もう抗うことはできない。断腸の思いでセティのことはあきらめねばならない。無念だが仕方ない。
確かめるためにメニ候を遣わしたが、ウシルスには半ば分かっていた。一国の国王が直接出向いてきたことで、その本気度は知れていた。ただ、最後の確認をしたかったのだ。最後の抗いだったかもしれない。
ケトメ王国に国王トトメスの布告が発せられた。
第二王子セティは、星の国の国王に嫁ぎ、星の国の王妃になると決まった。
これよりセティが嫁ぐ日まで、国を挙げてその準備をし、全ての国民が、嫁いでいくセティを見送るように。
国王の布告に国民は驚いた。
星の国とはあの星か?! セティ様は星に行かれるのか?!
驚きの中に、徐々に情報が伝わってくる。
星の国の国王が自らやってきて、是非にもと求婚したと!
夢のような話だ! 夜空に輝く星へ嫁ぐ。しかも王妃様になるのだ。まるでおとぎ話のようだと、国民は皆興奮した。
そして、さすがはセティ様だと称賛した。
我が国の至宝セティ様!
セティ様が最高に輝くように、最高の装いで送り出さねばならない。そして花嫁道具は最高の物を準備せねばならない。
国を挙げて喜びと興奮の中で、セティの嫁ぎの準備は進められて行く。
喜びと興奮の中心は無論王宮である。
しかし、その中心であるセティは物静かに過ごしている。
間違いなく主役なはずなのに、自身は興奮とは程遠い心境でいる。決して冷めているわけではない。心穏やかなのだった。
セティは、あと二月と少しでハーデスと会えるという思いよりも、ここにいるのもあとわずかとの思いの方が勝っていた。
自分をここまで優しく育んでくれた家族、そして祖国。
改めて自分はケトメ王国の王子として生まれた幸せを感じている。
セティの結婚を知った全ての者が喜んでくれる。ありがたい……感謝の思いで一杯になる。
短い間ではあるが、ケトメ王国の王子として悔いなきように過ごさねばと思うのだ。
それがセティにできる感謝の表し方なのだ。
「ヘケト、本当にヘケトも星の国へ行くの?」
「もちろんでございます」
ヘケトも、そしてアニスもセティと共に星の国へ行くことになっている。本人たちが強く希望したのだ。
「でも、星の国は遠いよ。ケトメ王国を離れて大丈夫なの。生まれてからずーっと暮らした国だから淋しくないかなって」
「確かにそうでございますが、ヘケトはセティ様が生まれてから片時も離れずお仕えしてきました。わたくしにとってはセティ様とお別れするほうがはるかに辛いのです。半身をもぎ取られるような辛さです。ですから、お供させてくださいませ」
母の言葉にアニスも頷きながら続いた。
「セティ様、わたしもですよ。ずっと以前から、セティ様が嫁ぐ時も必ずお供すると決めていましたから」
「そうか、ヘケト、そしてアニスもありがとう。嬉しいよ。二人が一緒に行ってくれるから凄く心強い。ただ、ここで暮らすのもあと僅かだと思うと、淋しく思うのも事実なんだ」
二人にだからこそ言える、今の本音ではある。
「そうでございますね。王子として幸せに過ごしてこられたからこその思いではありますね。そして……嫁ぐ前はだれしも思う事なのかもしれません」
三人の間に静かな風が流れる。温暖なケトメの風だ。この風を感じられるのもあと僅か……。
「父上母上、そして姉上兄上にそれぞれ感謝の思いを伝えたい。お時間とって頂けるだろうか?」
何よりも一番、自分を愛し育んでくれた家族に感謝の気持ちを伝えたい。子として、弟として。そして、星の国へ行きたい。
「それは良いお考えでございますね。お時間頂けるように侍従頭のクヌム殿からお願いしていただきましょう」
セティの意向は直ぐに、クヌムから伝えられた。
両親や姉兄もそれぞれセティと二人だけで時を過ごしたい。直に伝えたいことがあると思っていたので、直ぐに時間の調整が行われた。
家族にとっても、嫁いでいくセティと最後に過ごす時。貴重な時間になるだろう。
最初に姉のアティス。続いて、兄のウシルス。そして母の王妃。最後に父国王と、それぞれ一晩を過ごすことに決まった。
そしてハーデス来訪の前日は、家族五人で最後の一日を過ごすとも決まった。
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