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第三章 なぜか生き返りました
19.デートは新たな一歩への始まり
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さて、非常にまずいことになってしまった。
決して私は悪くない。でも、王城の秘薬を使って蘇ったのは事実だ。
殺されて、燃やされて、灰になった。この国では、確実に死んだことになっている。そのマーガレット・ファーブリックが生きていると知られたら……。
なぜ、どうしてと追及され、今回の大犯罪が公になってしまう。
一族まとめて死刑は免れない。関係のないファーブリック侯爵家まで含めてだ。
衆目に晒されながら、王都の広場で縛り首。石を投げられ、罵声を浴びせられるだろう。
せっかく女神さまの元から帰ってきたのに、すぐに「ただいま」だなんて言えない。
私さえ見つからなければ、エンヴィが犯人だという証拠もない。
しばらくは隠れ潜む生活を送ることになるだろう。
「あっ、そうそう。さっきマーガレットが家事をしてくれるって言っていたけど、その必要はないんだ」
「どういうこと? メイドを雇うお金なんてないでしょう?」
「いや、違うんだ。家事はするんだけど、この家もそろそろ無くなっちゃうからさ。アハハハ!」
「……はい?」
……最悪だ。完璧に終わった。
この頭がおかしい人はいったい何を言っているのだろうか。
蘇りの秘薬を盗んだ関係者を探すとなれば、家を失った貴族なんて真っ先に疑われてしまう。
まったくこの人は。口を開くたび、気を失ってしまいそうになるほど厄介な情報が飛び出してくる。
もう何も知りたくない。これ以上喋らないで欲しい。
でも、それはそれで危険なんだろうな。
さっさと全部吐き出させて、なるべく早いうちに対策を練らないと。
「まあまあ、いいじゃないか。僕ら二人で暮らすのに、大きな家は邪魔だろう? いやー、マーガレットとの新生活、楽しみだなぁ」
「はいはい。それで、引き渡しはいつ? 他に何か隠し事はない?」
「今日だよ。君に秘密なんてあるはずないじゃないか」
「……はぁ」
さすがに頭が痛くなってきた。
ため息を吐きながら、ひたいを押さえる。
おそらく、嘘は言っていない。
この人は楽観的すぎて、行き当たりばったりでなんとかしようとしているのだと思う。
問いただしていないだけで、まだまだ未知の爆弾を抱えている可能性はある。
「今日は僕らが再開した記念日だ。デートでもしようよ!」
「そうね、行きましょう! ……とは、ならなくない? 問題は山積みだし、私が生きてるってバレたらどうするのよ」
「いまの君を見て、マーガレットだと気づく人はいないと思うよ。なんせ僕らが住むのは平民街だ。貴族に会うこともないだろうしね。さあ、新たな世界へ旅立とう!」
エンヴィは私の手を取り、走り出す。
持ち物は、彼が肩から下げた革のカバンのみ。中でカチャカチャと何かがぶつかる音がする。
「ちょ、ちょっと! 他に何か持っていかないの?」
「いいのいいの、全部売っちゃったんだから! その古いドレス一着くらいなら許してくれるでしょ! ハハハ!」
彼を引き止めることはできた。脳が行くな行くなと警鐘を鳴らす。
でも、気づくと一緒に走っていた。
私はいま、絶対に間違ったことをしている。
分かっていながら、彼と一緒に笑っている。
なんだか大冒険に出るような、すごくわくわくした気持ちだ。
乗り場へ寄って馬車に乗り、平民街へ。
木造やレンガ造り、様々な家が立ち並ぶ。中には今にも倒壊してしまいそうなあばら家まで。
道路は馬車が通るには狭く、歩いていくしかない。
はぐれないようにとエンヴィに手を繋がれて、子供のような扱いをされながら進む。
野菜売りの豪快な声、肉串を焼く少女が客を引く。初めて来たこの街は、にぎやかで活気にあふれていた。
「マーガレットはなにか欲しいものある?」
「まずは住む場所が必要だわ。服もそうだし、食料も買わないと。でも、お金ないのよね?」
「ふっふっふ、金はあるのだよマーガレットくん。ハイゼンベルク伯爵家の財産は失ったけど、お祖父様とお祖母様の貯金は別だからね。いやー、引き出さなくてよかった」
「じゃあ遠慮なく」
エンヴィの謎の余裕の正体は、隠し貯金だったみたい。
いくらあるのかは分からないけれど、しばらくは大丈夫だと信じよう。
何か商売を始めるのならと考えていた案はいくつかある。いざとなったらエンヴィに働いてもらえばいい。
さて、通りを行き交う人々を観察してみる。
女性はみんな、ブラウスやシャツの上から、厚い生地のエプロンドレスを着ているみたい。
男性は、シャツにジーンズ姿が多い。
似たような服が五着もあれば十分だろう。
下着に寝巻き、タオルなんかも欲しいところ。
ノブルス家の料理長に作り方を教わったメニューをいくつか覚えている。自信があるわけではないが、やれなくはない。
……あれ、なんだか私たち、まるで夫婦みたいじゃない?
好きだと言われ、一緒に住むことも決まっているし。
いやいや、いまは考えることをやめよう。
まずは家を決める。
大事なのは、治安とあまり人目につかないこと。集合住宅はやめておく。
三軒紹介してもらったうち、平民の中でも金持ちの部類が暮らす地域の空き家を借りることにした。
ちょっと高い気がしたけれど、大丈夫なのだろうか。
「これが僕らの新しい家か。うん、埃っぽいね」
「最初の仕事はお掃除ね。でも、なんだか落ち着く」
一階部分が石、二階が木というしっかりした造り。三角形の屋根が可愛らしい。上が白で下が赤茶色の上品な家だ。
大きなリビングのそばにキッチン、トイレとシャワーまでついて、何不自由なく生活できる。加えて、その他に部屋が四つも。
二人で暮らすには大きすぎるくらい。
床は全て温かみのあるこげ茶色のフローリング。前の持ち主がベッドやテーブルなどの家具をそのままにしていったらしく、この家を選んだ決め手にもなった。
「さて、買い物の続きね」
「何往復かすることになりそう。いってきまーす! って、これが言いたかったんだ!」
「……いってきます」
嬉しそうに家の鍵を閉めるエンヴィ。また私の手を握り、二人並んで歩いていく。
いってきます……か。
照れくさいけど、ほっこりする言葉だ。
決して私は悪くない。でも、王城の秘薬を使って蘇ったのは事実だ。
殺されて、燃やされて、灰になった。この国では、確実に死んだことになっている。そのマーガレット・ファーブリックが生きていると知られたら……。
なぜ、どうしてと追及され、今回の大犯罪が公になってしまう。
一族まとめて死刑は免れない。関係のないファーブリック侯爵家まで含めてだ。
衆目に晒されながら、王都の広場で縛り首。石を投げられ、罵声を浴びせられるだろう。
せっかく女神さまの元から帰ってきたのに、すぐに「ただいま」だなんて言えない。
私さえ見つからなければ、エンヴィが犯人だという証拠もない。
しばらくは隠れ潜む生活を送ることになるだろう。
「あっ、そうそう。さっきマーガレットが家事をしてくれるって言っていたけど、その必要はないんだ」
「どういうこと? メイドを雇うお金なんてないでしょう?」
「いや、違うんだ。家事はするんだけど、この家もそろそろ無くなっちゃうからさ。アハハハ!」
「……はい?」
……最悪だ。完璧に終わった。
この頭がおかしい人はいったい何を言っているのだろうか。
蘇りの秘薬を盗んだ関係者を探すとなれば、家を失った貴族なんて真っ先に疑われてしまう。
まったくこの人は。口を開くたび、気を失ってしまいそうになるほど厄介な情報が飛び出してくる。
もう何も知りたくない。これ以上喋らないで欲しい。
でも、それはそれで危険なんだろうな。
さっさと全部吐き出させて、なるべく早いうちに対策を練らないと。
「まあまあ、いいじゃないか。僕ら二人で暮らすのに、大きな家は邪魔だろう? いやー、マーガレットとの新生活、楽しみだなぁ」
「はいはい。それで、引き渡しはいつ? 他に何か隠し事はない?」
「今日だよ。君に秘密なんてあるはずないじゃないか」
「……はぁ」
さすがに頭が痛くなってきた。
ため息を吐きながら、ひたいを押さえる。
おそらく、嘘は言っていない。
この人は楽観的すぎて、行き当たりばったりでなんとかしようとしているのだと思う。
問いただしていないだけで、まだまだ未知の爆弾を抱えている可能性はある。
「今日は僕らが再開した記念日だ。デートでもしようよ!」
「そうね、行きましょう! ……とは、ならなくない? 問題は山積みだし、私が生きてるってバレたらどうするのよ」
「いまの君を見て、マーガレットだと気づく人はいないと思うよ。なんせ僕らが住むのは平民街だ。貴族に会うこともないだろうしね。さあ、新たな世界へ旅立とう!」
エンヴィは私の手を取り、走り出す。
持ち物は、彼が肩から下げた革のカバンのみ。中でカチャカチャと何かがぶつかる音がする。
「ちょ、ちょっと! 他に何か持っていかないの?」
「いいのいいの、全部売っちゃったんだから! その古いドレス一着くらいなら許してくれるでしょ! ハハハ!」
彼を引き止めることはできた。脳が行くな行くなと警鐘を鳴らす。
でも、気づくと一緒に走っていた。
私はいま、絶対に間違ったことをしている。
分かっていながら、彼と一緒に笑っている。
なんだか大冒険に出るような、すごくわくわくした気持ちだ。
乗り場へ寄って馬車に乗り、平民街へ。
木造やレンガ造り、様々な家が立ち並ぶ。中には今にも倒壊してしまいそうなあばら家まで。
道路は馬車が通るには狭く、歩いていくしかない。
はぐれないようにとエンヴィに手を繋がれて、子供のような扱いをされながら進む。
野菜売りの豪快な声、肉串を焼く少女が客を引く。初めて来たこの街は、にぎやかで活気にあふれていた。
「マーガレットはなにか欲しいものある?」
「まずは住む場所が必要だわ。服もそうだし、食料も買わないと。でも、お金ないのよね?」
「ふっふっふ、金はあるのだよマーガレットくん。ハイゼンベルク伯爵家の財産は失ったけど、お祖父様とお祖母様の貯金は別だからね。いやー、引き出さなくてよかった」
「じゃあ遠慮なく」
エンヴィの謎の余裕の正体は、隠し貯金だったみたい。
いくらあるのかは分からないけれど、しばらくは大丈夫だと信じよう。
何か商売を始めるのならと考えていた案はいくつかある。いざとなったらエンヴィに働いてもらえばいい。
さて、通りを行き交う人々を観察してみる。
女性はみんな、ブラウスやシャツの上から、厚い生地のエプロンドレスを着ているみたい。
男性は、シャツにジーンズ姿が多い。
似たような服が五着もあれば十分だろう。
下着に寝巻き、タオルなんかも欲しいところ。
ノブルス家の料理長に作り方を教わったメニューをいくつか覚えている。自信があるわけではないが、やれなくはない。
……あれ、なんだか私たち、まるで夫婦みたいじゃない?
好きだと言われ、一緒に住むことも決まっているし。
いやいや、いまは考えることをやめよう。
まずは家を決める。
大事なのは、治安とあまり人目につかないこと。集合住宅はやめておく。
三軒紹介してもらったうち、平民の中でも金持ちの部類が暮らす地域の空き家を借りることにした。
ちょっと高い気がしたけれど、大丈夫なのだろうか。
「これが僕らの新しい家か。うん、埃っぽいね」
「最初の仕事はお掃除ね。でも、なんだか落ち着く」
一階部分が石、二階が木というしっかりした造り。三角形の屋根が可愛らしい。上が白で下が赤茶色の上品な家だ。
大きなリビングのそばにキッチン、トイレとシャワーまでついて、何不自由なく生活できる。加えて、その他に部屋が四つも。
二人で暮らすには大きすぎるくらい。
床は全て温かみのあるこげ茶色のフローリング。前の持ち主がベッドやテーブルなどの家具をそのままにしていったらしく、この家を選んだ決め手にもなった。
「さて、買い物の続きね」
「何往復かすることになりそう。いってきまーす! って、これが言いたかったんだ!」
「……いってきます」
嬉しそうに家の鍵を閉めるエンヴィ。また私の手を握り、二人並んで歩いていく。
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