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十話 特別メニュー
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「よーし、魔王様の食の楽しみを広げるために、まずは食材チェックから!」
私はさっそく魔王城の厨房に向かった。
厨房の管理をしているのは、見た目がごついけど意外と気さくなオークのシェフ、グルドさん。
「ほう、人間の嬢ちゃんが料理をするって?」
「いや、私は料理は得意じゃないんですけど、魔王様に“美味しいものを楽しむ”ってことを知ってほしくて!」
「ふむ……まあ、魔王様は昔から食に興味がないお方だからな。何を出しても必要な栄養が取れればそれでいいで済ませちまう」
やっぱりそうなのか。
この世界の料理も知らないし、そもそも人間と魔族が同じものを食べているかどうかさえ分からない。
どんな味付けをしてるんだろう。
「でも、せっかくなら美味しいものを食べてほしいんです! 何か、魔王様にぴったりの食材とかあります?」
「そうだな……魔王様は昔、ドラゴンステーキをよく食べてたが、最近はあまり召し上がらん」
「ドラゴンステーキ!? ドラゴンて、龍ですよね? それってとっても強いモンスターなんじゃ……。そんなすごい食材あるんですか!?」
「おうよ。魔王城には、魔界の珍しい食材がそろってるからな」
「じゃあ、それを美味しく調理して、魔王様に食べてもらいましょう!」
「嬢ちゃん、いい心意気だな! 俺っちも手伝うぜ!」
私とグルドさんの“魔王様のための特別メニュー”開発が始まった。
さて、まずは普段のドラゴンステーキを作ってもらう。
味覚が違うかもしれないけど、私がまずいと思ったものを出すわけにはいかない。
ジュージューと鉄板で肉が焼ける音。香ばしい匂いが漂ってくる。
これは期待できそうだ。こんなに美味しそうなのに、どうして魔王様は食に興味がないのだろう。
「うーし、できたぜ嬢ちゃん。ほら、食べな!」
グルドさんが運んできてくれたそれは、あまりに分厚くて巨大。私の顔ほどもある肉の塊だった。
それに、調理時間が異様に短い。出てくるまであっという間だった。
これじゃあ中まで火が通ってるはずないよね。
でも……これを魔王様が食べてるんだったら、私も食べないわけにはいかない。
「いただきます!」
両手を合わせて、ぺこりとお辞儀。覚悟を決めた。
ナイフとフォークで真ん中からぶった切ると、湯気が出てこない。
外側はしっかり茶色く色付いてはいるけれど、さしが入った高級和牛……の調理前って感じだ。
さらに薄く切って、口の中に放り込む。
うんっ、これはすごい!
「どうだ嬢ちゃん?」
「はい、すごく不味いです!」
甘みのある脂に、旨味の強いドラゴン肉。
冷蔵庫から取り出したばっかりかってくらいに冷たいし、なんの味付けもされてない。
これじゃあ食に興味なんて持つわけないか。
予想が当たってしまった。
「……なんだと? てめぇ、魔王様の客だからって調子に乗りやがって。俺っちの料理にケチつけるたぁどういう了見だ! じゃあ、これ以上のもんをてめぇで作ってみやがれ!」
「私が作っても、たぶんグルドさんより美味しくできると思いますよ。ちょっと厨房を借りますね」
ブヒブヒと鼻を鳴らしながら、グルドさんが怒鳴る。
でも仕方ないじゃない。不味いものは不味いんだから。
「塩とハーブってあります? あと、ニンニク……なんて言っても分からないか」
「全部あるぞ。好きに使え! 塩なんてあんなもんどうするってんだ。しょっぱくて食えたもんじゃねえだろ」
ぶつぶつ言いながらもグルドさんが準備してくれた調味料で、さっそく料理を始めた。
レアに焼くにしても、中まで火が通らないと臭みが出てしまう。むしろ、このお肉は脂が多いから、ミディアムくらいに焼いてやるのがいいだろう。だてに同伴やアフターでいいものを食べていない。
まずは、食べかけのドラゴン肉を二センチくらいの厚さにカット。塩と黒胡椒で下味をつける。外側だけ焼けちゃってるけどご愛敬。
ニンニクを包丁で潰して、油とともに鉄板へ。弱火でじっくり香りを移していく。
「なにやってんだ嬢ちゃん? 肉を焼けよ肉を!」
「はい、そうですね」
横から口出ししてくる豚を軽くあしらいながら、色付いたニンニクを取り出す。
ここで肉を乗せて、火は中火。ローズマリーみたいなハーブと一緒に焼いていく。
五、六……三十秒!
ここで裏返す。
ハーブを肉の上に避難させて、三十秒毎に何度も裏返し裏返し焼き色を付けていく。
よし、こんな感じかな?
さらに盛り付けて完成だ。
「ハーブは食べなくていいですからね?」
「おいおい嬢ちゃん、こりゃ焼きすぎってもんだぜ。生でも食える肉をこんなにしちまってどうすんだよ」
文句を言いながらもグルドさんは大きく口を開け、ステーキを丸ごと放り込んだ。
「あ、アフッ! ブッヒャ~! こりゃうんめぇ~!」
こうして、魔王様に食べてもらう料理が完成した。
私はさっそく魔王城の厨房に向かった。
厨房の管理をしているのは、見た目がごついけど意外と気さくなオークのシェフ、グルドさん。
「ほう、人間の嬢ちゃんが料理をするって?」
「いや、私は料理は得意じゃないんですけど、魔王様に“美味しいものを楽しむ”ってことを知ってほしくて!」
「ふむ……まあ、魔王様は昔から食に興味がないお方だからな。何を出しても必要な栄養が取れればそれでいいで済ませちまう」
やっぱりそうなのか。
この世界の料理も知らないし、そもそも人間と魔族が同じものを食べているかどうかさえ分からない。
どんな味付けをしてるんだろう。
「でも、せっかくなら美味しいものを食べてほしいんです! 何か、魔王様にぴったりの食材とかあります?」
「そうだな……魔王様は昔、ドラゴンステーキをよく食べてたが、最近はあまり召し上がらん」
「ドラゴンステーキ!? ドラゴンて、龍ですよね? それってとっても強いモンスターなんじゃ……。そんなすごい食材あるんですか!?」
「おうよ。魔王城には、魔界の珍しい食材がそろってるからな」
「じゃあ、それを美味しく調理して、魔王様に食べてもらいましょう!」
「嬢ちゃん、いい心意気だな! 俺っちも手伝うぜ!」
私とグルドさんの“魔王様のための特別メニュー”開発が始まった。
さて、まずは普段のドラゴンステーキを作ってもらう。
味覚が違うかもしれないけど、私がまずいと思ったものを出すわけにはいかない。
ジュージューと鉄板で肉が焼ける音。香ばしい匂いが漂ってくる。
これは期待できそうだ。こんなに美味しそうなのに、どうして魔王様は食に興味がないのだろう。
「うーし、できたぜ嬢ちゃん。ほら、食べな!」
グルドさんが運んできてくれたそれは、あまりに分厚くて巨大。私の顔ほどもある肉の塊だった。
それに、調理時間が異様に短い。出てくるまであっという間だった。
これじゃあ中まで火が通ってるはずないよね。
でも……これを魔王様が食べてるんだったら、私も食べないわけにはいかない。
「いただきます!」
両手を合わせて、ぺこりとお辞儀。覚悟を決めた。
ナイフとフォークで真ん中からぶった切ると、湯気が出てこない。
外側はしっかり茶色く色付いてはいるけれど、さしが入った高級和牛……の調理前って感じだ。
さらに薄く切って、口の中に放り込む。
うんっ、これはすごい!
「どうだ嬢ちゃん?」
「はい、すごく不味いです!」
甘みのある脂に、旨味の強いドラゴン肉。
冷蔵庫から取り出したばっかりかってくらいに冷たいし、なんの味付けもされてない。
これじゃあ食に興味なんて持つわけないか。
予想が当たってしまった。
「……なんだと? てめぇ、魔王様の客だからって調子に乗りやがって。俺っちの料理にケチつけるたぁどういう了見だ! じゃあ、これ以上のもんをてめぇで作ってみやがれ!」
「私が作っても、たぶんグルドさんより美味しくできると思いますよ。ちょっと厨房を借りますね」
ブヒブヒと鼻を鳴らしながら、グルドさんが怒鳴る。
でも仕方ないじゃない。不味いものは不味いんだから。
「塩とハーブってあります? あと、ニンニク……なんて言っても分からないか」
「全部あるぞ。好きに使え! 塩なんてあんなもんどうするってんだ。しょっぱくて食えたもんじゃねえだろ」
ぶつぶつ言いながらもグルドさんが準備してくれた調味料で、さっそく料理を始めた。
レアに焼くにしても、中まで火が通らないと臭みが出てしまう。むしろ、このお肉は脂が多いから、ミディアムくらいに焼いてやるのがいいだろう。だてに同伴やアフターでいいものを食べていない。
まずは、食べかけのドラゴン肉を二センチくらいの厚さにカット。塩と黒胡椒で下味をつける。外側だけ焼けちゃってるけどご愛敬。
ニンニクを包丁で潰して、油とともに鉄板へ。弱火でじっくり香りを移していく。
「なにやってんだ嬢ちゃん? 肉を焼けよ肉を!」
「はい、そうですね」
横から口出ししてくる豚を軽くあしらいながら、色付いたニンニクを取り出す。
ここで肉を乗せて、火は中火。ローズマリーみたいなハーブと一緒に焼いていく。
五、六……三十秒!
ここで裏返す。
ハーブを肉の上に避難させて、三十秒毎に何度も裏返し裏返し焼き色を付けていく。
よし、こんな感じかな?
さらに盛り付けて完成だ。
「ハーブは食べなくていいですからね?」
「おいおい嬢ちゃん、こりゃ焼きすぎってもんだぜ。生でも食える肉をこんなにしちまってどうすんだよ」
文句を言いながらもグルドさんは大きく口を開け、ステーキを丸ごと放り込んだ。
「あ、アフッ! ブッヒャ~! こりゃうんめぇ~!」
こうして、魔王様に食べてもらう料理が完成した。
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