キャバ嬢、異世界へ〜死にたくないから魔王様を全力で魅了します!〜

ミィタソ

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十二話 夜のおしゃべり

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「ふぅ、お腹いっぱい!」

 夕食を終えた私は、自分でも驚くほどの達成感を感じていた。
 だって、魔王様がちゃんと美味しいって思ってくれたんだもん!
 完食してくれたし、これって結構すごいことなんじゃない?

「……貴様、満足そうだな」

 食後のワインを飲みながら、ヴァルゼスが私を見てくる。
 彼の顔も心なしか満足そうだ。

「そりゃあ、魔王様がご飯を楽しんでくれたなら嬉しいですよ!」

「私が楽しんでいた、か……」

 ヴァルゼスは静かにグラスを回しながら、ぼんやりと考え込むような表情をしていた。

「魔王様?」

「……いや、些細なことだ」

「うーん、些細なことでも聞きたいなぁ。だって、私は“魔王様をもっと知る”って決めたんですから!」

 ヴァルゼスは一瞬目を細めたが、やれやれといった様子でグラスを置く。

「……私は、長い間、こうして“楽しむ”ということを忘れていたのかもしれない」

「え?」

「食事も、会話も、日常の何もかもが“義務”だった。だが……貴様がここに来てから、妙なことばかり起こる」

「妙なことって?」

「……例えば、食事を“美味しく”食べること。例えば、誰かと無駄話をすること。そして……笑うことか」

 ――えっ。
 今、魔王様、“笑うこと”って言った?

「魔王様、笑うの久しぶりだったんですか?」

「……笑うことに意味があるのか?」

「もちろんあります! 笑うとね、気持ちが明るくなるし、心が温かくなるんですよ!」

 ヴァルゼスはじっと私を見つめ、ふっとため息をついた。

「……貴様は、本当に不思議な人間だ」

「えへへ、よく言われます!」

「自慢げに言うことではない」

 でも、ヴァルゼスの口調はどこか優しくて……。
 キャバ嬢の世界は、誰かを蹴落として伸し上がる殺伐としたもの。表面上はみんな仲良しだけど、裏で何を言われているか分からないし、ゲストを奪われることだってある。
 まだ何も分からないけど、異世界は私にとって優しい。
 こんな生活も悪くないのかも……いや、それはないか。
 いつ死んでもおかしくないしね。
 まあいいか。私のやることは決まってる。
 この調子で、もっともっと仲良くなろう!
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