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二十六話 勇者もまとめておもてなし
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勇者とその軍勢が、魔王城の目の前まで迫っていた。
城の門を挟んで、人間と魔族がにらみ合う。今にも戦争が始まりそうな緊張感。
魔王城が落ちたら、その先にある城下町も村も全部壊滅してしまう。
ここが最初で最後の砦……いや、色々と教えてもらったからこそ分かる。魔王様こそが砦なのだ。
普通、ゲームなんかだと、魔族の国の一番奥に魔王城ってあるじゃない?
でも、この世界は違う。一番人間の国に近いところにある。
余は魔王だからとなんでも自分を犠牲にして、ヴァルゼスが人間の侵攻を食い止めてきたのだ。
鎖を巻き上げる音とともに巨大な門が開く。
深く刻まれた堀の上に架かる橋が見えた。
その先には、武装した人間の軍勢が。農具を持ったおじいさんまでいる。
軍を率いているのが勇者だろう。青い鎧に身を包み、波打つ金髪に青目の爽やかなイケメン。
魔王様はどちらかというとねっとり系の……って、いけない。私ったら、今そんなことを考えてる場合じゃない。
「ついにここまで来たか人間ども! 余が恐怖を……」
魔王様が一歩前に出たところを、マントを掴んで止める。
「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」
私は慌てて前に飛び出した。
「……何だ?」
ヴァルゼスが冷静な視線を向ける。
「魔王様、私に任せてください。キャバ嬢の仕事をお忘れですか? 」
「貴様が行ったところで殺されるだけだ。これ以上、魔族側が血を流すなど黙って見ておれん」
「血なんて誰も見たくありません。流れるのは私のおしゃべりだけで十分です! ほら、私って人間じゃないですか? そう簡単には殺されないと思うんですよね。ちょっと見ててください!」
私は人間軍に向かって走りだす。
魔王様は私を信じてくれたのか、何も言わずに送り出してくれた。
「勇者さん、止まってください! 私は人間です! 魔王軍の事情を知っています! とりあえず話し合いしませんか?」
「僕らは話し合いに来たんじゃない! 勇者として戦いに来たんだ!」
勇者が警戒した目でこちらを見る。
ここで何とかしないと、本当に戦争になる。
「あなたね、魔族のこと何も知らないくせに勝手すぎない? こんなにいい女が一緒に話そうって誘ってあげてるのに……」
分かり合おうともしない勇者につい苛立ってしまった。
そのとき……。
「黙れ魔王の手先! ――ファイアーボール!」
人間軍の一人が会話を遮り、私に向けて炎の弾を放つ。
ゴォと空気を燃やしながら、ソフトボールくらいの火球が飛んでくる。
なるほど、これが魔法ってやつね。初めて見た。
まさか人間に殺されるなんて……。
あっけない最期だなと目を瞑る。
「だから殺されるだけだと言っただろマヌケめ」
肩を抱かれた感触。鼻腔をくすぐる甘い匂い。
目を開けると、魔王様が。右手に私を抱え、左手で空中に出現させた闇の盾でファイアーボールを防いでしまった。
「ダメです魔王様! 絶対殺さないで!」
「まだ貴様は……無駄だというのに……」
私は、必死でお願いした。
魔王様は呆れた表情で肩を落とす。
「ま、魔王が……人間を庇ったぞ?」
人間軍がざわつき始めた。
よし、今がチャンスだ!
「ほら、だから言ったじゃない! 魔王様は優しんだから! 魔王様が本気なら、あなたたち人間なんてあっという間に滅んでるんだからね! だから、話し合いさせてあげようって言ってるの!」
気持ちを込めて叫ぶ。全部本心だ。
勇者はしばらく考え込んでいたが……。
「……いいだろう」
ついに、その口から意外な言葉が出た。
「えっ、本当に!?」
「俺の名は勇者レオン。君の勇気を見て、魔王と話してみたくなった!」
勇者の目はまだ鋭いままだったけど、ひとまず戦闘は回避できた。
私はホッと胸をなでおろし、ヴァルゼスの方を見た。
「魔王様も、それでいいですよね?」
「……ふん。余の城に来たからには、余の流儀に従え」
ヴァルゼスは面倒そうにため息をついたが、話し合いに納得してくれたみたい。
魔王城に勇者を迎え入れることが決まった。
さーて、接待ってやつを見せてやりましょうか。
城の門を挟んで、人間と魔族がにらみ合う。今にも戦争が始まりそうな緊張感。
魔王城が落ちたら、その先にある城下町も村も全部壊滅してしまう。
ここが最初で最後の砦……いや、色々と教えてもらったからこそ分かる。魔王様こそが砦なのだ。
普通、ゲームなんかだと、魔族の国の一番奥に魔王城ってあるじゃない?
でも、この世界は違う。一番人間の国に近いところにある。
余は魔王だからとなんでも自分を犠牲にして、ヴァルゼスが人間の侵攻を食い止めてきたのだ。
鎖を巻き上げる音とともに巨大な門が開く。
深く刻まれた堀の上に架かる橋が見えた。
その先には、武装した人間の軍勢が。農具を持ったおじいさんまでいる。
軍を率いているのが勇者だろう。青い鎧に身を包み、波打つ金髪に青目の爽やかなイケメン。
魔王様はどちらかというとねっとり系の……って、いけない。私ったら、今そんなことを考えてる場合じゃない。
「ついにここまで来たか人間ども! 余が恐怖を……」
魔王様が一歩前に出たところを、マントを掴んで止める。
「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」
私は慌てて前に飛び出した。
「……何だ?」
ヴァルゼスが冷静な視線を向ける。
「魔王様、私に任せてください。キャバ嬢の仕事をお忘れですか? 」
「貴様が行ったところで殺されるだけだ。これ以上、魔族側が血を流すなど黙って見ておれん」
「血なんて誰も見たくありません。流れるのは私のおしゃべりだけで十分です! ほら、私って人間じゃないですか? そう簡単には殺されないと思うんですよね。ちょっと見ててください!」
私は人間軍に向かって走りだす。
魔王様は私を信じてくれたのか、何も言わずに送り出してくれた。
「勇者さん、止まってください! 私は人間です! 魔王軍の事情を知っています! とりあえず話し合いしませんか?」
「僕らは話し合いに来たんじゃない! 勇者として戦いに来たんだ!」
勇者が警戒した目でこちらを見る。
ここで何とかしないと、本当に戦争になる。
「あなたね、魔族のこと何も知らないくせに勝手すぎない? こんなにいい女が一緒に話そうって誘ってあげてるのに……」
分かり合おうともしない勇者につい苛立ってしまった。
そのとき……。
「黙れ魔王の手先! ――ファイアーボール!」
人間軍の一人が会話を遮り、私に向けて炎の弾を放つ。
ゴォと空気を燃やしながら、ソフトボールくらいの火球が飛んでくる。
なるほど、これが魔法ってやつね。初めて見た。
まさか人間に殺されるなんて……。
あっけない最期だなと目を瞑る。
「だから殺されるだけだと言っただろマヌケめ」
肩を抱かれた感触。鼻腔をくすぐる甘い匂い。
目を開けると、魔王様が。右手に私を抱え、左手で空中に出現させた闇の盾でファイアーボールを防いでしまった。
「ダメです魔王様! 絶対殺さないで!」
「まだ貴様は……無駄だというのに……」
私は、必死でお願いした。
魔王様は呆れた表情で肩を落とす。
「ま、魔王が……人間を庇ったぞ?」
人間軍がざわつき始めた。
よし、今がチャンスだ!
「ほら、だから言ったじゃない! 魔王様は優しんだから! 魔王様が本気なら、あなたたち人間なんてあっという間に滅んでるんだからね! だから、話し合いさせてあげようって言ってるの!」
気持ちを込めて叫ぶ。全部本心だ。
勇者はしばらく考え込んでいたが……。
「……いいだろう」
ついに、その口から意外な言葉が出た。
「えっ、本当に!?」
「俺の名は勇者レオン。君の勇気を見て、魔王と話してみたくなった!」
勇者の目はまだ鋭いままだったけど、ひとまず戦闘は回避できた。
私はホッと胸をなでおろし、ヴァルゼスの方を見た。
「魔王様も、それでいいですよね?」
「……ふん。余の城に来たからには、余の流儀に従え」
ヴァルゼスは面倒そうにため息をついたが、話し合いに納得してくれたみたい。
魔王城に勇者を迎え入れることが決まった。
さーて、接待ってやつを見せてやりましょうか。
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