キャバ嬢、異世界へ〜死にたくないから魔王様を全力で魅了します!〜

ミィタソ

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二十八話 勇者、疑問を抱く

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「……俺は、本当に魔王を討つべきなのか?」

 勇者はポツリとこぼす。

 食堂の空気は、さっきまでとはまるで違う。
 勇者とその仲間たちは、明らかに動揺していた。
 
 今なら、もっと話を進められるかもしれない。
 私は勇者の正面に座り直し、できるだけ穏やかに語りかけた。

「勇者さん、魔王様が人間に何をしたか、ちゃんと聞いたことあります?」

「……人間を脅かし、世界を混乱に陥れていると……そう教えられた」

「具体的には?」

「それは……」

 勇者は言葉に詰まる。

「魔族の襲撃が増えたのは事実だ。だけど、それが本当に魔王の命令かどうかは……」

「決めつけてません?」

 私は少しだけ微笑んで、ヴァルゼスを見た。

「魔王様、実際のところはどうなんです?」

 ヴァルゼスは腕を組み、ゆっくりと口を開く。

「……確かに、魔族の一部が人間を襲った事例はある。しかし、それは余の命令ではない」

「なっ……!?」

 勇者が驚きの声を上げる。

「差別という言葉を知っているか? 人間は、理解できないものを虐ようとする。だから、魔族を滅ぼそうとしている。余は魔王である。古より伝わっていることは、人間が魔族を迫害し、我らが対抗している。……それだけだ」

「じゃあ、お前が魔族を止めれば!」

「止める必要があるならば止める。だが、人間側が魔族を襲っているのだろう? 余が魔族の怒りを鎮める必要がどこにある? 止めるのは、貴様や貴様の王がするべきことだ」

 勇者の表情が強張る。

「人間が魔族を狩ることは正義で、魔族が人間を襲うことは悪。それを決めているのは、どちらだ? 逆の立場になって考えたことはあるか? 余は不敗の魔王――ヴァルゼス・ガヌンドラウス。生かされているのはどちらだ? ……答えてみよ。愚かな人間の勇者よ」

「……」

 私には、魔王様が正論を言ってるように感じる。勇者の仲間たちも、口をつぐんでしまった。
 この世界の『当たり前』に、勇者が疑問を持ち始めてる。

「……俺は、ずっと人間のために戦ってきた。でも、それが本当に正しかったのか……?」

 勇者は拳を握りしめ、悔しそうに俯く。

「……もし、俺が魔王を討つことが間違いだったら、俺の『勇者』としての存在意義は……」

「別に、勇者って魔王を倒すだけの存在じゃないんじゃないですか?」

 私はそっと勇者の拳に手を重ねた。

「勇者って、本当はみんなを幸せにするための存在じゃないですか?」

「……!」

「魔王を倒すことじゃなくて、人間と魔族が仲良く暮らせる方法を探すのが、本当の勇者の仕事なんじゃ……?」

 勇者の目が揺れる。

「俺は……俺は……」

 彼は、何かを振り払うように立ち上がる。

「……魔王、俺に真実を教えてくれ」

 そして勇者は、ヴァルゼスをまっすぐに見据えた。

「俺は、もっと知る必要がある」

「……ふん」

 ヴァルゼスは、ゆっくりと頷く。

 私の目の前で、歴史が変わり始めている気がした。
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