キャバ嬢、異世界へ〜死にたくないから魔王様を全力で魅了します!〜

ミィタソ

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三十九話 勇者の交渉

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 勇者たちは村を後にし、人間の国へと帰還した。
 私はヴァルゼスとともに、村の入り口で彼らの背中を見送る。

「勇者、ちゃんと説得できるかな……」

 私がぽつりと呟くと、ヴァルゼスは腕を組んで低く笑った。

「簡単にはいかんだろう。だが、あの男は信念を持っている。王がそれをどう受け止めるか、だな」

「……うん」

***

 人間の王都に戻った勇者一行は、すぐに王城へと案内された。

「おお、勇者よ! よくぞ戻った!」

 王は玉座の上から堂々と迎え入れる。側には貴族たちや軍の上層部が並び、彼らもまた勇者の報告を待っていた。

「魔王はどうなった? ついに討ち取ったのか?」

 王の問いに、勇者は静かに首を横に振った。

「違います。……魔王ヴァルゼスは敵ではありません」

 広間がざわめく。

「何を言うか!」

「魔族が敵でないとは!」

 貴族たちが一斉に騒ぎ出すが、勇者は動じなかった。

「俺は魔族の村で日々を過ごし、彼らと話し、共に宴を囲みました。そして気づいたのです。魔族もまた、家族を持ち、暮らしを営む者たちだと」

 王は静かに勇者を見つめる。

「……ならば、何を望む?」

「和平です」

 勇者の言葉に、再び広間が騒然となる。しかし、王はただ黙って勇者を見つめ続けた。

「人間と魔族の間には確かに歴史的な因縁があります。しかし、今この瞬間にも、多くの者が無意味な戦いで命を落としている。陛下、私はこの戦争を終わらせたい」

 王は玉座から立ち上がった。

「勇者よ、お前は長く我が国を支えてきた。その言葉に嘘はないだろう。……だが、和平を結ぶには相応の証がいる」

「証……」

「魔族が本当に我らと共存できるという確かな証拠だ。そうでなければ、この国の者たちを納得させることはできぬ」

 勇者はしばらく考えたのち、意を決したように言った。

「ならば……魔王をここに呼びます」

 再び広間がどよめく。

「魔王を、王都に!?」

「そんなことをすれば、暴動が起こるぞ!」

 貴族たちの反対の声が飛び交うなか、王は静かに手を挙げ、それを制した。

「よかろう。魔王をこの王都に招け。そして、和平の道を示せ」

 勇者は深く頭を下げた。

「ありがとうございます、陛下」

***

 その頃――

 私はヴァルゼスとともに、村の集会場で彼の側近たちと話し合っていた。

「……つまり、勇者が王を説得できたとしても、我々が王都へ行かねばならん、ということか」

 ヴァルゼスが腕を組みながら言うと、側近の一人が険しい表情で口を開いた。

「危険すぎます。人間の王都に行くということは、命を差し出すも同然」

「でも、これが和平のための大きな一歩になるなら……」

 私が言うと、ヴァルゼスはじっと私を見つめ、ふっと笑った。

「……やはり、お前は変わっているな」

「えっ?」

「普通の人間なら、魔族のためにここまで動こうとはしない」

 ヴァルゼスは椅子から立ち上がると、ゆっくりと歩き出した。

「勇者が俺を招くというなら、それに応じるのも悪くはない」

「魔王様……!」

「だが、そう簡単に話が進むとも思えん。……王都へ行く前に、しっかり準備をしなければな」

 私は力強く頷いた。

(ついに、人間と魔族の和平に向けた最初の一歩を踏み出す時が来た!)

 魔王ヴァルゼスの王都行きが、正式に決まった。
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