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一章 マルジュシエールの姫君

ⅵ 神童、、、フラグ?

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「もうすぐ教師が来ますから、勉強の時に着る服に着替え直しましょう。アメリータ。」
アメリータとリリアーナによって着替えさせられる。
勉強の時に着る服は、普段着ているどちらかと言うとひらひらしている、言い換えれば動きにくい服ではなくだいぶ簡素で動きやすかった。
が、リリアーナにいつも着ていたいと言ったら却下された。
王女にしてもあまり良くない格好らしい。
一階と繋がっている手鏡を見ると、茶色の髪に青の目の男性がやってきていた。
シュゼットが、
「ナタナエル先生が到着なさったようです。アメリータ達も、準備をお願いします」と言っ
ている。
この人が先生のようらしい。
「お早う御座います、ファスモーデュ様。」
「ええ。おはようございます。」
「早速ですが、本日は地理の勉強とします。」
10歳の夏になると、アイントルージェ魔法院に行かなければいけない。
そこでの様々なことにつながるテストが、10歳の春にはある。
成績が悪いと、色々となめられたりするらしい。意外と学歴社会だったりもする。いや、成績社会だろうか。
ついでに、地理と歴史以外にも、数術と論理魔術がこのテストである。
「地理からにしましょう。」
この世界には、ノートというものが存在しない。
紙の束的なのを使うのだ。
だから、ぐちゃぐちゃになってしまう可能性もゼロではない。
、、、まとめる用のクリップとか作れないかな?
わたしは、改めて物に溢れていて全く困らなかった日本に住めたことに感謝した。

地理は、このテストの最難関科目。ただただ国の名前や王都の位置、それぞれの国で盛んな産業、気候を覚えるだけだ。が、各地の産業が特に難しいらしく、一番下の方の男爵級の貴族ではだいぶ低くなっていると言うことも無くは無いらしい。
「今日は、各地の気候についてを覚えます。」
正直どうでもいいだろうと思うが、言ってはいけなさそうだと思うのでわざわざ口に出したりしない。
ナタナエルは、わたしに空欄のあるプリントを渡してきた。
プリントの上部にはテルマジェールの地図が載っていた。
、、、へえ、こんな感じ。
こっちの世界は、北側にヴィルトルードがあって、北東にノルヴァフロット。
西がシュトルリールで、東側がここで、南東がシュヴァーニア。
西隣がセルディールだ。
南側は海だけど、実際はここにグラシェゲードがある。
そして、、、その先には何もなかった。

「ナタナエル先生、グラシェゲード海の南には何があるのですか?」
 「ファスモーデュ様、そこから先には何もありませんよ?昔は国があったらしいですが、今はどうだか分かっていません。」
おかしい。ここにはキュマライエンがあるはずなのに。
「であるならば、何故調べないのですか?分からないものは放って置いても変わりませんよ?」
「それだけの資金が無いからですよ。」
ああ、そうかと思った。
マルジュシエールには海がない。だから、出発するにも港の使用料や船代、乗組員の給料、その他色々がかかる。分からないけれど、途方も無い金額になることは確かだろう。
しかも、考えたくないほどの。
「、、、そうですか」
実際、「ヴァルキューレ・プリンセザ」では、グラシェゲードの戦いはたまたまあっちの人がセルディールに来て、全く言葉が通じず分からなかったとある貴族がその人を殺してしまったから起きたのだ。しかも、その殺されてしまった人はキュマライエンでは「真の聖女」とされている逸材で激怒したキュマライエンが軍隊を差し向けた、ということなのだ。
何も知らなかったことが、大きな戦いになってしまったのだ。
その後は、どこか引っかかるような気持ちで残りの時間勉強した。

次にやってきたのは、数術の先生。
マリオンと言う女性だ。
「お早う御座います、ファスモーデュ様。」
「ええ。おはようございます。」
マリオン「はじめに、前回の復習ということでこちらの問題を解いてくださいませ。」
そうして、小さいプリントを渡された。
そこに書いてあったのは、計算式が五題。
わたしは魔封のペンを取り、一問目に目をやる。
①84÷6=
②36÷18=
③99÷3=
④48÷24=
⑤21÷3=
、、、簡単すぎ!これくらい暗算でできるって!
一応計算機としてそろばんっぽいのがあるけれど、こんなの簡単ですから。
当然、秒で終わらせる。
「終わりました」
「お、終わったのですか?どれどれ、、、」
速さに驚いているようで、ちょっと誇らしい。
が!
「一題間違えています」
、、、泣。

その後、3桁や4桁の割り算をやったが、正直簡単だった。
「、、、これまでより明らかにできるようになっておりますね、、、次回が楽しみです。」
え?期待されてる?
「この歳でここまでできると、だいぶ上出来ですよ。フィルクガローレ様も早かったですが、それを上回る速さです。、、、カルムイェリス様よりも。」
あれ、天才フラグ?
「神童も大人になればただの人」が末路だろうけど。

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