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もう君を絶対に離さない.28
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「私なんかでお役に立てるんなら、何でもやります」
「あ、変なことはさせなから、心配しないでね」
「野崎さんの前で、あそこまでやっちゃったんですから、もういまさらです」
瑠璃子が少し開き直ったように言うと、「それもそうだ」と野崎は笑った。
野崎の笑顔が見れただけで、瑠璃子は今日ここにきたことが間違いじゃなかったと思えた。
その上、二度と顔を会わすことがなくなるかもしれないと思っていたはずが、出演依頼までされてしまって。
こんな夢みたいなことがあってもいいのかと、瑠璃子は来た時とは真逆の浮かれ気分で帰途についた。
瑠璃子が帰った部屋で、野崎はさっきまで瑠璃子がいた場所をぼんやりと眺めていた。
自分でもどうしてこうなったのか分からない。
ただ彼女の話を聞いているうちに、彼女に対して抱いていた印象が変わっていったことは確かだった。
自己中心的で、苦労知らずのお嬢様。
彼女の印象はずっとそんな感じで、唯一共通の趣味である映画を通じてやっと会話が通じるだけ。
普通に出会ったなら、絶対に野崎からは近寄らないタイプの人間だった・・・。
それが、あんなことがあったせいで、彼女はすっかり鎧を脱いで人には晒したくないような内面を見せてくれた。
そして、その内面は思いの他、純粋で、同年代の悩みである自分とは何者だろうということに苦しんでいる、普通の女の子だった。
もし、彼女が鎧をつけたままだったら、もう二度と会うことはないと思っていた。
でも、それが無くなった今、自分と彼女の間を隔てていたものが急になくなって、他人に自信をもって自分とはこういう人間だと言えない、どこにでもいる十九歳の映画好きの仲間として野崎の目に映った。
演者になってもらうことを頼んだのは、少しズルかったけど、友だちならそのくらい頼ってもいいだろう。
”友だち”なんて自然に思えてしまうことが自分でも驚きだけれど、腹を割って話すということはそういう関係が築けたということだと思う。
野崎は、瑠璃子ほどあのことを気にはしていなかったし、こういう展開になったことは素直に嬉しかった。
野崎はさっそく瑠璃子を主演にしたショート作品の脚本を描くためPCに向かうのだった。
「瑠璃子、今日は機嫌いいね。何かいいことあったの?」
瑠璃子を見つけた夏希が声を掛けてきた。
「別に~」
「うそだぁ。だって、最近、瑠璃子ずっと機嫌が悪いっていうか、元気なかったもん」
女友達というのは気が利くと言えば聞こえがいいが、こういう時は面倒だ。
いや、こういう傲慢な考え方のせいで、野崎を失うところだったのだ・・・。
「実は、映画い同好会で少しトラブルがあって。それが解決してホッとしてるところ」
「へ、へぇ・・・」
いつも自分には悩み事なんてないというスタンスの瑠璃子がやけに素直にそんなことを話したので、聞いた夏希の方が反応に困る。
「瑠璃子がそういうこと言うのめずらしいね」
「そ、そう?」
「そうだよ」
「よくわかんないけど・・・。ねぇ、私、課題まだできてない」
「ええー、明日提出だよ?」
夏希は瑠璃子と違って、本気でファッショデザイナーになりたくて大学に入った。
もちろん都会の生活に憧れてというのもあるけれど。
だから、野崎と同じように暇さえあれば作品のことを考えてるし、勉強熱心だ。
「あ、変なことはさせなから、心配しないでね」
「野崎さんの前で、あそこまでやっちゃったんですから、もういまさらです」
瑠璃子が少し開き直ったように言うと、「それもそうだ」と野崎は笑った。
野崎の笑顔が見れただけで、瑠璃子は今日ここにきたことが間違いじゃなかったと思えた。
その上、二度と顔を会わすことがなくなるかもしれないと思っていたはずが、出演依頼までされてしまって。
こんな夢みたいなことがあってもいいのかと、瑠璃子は来た時とは真逆の浮かれ気分で帰途についた。
瑠璃子が帰った部屋で、野崎はさっきまで瑠璃子がいた場所をぼんやりと眺めていた。
自分でもどうしてこうなったのか分からない。
ただ彼女の話を聞いているうちに、彼女に対して抱いていた印象が変わっていったことは確かだった。
自己中心的で、苦労知らずのお嬢様。
彼女の印象はずっとそんな感じで、唯一共通の趣味である映画を通じてやっと会話が通じるだけ。
普通に出会ったなら、絶対に野崎からは近寄らないタイプの人間だった・・・。
それが、あんなことがあったせいで、彼女はすっかり鎧を脱いで人には晒したくないような内面を見せてくれた。
そして、その内面は思いの他、純粋で、同年代の悩みである自分とは何者だろうということに苦しんでいる、普通の女の子だった。
もし、彼女が鎧をつけたままだったら、もう二度と会うことはないと思っていた。
でも、それが無くなった今、自分と彼女の間を隔てていたものが急になくなって、他人に自信をもって自分とはこういう人間だと言えない、どこにでもいる十九歳の映画好きの仲間として野崎の目に映った。
演者になってもらうことを頼んだのは、少しズルかったけど、友だちならそのくらい頼ってもいいだろう。
”友だち”なんて自然に思えてしまうことが自分でも驚きだけれど、腹を割って話すということはそういう関係が築けたということだと思う。
野崎は、瑠璃子ほどあのことを気にはしていなかったし、こういう展開になったことは素直に嬉しかった。
野崎はさっそく瑠璃子を主演にしたショート作品の脚本を描くためPCに向かうのだった。
「瑠璃子、今日は機嫌いいね。何かいいことあったの?」
瑠璃子を見つけた夏希が声を掛けてきた。
「別に~」
「うそだぁ。だって、最近、瑠璃子ずっと機嫌が悪いっていうか、元気なかったもん」
女友達というのは気が利くと言えば聞こえがいいが、こういう時は面倒だ。
いや、こういう傲慢な考え方のせいで、野崎を失うところだったのだ・・・。
「実は、映画い同好会で少しトラブルがあって。それが解決してホッとしてるところ」
「へ、へぇ・・・」
いつも自分には悩み事なんてないというスタンスの瑠璃子がやけに素直にそんなことを話したので、聞いた夏希の方が反応に困る。
「瑠璃子がそういうこと言うのめずらしいね」
「そ、そう?」
「そうだよ」
「よくわかんないけど・・・。ねぇ、私、課題まだできてない」
「ええー、明日提出だよ?」
夏希は瑠璃子と違って、本気でファッショデザイナーになりたくて大学に入った。
もちろん都会の生活に憧れてというのもあるけれど。
だから、野崎と同じように暇さえあれば作品のことを考えてるし、勉強熱心だ。
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