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もう君を絶対に離さない.57
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映像が始まると、守は「おお」と声をあげた。
お客様気分でちょこっとだけ参加した守と違い、野崎と瑠璃子は完全に制作者側の目で見てしまうため、まったくリラックスできない。
そして、回想シーンの瑠璃子と守のキスシーンにさしかかると、守は体を乗り出して見ていたが、瑠璃子と野崎は何とも言えない気まずさに包まれて、さり気なく画面から目を逸らした。
「瑠璃子、俺たちほんとの恋人どうしみたいじゃん」
「う、うるさいな・・・、静かにしなさいよ」
さり気なく肩に手を回そうとする守の手を、瑠璃子は振り払った。
画面では二人の仲睦まじいシーンが、そして目の前ではリアルにいちゃつく二人をみせつけられ、野崎は作品を完成させた喜びにひたる気分になどなれなくなった。
二十分ほどの映像が終わると、「すごくいいじゃん」と守だけがはしゃいでいた。
「あ、ありがとう・・・。二人のおかげだよ」
野崎は表向きはそう答えるしかなった。
しかし、もうどう考えても手遅れなのだが、今ではこの作品を作ったこと自体を後悔していた。
何しろ、これを見るたびに守と瑠璃子が益々本当の恋人同士の様に見えてしまう。
そんなもの見たいはずがない・・・。
何の考えもなく、とにかく演者をやってもらえるならという浅はかな考えが生んだ悲劇だ。
自分ではそういう私情を挟んでしまうため冷静に見れないが、おそらく作品としてはいいものに仕上がっているという自信はある。
それが余計に悔しいのだが・・・。
「笹原さんは・・・、どうだったかな・・・?」
一応見てもらった感想を聞くのがこの流れだと思って、野崎は尋ねた。
「あ、う、うん。すごくよかった・・・と思う。ごめん、何か自分が出てる映像って冷静に見れなくて・・・」
「何言ってんの?瑠璃子の表情すごくよかったよ。お前が謙遜するなんてらしくないな」
守は瑠璃子の背中をバンバン叩いた。
「い、いたた・・・、もう!しょうがないでしょ、何もかも初めてだったんだから」
瑠璃子は守の攻撃をかわすと、キッチンに逃げ込んだ。
「野崎君、お昼の用意するから、少し待っててね。あ、守はバイトがあるんでしょ?適当に帰っていいから」
「ああ、今日は生徒の子が模擬試験でカテキョは休みなんだ~。だから、俺も一緒にお昼食べられるよ」
「ええ~、なんでよ~」
よりにもよって今日に限って・・・。
せっかく野崎と二人きりになれるチャンスだったのに。
「いいじゃん、二人より三人の方が楽しいだろ?」
「別に~」
「つめたいな~」
そう言いながらも守は楽しそうに笑っている。
野崎はもう昼ごはんなど食べなくてもいいから、一刻も早くここを立ち去りたかった。
これ以上、守と瑠璃子のイチャイチャを見せつけられるのは耐えられない。
「俺、映画のこととかよく分かんないけど、野崎君、才能あるんじゃない?」
守は軽いノリで野崎に話しかけてきた。
「い、いや・・・、もちろん映画は見るのも作るのも大好きだけど、才能があるかどうかは自分じゃ分からないな・・・。ただ、どんな形でもいいから、映画にかかわる仕事に就きたいとは思ってるけど・・・」
くそ真面目に答えてしまって、余計に自分を追い詰めてしまう。
「へえ・・・、俺は有機化学専攻してるんだ。おおざっぱそうに見られるけど、こう見えて結構細かい作業得意なんだよ」
「そうなんだ・・・、失礼ながら言わせていただくと、意外だね」
野崎はつい正直なコメントをしてしまった。
お客様気分でちょこっとだけ参加した守と違い、野崎と瑠璃子は完全に制作者側の目で見てしまうため、まったくリラックスできない。
そして、回想シーンの瑠璃子と守のキスシーンにさしかかると、守は体を乗り出して見ていたが、瑠璃子と野崎は何とも言えない気まずさに包まれて、さり気なく画面から目を逸らした。
「瑠璃子、俺たちほんとの恋人どうしみたいじゃん」
「う、うるさいな・・・、静かにしなさいよ」
さり気なく肩に手を回そうとする守の手を、瑠璃子は振り払った。
画面では二人の仲睦まじいシーンが、そして目の前ではリアルにいちゃつく二人をみせつけられ、野崎は作品を完成させた喜びにひたる気分になどなれなくなった。
二十分ほどの映像が終わると、「すごくいいじゃん」と守だけがはしゃいでいた。
「あ、ありがとう・・・。二人のおかげだよ」
野崎は表向きはそう答えるしかなった。
しかし、もうどう考えても手遅れなのだが、今ではこの作品を作ったこと自体を後悔していた。
何しろ、これを見るたびに守と瑠璃子が益々本当の恋人同士の様に見えてしまう。
そんなもの見たいはずがない・・・。
何の考えもなく、とにかく演者をやってもらえるならという浅はかな考えが生んだ悲劇だ。
自分ではそういう私情を挟んでしまうため冷静に見れないが、おそらく作品としてはいいものに仕上がっているという自信はある。
それが余計に悔しいのだが・・・。
「笹原さんは・・・、どうだったかな・・・?」
一応見てもらった感想を聞くのがこの流れだと思って、野崎は尋ねた。
「あ、う、うん。すごくよかった・・・と思う。ごめん、何か自分が出てる映像って冷静に見れなくて・・・」
「何言ってんの?瑠璃子の表情すごくよかったよ。お前が謙遜するなんてらしくないな」
守は瑠璃子の背中をバンバン叩いた。
「い、いたた・・・、もう!しょうがないでしょ、何もかも初めてだったんだから」
瑠璃子は守の攻撃をかわすと、キッチンに逃げ込んだ。
「野崎君、お昼の用意するから、少し待っててね。あ、守はバイトがあるんでしょ?適当に帰っていいから」
「ああ、今日は生徒の子が模擬試験でカテキョは休みなんだ~。だから、俺も一緒にお昼食べられるよ」
「ええ~、なんでよ~」
よりにもよって今日に限って・・・。
せっかく野崎と二人きりになれるチャンスだったのに。
「いいじゃん、二人より三人の方が楽しいだろ?」
「別に~」
「つめたいな~」
そう言いながらも守は楽しそうに笑っている。
野崎はもう昼ごはんなど食べなくてもいいから、一刻も早くここを立ち去りたかった。
これ以上、守と瑠璃子のイチャイチャを見せつけられるのは耐えられない。
「俺、映画のこととかよく分かんないけど、野崎君、才能あるんじゃない?」
守は軽いノリで野崎に話しかけてきた。
「い、いや・・・、もちろん映画は見るのも作るのも大好きだけど、才能があるかどうかは自分じゃ分からないな・・・。ただ、どんな形でもいいから、映画にかかわる仕事に就きたいとは思ってるけど・・・」
くそ真面目に答えてしまって、余計に自分を追い詰めてしまう。
「へえ・・・、俺は有機化学専攻してるんだ。おおざっぱそうに見られるけど、こう見えて結構細かい作業得意なんだよ」
「そうなんだ・・・、失礼ながら言わせていただくと、意外だね」
野崎はつい正直なコメントをしてしまった。
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