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旦那様、私をそんな目で見ないでください!08
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そんな幸せな朝の時間をすごした響介だが、彼女と一緒に暮らすということで想像される様々な問題点について、どうすればいいのかということは何ひとつクリアになっていない。
もちろん雛のために一緒に住むことは大前提だ。
だが、お互い独身の大人の男と女であるということは事実なのだ。間違いがないように細心の注意を払って生活しなければならない。
響介は家が気持ちの休まる場でなくなることは覚悟しなければならなかった。
まあ、それも全て雛のためだ。ここは、ひとつ腹をくくるしかない。
そして、ことある毎に、凛太朗がチェックを入れてくるというストレスも乗り越えていかなければならないだろう。やはり、響介は少しだけ気が重くなる。
「おっはよー、響介。あれっ、目の下にクマが出来てるぞ。どうした、どうした。規則正しい生活がモットーのお前が。何があったんだ?あ~、さては例の家政婦ともうイイことしちゃったとか?」
ブッ!響介はすすっていたコーヒーを噴き出した。
「なんだよ、図星か?お前も普通の男だったか~」
凛太朗はニヤニヤしながら響介の反応を伺っている。
「バカッ、違う、そんな訳ないだろう!」
響介はハンカチで口元を拭きながら答える。
「無理しなくてもいい。俺とお前の仲じゃないか。な、隠さないで全部吐いちまえ」
「何も隠してないし、吐くこともない!」
「可愛くないね~。お前、俺に隠し事とかできると思ってるの?」
「う、うるさい。とにかく何でもない。お前と違って俺は家でも仕事をするんだ。だから少し疲れただけだ」
「ふうん、やけに必死だな。まあ、俺に何か隠してたってバレるのは時間の問題だから、別にいいんだけど」
凛太朗は余裕の表情だ。情けないことに、こんな男でも響介にとっては一番の親友ということになる。しかも、雛がなついている少ない人物のうちの一人だ。今でも月に一回は雛の遊び相手として家を訪れる間柄だ。間野家の事情に一番詳しいのは常にこの男であることは間違いない。
くそっ、昨日のことは忘れるんだ。俺が忘れさえすればそれで終わりだ。
静音さんに対しては何も無かった様に振る舞えば…。しかし、それが一番難しいのだ。
確かにあの時あやまったけれど、それからそのことについてお互い触れていない。
響介は魚の小骨が喉に刺さった様な不快感を常に感じていた。だからと言ってもう一度話を蒸し返すのもどうかと思うし。
ああ、もう、何でこんなことに?住み込みをOKしなければよかったんだろうけど、断れば彼女は住み込みOKの仕事を探してうちの家政婦を辞めてしまうかもしれなかったんだ。他に選択肢はなかった。でも、これから俺はいったいどうすれば??
「なあ、凛太朗。昼、俺の部屋来れるか?」
完全に袋小路に迷い込んでしまった響介は、自分の頭ではお手上げだと覚悟した。
「もっちろ~ん。いくいく。行きますとも~」
「くそっ、じゃあ、昼にな」
「おっけ~い」
嬉しそうにスキップしながら去っていく悪友の後姿を、響介は憎々し気に眺めた。
もちろん雛のために一緒に住むことは大前提だ。
だが、お互い独身の大人の男と女であるということは事実なのだ。間違いがないように細心の注意を払って生活しなければならない。
響介は家が気持ちの休まる場でなくなることは覚悟しなければならなかった。
まあ、それも全て雛のためだ。ここは、ひとつ腹をくくるしかない。
そして、ことある毎に、凛太朗がチェックを入れてくるというストレスも乗り越えていかなければならないだろう。やはり、響介は少しだけ気が重くなる。
「おっはよー、響介。あれっ、目の下にクマが出来てるぞ。どうした、どうした。規則正しい生活がモットーのお前が。何があったんだ?あ~、さては例の家政婦ともうイイことしちゃったとか?」
ブッ!響介はすすっていたコーヒーを噴き出した。
「なんだよ、図星か?お前も普通の男だったか~」
凛太朗はニヤニヤしながら響介の反応を伺っている。
「バカッ、違う、そんな訳ないだろう!」
響介はハンカチで口元を拭きながら答える。
「無理しなくてもいい。俺とお前の仲じゃないか。な、隠さないで全部吐いちまえ」
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「可愛くないね~。お前、俺に隠し事とかできると思ってるの?」
「う、うるさい。とにかく何でもない。お前と違って俺は家でも仕事をするんだ。だから少し疲れただけだ」
「ふうん、やけに必死だな。まあ、俺に何か隠してたってバレるのは時間の問題だから、別にいいんだけど」
凛太朗は余裕の表情だ。情けないことに、こんな男でも響介にとっては一番の親友ということになる。しかも、雛がなついている少ない人物のうちの一人だ。今でも月に一回は雛の遊び相手として家を訪れる間柄だ。間野家の事情に一番詳しいのは常にこの男であることは間違いない。
くそっ、昨日のことは忘れるんだ。俺が忘れさえすればそれで終わりだ。
静音さんに対しては何も無かった様に振る舞えば…。しかし、それが一番難しいのだ。
確かにあの時あやまったけれど、それからそのことについてお互い触れていない。
響介は魚の小骨が喉に刺さった様な不快感を常に感じていた。だからと言ってもう一度話を蒸し返すのもどうかと思うし。
ああ、もう、何でこんなことに?住み込みをOKしなければよかったんだろうけど、断れば彼女は住み込みOKの仕事を探してうちの家政婦を辞めてしまうかもしれなかったんだ。他に選択肢はなかった。でも、これから俺はいったいどうすれば??
「なあ、凛太朗。昼、俺の部屋来れるか?」
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「もっちろ~ん。いくいく。行きますとも~」
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