旦那様、私をそんな目で見ないでください!

星野しずく

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旦那様、私をそんな目で見ないでください!24

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 いつも通り大学の自販機コーナーに行くと、今日は凛太朗が先に来ていた。

「おはよう。その顔だとうまくいったみたいだな」

 凛太朗は軽薄人間だが、人間観察には長けている。

「まあな。たすかったよ、ありがとう」

「おお、やけに素直だな。これは面白い話がたっぷり聞けそうだ」

 ニヤニヤする凛太朗の顔を見ていると、感謝の気持ちが薄れていく。

「別に面白い話なんかない」

「またまた~。お前は分かりやすいんだから、強がるなよ」

「とにかくここじゃ何だから、昼俺の部屋に来てくれよ」

「おっけ~い。素直な響介大好きだぜ」

「気持ち悪いことを言うんじゃない」

 響介をからかってその反応を見て楽しむという凛太朗の子供じみた悪趣味につきあうのは疲れる。

 響介は缶コーヒーを飲み干すと教室へと向かった。

「お~い、俺」

 ノックとともに凛太朗の声が聞こえた。

「開いてる」

 響介が答えると、満面の笑みをたたえた凛太朗が部屋に入ってきた。

「お、お前、手作り弁当じゃないか。いきなり見せつけてくれるね」

 たしかに、静音が作ってくれた弁当だが、家政婦なのだから特別な意味はない、はず。

「ばか、そんなんじゃない」

 響介はこういうからかいにはどうも慣れない。

「で、どうなったんだよ。早く聞かせろよ」

 凛太朗は学内のコンビニで買ったらしい弁当を広げながら尋ねる。

「静音さんは実家にいたよ。それで、うちに戻ってもらった」

 できるだけ簡単に話を終わらせたい。余計なことを聞かれたくないから。

「どうやって説得したんだよ。その前に、なんで彼女は実家に帰ったんだ。まず、そこからだな」

 そんな話、昼休みの様な短い時間じゃとても足りない。

「詳しいことは長くなるからまた別の機会に話す。今日はとりあえずお前のおかげで静音さんが家に帰ってきたことの礼を言いたかった」

「うおっ、珍しい。お前が俺に礼なんて。でも、改まってそう言われると何か気持ち悪いな」

「気持ち悪いって、失礼だな。人が素直に感謝してるのに」

「それじゃあ、からかい甲斐がないじゃないか」

「俺はお前のおもちゃじゃない」

「まあまあ、そうムキになるなよ、うまくいったんだから」

 いつもこうやってうまく丸め込まれてしまうのが悔しい。

「今日は俺もお前も昼から授業があるし、夕方には雛が林間学校から帰ってくる。週末に時間とれるか?」

「う~ん、日曜は美里ちゃんとデートの約束してるから、土曜ならいいぞ」

「わかった。じゃあ、土曜にお前んちに行くよ」

「なに、やっぱ響介んちじゃ話せないようなきわどい話なわけ?」

「会った時にちゃんと話すから、もう飯食わしてくれ。時間がない」

「お、おれもヤバい」

 二人はあわてて弁当の残りをかき込む。

「じゃあな、響介」

「ああ、またな」
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