ヤンチャな御曹司の恋愛事情

星野しずく

文字の大きさ
8 / 106

御曹司のやんごとなき恋愛事情.08

しおりを挟む
 一方的に上司風を吹かせても、ピシャリと叱られることもしばしばだ。

 まだまだ優子からしてみれば、一人前には程遠いのだろう。

 しかし、俊介はそんなことさえ利用してでも、優子のことを抱きたいのだから困ったものだ。

 そして、いざ抱いてしまえば、優子の反応はその言葉とは裏腹で感じまくっているのだから始末が悪い。



「まったく、ここはオフィスなんですよ。こんな・・・ぬ、濡れてしまって・・・、一体どうしてくれるんです?」

 優子は結局最後は完全に受け入れてしまうものの、やはり不本意のようだ。

 それでも、感じまくった手前、その顔は少し気まずそうでもある。



「じゃあ、今度からは俺の部屋でしようよ」

「・・・まったく、呆れてものが言えません」

「何でだよ。その方がシャワーもあるから清潔だぜ」

「そういうことを言ってるんじゃありません!」

 優子はピシャリと言い放つと、部屋から出て行ってしまった。



 俊介が大学を出て社会人になってからというもの、こんなことを繰り返していた。

 俊介の方はビジネスの駒にされることからは逃れられないという無言の圧は勿論感じている。

 しかし、未だに何とかして優子と結ばれる方法はないかとか、愛人にするというような非現実的なことを本気で考えたりしている。



 一方の優子はもう少し現実的だった。

 そして、そのための準備を俊介に隠れて始めていた。
 


「優子の方から誘ってくれるなんて感激だな」

「そんなに驚くこと?」

 平日の七時過ぎ、優子と伊波はレストランで夕食を楽しんでいた。

「だって、俺たちつきあってる時だって優子から誘ってくれたことなんてなかったじゃないか」

 伊波はからかうように言った。

「そんなことよく覚えてるわね」

 優子は呆れたように言った。

「あ、誤魔化した」

「そう言う訳じゃないけど・・・。もう、女々しいこと言わないでよね」

「はいはい。俺が一方的に惚れてたんだから、仕方ないよな」

「そんな・・・」



 否定してはみるものの、実際そのとおりだったのだから仕方がない。

 伊波と優子は商社の同期だった。

 優子が俊介の父行成にヘッドハンティングされ、その後伊波は海外に転勤になり、二人の関係は自然消滅した。

 しかし、言ってみればそれを乗り越えるだけの関係が築けていなかったとも言える。



 その二人がこうして十年の時を経て楽しくテーブルを囲むことなど、当時からすれば全く想像できなかったことだ。

 しかも、さっき伊波が言った通り、当時の二人の関係は圧倒的に伊波が優子に惚れているというものだった。

 告白したのも伊波、デートに誘うのも、旅行に誘うのも、何から何まで伊波が優子を誘うというのが二人の中での普通だった。

 たとえ優子が気まぐれで自分から誘いたいと思ったとしても、その前に伊波が誘うから、結局優子の出る幕はなくなるというパターンだ。



 そんな状況だったということは、当然伊波は優子と別れるつもりなどなかったのだが、さすがに海外に飛ばされては手の出しようがなくなった。

 それに、優子の教育係という仕事は不規則だったため、最初の頃こそ必死で連絡を試みた伊波も、時差と距離に阻まれ、泣く泣く諦めたという過去があるのだ。

 そんな伊波だから、こうして優子と再会し、優子がまだ結婚していないと知った時は飛び上がる程嬉しかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...