ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.03

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 咲那は桔平の家の合鍵を持っている。

 一階は駐車場兼アトリエで、二階が住居だ。

 外側についている金属製の階段を上り玄関のカギを開けた。

 奥の部屋から明かりが漏れている。



「桔平~」

 咲那の呼びかけに応えはない。



 寝てるのかな…。

 時刻は夜八時。

 就寝するにはまだ早い。

 寝ているとしたらうたた寝だろう。



 リビングに通じる扉を開けると、案の定三人掛けのソファで桔平は眠っていた。

 スヤスヤと気持ちよさそうに眠るその横顔にうっかり見とれてしまう。

 桔平、やっぱりかっこいい…。



 普段は恥ずかしくてじっと見つめることができない桔平をこうして間近で見ると、それだけで胸が高鳴る。

 だけどいつまでもこうして眺めているわけにもいかない。



「桔平!こんなとこで寝てたら風邪ひくよ」

 五月に入ったばかりのこの時期は、昼間は下手をすれば汗ばむほどの陽気になる。

 だけど朝晩はまだ何も掛けないで寝るには涼しすぎる。



「ん…、あれ?咲那」

 桔平はぼんやりとした頭で、家に帰ったはずの咲那の姿を不思議そうに見つめた。



「合鍵で入ってきちゃった」

 咲那はおどけて見せた。

「そういうこと聞いてんじゃないだろう」

 桔平はなぜか少し不機嫌になる。

「だって、うち今日も誰もいないんだもん」

「そんなのいつものことだろうが」

 桔平は咲那の家の事情はもちろん詳しく知っている。



「…ちょっと、寂しくなった」

「嘘つけ」

 桔平は咲那の言葉を全く信じていないようだ。

「何かあったのか」

 桔平はのっそりと起き上がると煙草に火をつけた。

「ううん…」

「俺んとこ来たってしょうがないだろうが。もう帰れよ」

 桔平はいつまでも子どもの世話をするのはご免だとばかりに冷たく言い放つ。



 どうせ追い返されるだろうことは分かっていた。

 桔平は咲那に裸婦のモデルをたのんでいるけれど、咲那のことをいつまでも子供扱いする。

 小さい頃から見ているとそうなってしまうのだろうか。

 咲那は胸も膨らみ全体的に丸みを帯びてきた自分の身体が桔平にとってはまだ子供にしか見えないのかと思うと女性として普通に落ち込む。



「わかったよ、帰ればいいんでしょ、帰れば…」

 咲那は肩を落として部屋から出ていこうとした。

「待て」

 桔平は立ち上がると咲那の腕をつかんだ。

 次の瞬間、咲那の身体は桔平の胸の中にあった。

「えっ…」

 そして咲那は桔平に抱きしめられるようにソファへとなだれ込んだ。
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