ケダモノのように愛して

星野しずく

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ケダモノのように愛して.33

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 確かに父も年齢とともに作風や被写体が変化しているらしい。

 自分の親の仕事にはあまり興味がなくて、これは菊池先生の受け売りだ。



「そうなのかな~」

「なに?モデル続けたかったの?」

「別にそういう訳じゃないけど、あんまり急だったから」

「何なら、今度はファッション関係のモデルやってみない?実は前から声が掛かってたんだけど、今までは桔平君のモデルしてたから断ってたのよ」

 話は意外な方向に向かって大きく舵が切られた。



「ファッションモデル??」

「ファッションモデルじゃないけど、雑誌のモデル」

「え、あのいわゆる読モってやつ?」

「う~ん、そういう呼び方で呼ぶ人もいるけど、色々だわね。まあ、気が向いたらやってみたら」



 まりあは話を切り上げると料理に取り掛かった。

 咲那も手伝い、久しぶりにゆっくりと二人で夕食を食べた。



「ねえ、お母さん、菊池先生とお父さんツイッターのダイレクトメッセージで話してるんだって」

「ふうん」

「でね、菊池先生ったらちゃっかり自分と部員二人を連れて家に来るって約束を取り付けたらしいの」

「あらまあ…」



「ね、私たちは置き去りで勝手に話が進んでるっておかしくない?」

「まあ、お父さんだから仕方ないわね…」

「もう、お母さんはお父さんに甘すぎるよ」

「だって、昔からそうなんだもん。言ったって聞かないんだから。もう諦めたの。元気で生きててくれればそれでいいって」



「はぁ~、ねえお母さん結婚ってそんなものなの?」

「う、うちはきっと特別だと思うけど…、まあ、どの家庭も色々あるものよ」

 まりあは結婚前の娘を失望させるわけにはいかないけれど、あまり夢を見させるのもどうかと思うのだった。



 咲那は部屋に戻るとソファに寝っ転がった。

 雑誌のモデルか…。

 実はまりあには申し訳ないのだけれど、咲那はファッションにもあまり興味がない。

 動きやすさや肌触りは気にするけれど、流行を追ったりする気にはなれない。



 その原因はほぼ間違いなく母まりあのせいである。

 仕方のないことなのだが、母親がファッション関係の仕事をしている以上、たとえ本人が望んでいなくても娘の咲那は小さい頃から最新のファッションを身につけることになる。

 だから自分で服を買うことも未だにほとんどないし、自分に何が似合うのかも正直よく分からない。 

 そんな人間がファッションのモデルをやるのは無理だろうと思うのだけれど…。



 だけど、そんなことより咲那が気になるのは今日の桔平の態度だった。

 一応話の筋道は通っているけれど、なんだか腑に落ちない。



 それでも、今までどおり遊びに来てもいいって言ってくれたんだから、むしろモデルをやってる時みたいに決められた日だけじゃなくて、行きたい時に行っていいってことだよね。

 それならモデルをやる前よりもたくさん会える。

 咲那は俄然元気が出てきた。



 モデルは出来なくなっちゃったけど、桔平に会えるならそれでいい。

 そう思ったら急にウキウキしてきた。

 明日も学校から帰ったら行っちゃおう。

 夕ご飯も作ってあげようかな?

 土日なんてずっと入り浸っちゃおうかな。
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