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初恋がこじれにこじれて困ってます.12
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今日はいよいよマネジャー初日。沙耶はいそいそと出かける準備をし、いつもは歩いていくのだが、休みの日の部活は自転車通学がゆるされているため、自転車にまたがると学校へと急いだ。マネジャーは部員よりも先に行って色々と準備することがある。今さら直と仲良く一緒に行くなんてことは現実的ではないけれど、もし付き合っていたならばそういうのもありなのだ。アホな妄想にふけりながら、自転車をこいでいるとあっという間に学校に着いた。
自転車を置いて部室に行くと中から何か話し声が聞こえたきた。
「駄目だって。今日から沙耶が来るんだから。」
「だから、早くしようって言ってるんだろう。」
「もう、仕方ないな。」
決して分厚くない部室のドアでは、近づけば中の声はまる聞こえだ。どう考えても、いかがわしいことが行われているとしか思えない。中にいるのはきっとくるみと、直…、だろう。沙耶は一瞬隠れようかとも思ったが、どうせ後になって分かるんだったらサッサと知ってしまった方がいい。思い切ってドアをノックする。
「おはようございまーす。」
ガチャとドア開けると中でイチャついていたのは、くるみと直ではなく…、直の友人でもありライバルでもある山口健太君だった。
「えっと、これは…。」
困惑する沙耶に、くるみはペロっと舌を出した。
「何か告られて付き合うことになっちゃった。」
「い、いつー??」
「昨日の帰り。」
部活が始まったの昨日からだよね。早くない?早すぎない?
「お、もうすぐみんな来るぞ。行こう、くるみ。」
「うん。」
混乱する沙耶のことなどおかまいなく、二人はさっさと体育館へ行ってしまった。
(もう「くるみ」なんて呼び捨てにしてるし…。それ以前に、くるみは直のことが 好きだったんじゃないの???)
初っ端から混沌の中にぶち込まれた沙耶は、自分はいったいここに何をしに来たのだろうと思わずにはいられなかった。
「おーい、沙耶。こっちこっち。」
直の声だった。
「はーい。」
(もう、分かんないことはどうでもいいや。とりあえず、直に会えて、直の役にたてるんなら。)
直に一通りマネジャーの仕事の説明を受けた。その間も、くるみは健太君とイチャイチャしている。
「直、あれ、どうなってるの?」
沙耶がくるみたちの方に目くばせをする。
「ああ、何でも健太はこの間応援に来てもらったとき一目惚れだったらしい。付き合えて最高だって、昨日は大騒ぎだったよ。まあ、もう少ししたら落ち着くだろう。そんなことはいいから、さあ、もう練習はじまるぞ。」
「はあい。」
直はみんなと一緒にストレッチを始めた。
くるみと沙耶は倉庫からボールやスコアボードを出してきた。あとはスポーツドリンクやタオルを用意する。みんなの体調管理も大切な仕事だ。ケガなどがないことをチェックする。
ストレッチの後はランニングと筋トレだ。それが終わってダッシュやシュート練習など地道だけどハードな訓練が続く。沙耶たちのゆるゆるテニス部とは大違いだ。直たちは毎日こんな過酷な練習をしていたのかと思うと、同じような顔をして学校に通っていた自分が恥ずかしくなる。
「休憩だぞー。」
コーチの荻原先生の声でみんなが集合する。
沙耶とくるみは急いでみんなにタオルとスポーツドリンクを渡していく。15分ほどの休憩のあと、練習試合が始まった。私とくるみはタオルとドリンクのボトルをかごに入れて、部室横の洗濯機と水飲み場がある場所へと移動した。洗濯機の中にタオルを放り込み、ボトルを手分けして洗う。30人分ともなると大仕事だ。
「くるみ、昨日は大変だったでしょ。」
沙耶は、正直自分だったら音を上げていたと思う。
「うーん、まあ大変は大変だけど、みんなの練習に比べたら大したことないからね。」
ニコッと笑顔で返されてしまった。
「そ、そうだね…。」
そう言われたら返す言葉がない。自堕落な生活をしている自分が恥しい。
「晴れてるから、すぐ乾いてくれて助かるね。」
くるみは、洗い終わったタオルをテキパキと干している。
「そうだね。」
沙耶は、濡れたボトルをかごに入れ、風通しの良い場所に移動させた。
体育館に戻ると練習試合がまだ続いていた。今は学年別のチームで行われていて、ちょうど一年生が2年生と対戦していた。一年生の動きはまだぎこちないけれど、その中で直は飛び抜けていた。
(やっぱ直、カッコイイ。)
沙耶は気を許したら顔面が崩壊してしまいそうで、キュッと顔の筋肉を引き締めた。
くるみはと言えば、特別健太くんを応援するわけでもなく、何やらメモのようなものを取っている。
「くるみ、何してるの?」
「ああ、これ?」
くるみはページごとにメンバーの名前が記されたルーズリーフを抱えていた。
「メンバー毎の特徴みたいなのを書いてるの。こういう記録を付けておくと、それぞれに合った練習メニューが組めるし、メンバーの適性も分かってくるから。」
くるみって何者?
「マ、マネージャーって、そんなこともしないといけないの? 」
沙耶は不安な表情で尋ねる。
「まさかぁ。私が勝手にやってるだけだよ。趣味みたいなもんだよ。」
しゅ、趣味ってレベルじゃないよね。なんだか、私更にいずらいなー。格差が…、激しすぎる。
「コーチ、西村君のことなんですけどー。」
くるみはすでにベテランの風格さえまとっている。
(ううっ、辛い…。)
自転車を置いて部室に行くと中から何か話し声が聞こえたきた。
「駄目だって。今日から沙耶が来るんだから。」
「だから、早くしようって言ってるんだろう。」
「もう、仕方ないな。」
決して分厚くない部室のドアでは、近づけば中の声はまる聞こえだ。どう考えても、いかがわしいことが行われているとしか思えない。中にいるのはきっとくるみと、直…、だろう。沙耶は一瞬隠れようかとも思ったが、どうせ後になって分かるんだったらサッサと知ってしまった方がいい。思い切ってドアをノックする。
「おはようございまーす。」
ガチャとドア開けると中でイチャついていたのは、くるみと直ではなく…、直の友人でもありライバルでもある山口健太君だった。
「えっと、これは…。」
困惑する沙耶に、くるみはペロっと舌を出した。
「何か告られて付き合うことになっちゃった。」
「い、いつー??」
「昨日の帰り。」
部活が始まったの昨日からだよね。早くない?早すぎない?
「お、もうすぐみんな来るぞ。行こう、くるみ。」
「うん。」
混乱する沙耶のことなどおかまいなく、二人はさっさと体育館へ行ってしまった。
(もう「くるみ」なんて呼び捨てにしてるし…。それ以前に、くるみは直のことが 好きだったんじゃないの???)
初っ端から混沌の中にぶち込まれた沙耶は、自分はいったいここに何をしに来たのだろうと思わずにはいられなかった。
「おーい、沙耶。こっちこっち。」
直の声だった。
「はーい。」
(もう、分かんないことはどうでもいいや。とりあえず、直に会えて、直の役にたてるんなら。)
直に一通りマネジャーの仕事の説明を受けた。その間も、くるみは健太君とイチャイチャしている。
「直、あれ、どうなってるの?」
沙耶がくるみたちの方に目くばせをする。
「ああ、何でも健太はこの間応援に来てもらったとき一目惚れだったらしい。付き合えて最高だって、昨日は大騒ぎだったよ。まあ、もう少ししたら落ち着くだろう。そんなことはいいから、さあ、もう練習はじまるぞ。」
「はあい。」
直はみんなと一緒にストレッチを始めた。
くるみと沙耶は倉庫からボールやスコアボードを出してきた。あとはスポーツドリンクやタオルを用意する。みんなの体調管理も大切な仕事だ。ケガなどがないことをチェックする。
ストレッチの後はランニングと筋トレだ。それが終わってダッシュやシュート練習など地道だけどハードな訓練が続く。沙耶たちのゆるゆるテニス部とは大違いだ。直たちは毎日こんな過酷な練習をしていたのかと思うと、同じような顔をして学校に通っていた自分が恥ずかしくなる。
「休憩だぞー。」
コーチの荻原先生の声でみんなが集合する。
沙耶とくるみは急いでみんなにタオルとスポーツドリンクを渡していく。15分ほどの休憩のあと、練習試合が始まった。私とくるみはタオルとドリンクのボトルをかごに入れて、部室横の洗濯機と水飲み場がある場所へと移動した。洗濯機の中にタオルを放り込み、ボトルを手分けして洗う。30人分ともなると大仕事だ。
「くるみ、昨日は大変だったでしょ。」
沙耶は、正直自分だったら音を上げていたと思う。
「うーん、まあ大変は大変だけど、みんなの練習に比べたら大したことないからね。」
ニコッと笑顔で返されてしまった。
「そ、そうだね…。」
そう言われたら返す言葉がない。自堕落な生活をしている自分が恥しい。
「晴れてるから、すぐ乾いてくれて助かるね。」
くるみは、洗い終わったタオルをテキパキと干している。
「そうだね。」
沙耶は、濡れたボトルをかごに入れ、風通しの良い場所に移動させた。
体育館に戻ると練習試合がまだ続いていた。今は学年別のチームで行われていて、ちょうど一年生が2年生と対戦していた。一年生の動きはまだぎこちないけれど、その中で直は飛び抜けていた。
(やっぱ直、カッコイイ。)
沙耶は気を許したら顔面が崩壊してしまいそうで、キュッと顔の筋肉を引き締めた。
くるみはと言えば、特別健太くんを応援するわけでもなく、何やらメモのようなものを取っている。
「くるみ、何してるの?」
「ああ、これ?」
くるみはページごとにメンバーの名前が記されたルーズリーフを抱えていた。
「メンバー毎の特徴みたいなのを書いてるの。こういう記録を付けておくと、それぞれに合った練習メニューが組めるし、メンバーの適性も分かってくるから。」
くるみって何者?
「マ、マネージャーって、そんなこともしないといけないの? 」
沙耶は不安な表情で尋ねる。
「まさかぁ。私が勝手にやってるだけだよ。趣味みたいなもんだよ。」
しゅ、趣味ってレベルじゃないよね。なんだか、私更にいずらいなー。格差が…、激しすぎる。
「コーチ、西村君のことなんですけどー。」
くるみはすでにベテランの風格さえまとっている。
(ううっ、辛い…。)
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