28 / 67
ホストと女医は診察室で.28
しおりを挟む
「慶子さんは開業なさってるんですよね」
「ええ、小さなクリニックですけど」
「いやあ、立派ですよ。男性でも中々独立開業には踏み切る勇気がないのが普通です」
聖夜とは違い会話の内容は至って真面目だ。
「世間知らずなだけですよ。他にこれと言って取柄もないですし」
「いやあ、それだけじゃやっぱり出来ませんよ。これでも経営の勉強は専門ですから、その大変さは分かってますから」
「はあ…」
「すみません、堅い話ばかりしか出来なくて…。実は僕には兄がいるんです。兄は僕と違って社交的でもっと女性を楽しませる話も得意なんですけど、僕はからっきしで」
「そ、そうなんですか」
知ってますとも言えず、慶子は少し顔をひきつらせた。
「慶子さんは皮膚科が専門なんですよね」
「はい。一応美容皮膚科クリニックです」
「だからやっぱり院長として美には気をつかってらっしゃるんですね。写真で拝見して綺麗な方だなとは思ってましたけど、今日実際にお会いしてお肌がすごく綺麗なのでびっくりしました」
「いえ、和希さんこそすごく素敵ですから、おモテになるんじゃないですか?」
こんな褒め合いみたいな会話は気持ち悪い。
腹の探り合いの様な上っ面だけの話なんて面白くもなんともない。
慶子は早くも帰りたくなってきた。
慶子は思っていることが顔に出やすい。
さすがに仕事中は極力気をつけているけれど、プライベートになるとボロが出てしまいがちだ。
「慶子さん、やっぱり僕の話なんてつまらないですよね」
「え、いいえ、そんなことは…」
「いいんです、僕、女性と話してても堅い話ばかりしてしまって、よく相手をしらけさせてしまうんです」
和希はそう言うと悲しそうな表情を浮かべた。
「そ、それは私も一緒ですよ。もうずっと仕事一筋でこの年まで生きてきちゃったもんですから、気の利いた話とか全然できなくて。だから、正直男性とお話しするのは苦手なんです」
「そうだったんですか。よかった…、て言うのは失礼か。もう、本当にダメですね」
和希はそう言うと頭をポリポリと掻いた。
二人の間にやっと笑いが起きた。
「もう少し本音で話していいですか?遅かれ早かれボロがでると思いますから」
慶子は思い切って切り出した。
「いいですよ!僕もその方が助かります」
「よかった。実は、世間話とか本当に苦手で、さっきからもう早く帰ることしか考えてなかったんです。ごめんなさい」
「僕も似たようなもんです。仕事だと違うスイッチが入るんですけど、普段は本当にダメダメです」
「私、本当のこと言うと、今日のお見合い最初からお断りするつもりで来たんです。正直、クリニックを始めてまだ一年も経ってなくて、結婚とか全然考えられないんです。誤解しないでくださいね、和希さんがどうこうって訳じゃないですからね」
慶子はとても受け入れてもらえるとは思えなかったけれど、もうこれ以上茶番を続けることはできなかった。
「慶子さんって本当に嘘がつけないんですね。普通、こういう時ってそう思ってても取りあえず話を合わせて、後日断るもんでしょ?」
そう言うわりには、和希は全く怒っている様子はない。
「ごめんなさい」
だって仕方ないじゃん。
本当にそういうの苦手なんだもん。
「ええ、小さなクリニックですけど」
「いやあ、立派ですよ。男性でも中々独立開業には踏み切る勇気がないのが普通です」
聖夜とは違い会話の内容は至って真面目だ。
「世間知らずなだけですよ。他にこれと言って取柄もないですし」
「いやあ、それだけじゃやっぱり出来ませんよ。これでも経営の勉強は専門ですから、その大変さは分かってますから」
「はあ…」
「すみません、堅い話ばかりしか出来なくて…。実は僕には兄がいるんです。兄は僕と違って社交的でもっと女性を楽しませる話も得意なんですけど、僕はからっきしで」
「そ、そうなんですか」
知ってますとも言えず、慶子は少し顔をひきつらせた。
「慶子さんは皮膚科が専門なんですよね」
「はい。一応美容皮膚科クリニックです」
「だからやっぱり院長として美には気をつかってらっしゃるんですね。写真で拝見して綺麗な方だなとは思ってましたけど、今日実際にお会いしてお肌がすごく綺麗なのでびっくりしました」
「いえ、和希さんこそすごく素敵ですから、おモテになるんじゃないですか?」
こんな褒め合いみたいな会話は気持ち悪い。
腹の探り合いの様な上っ面だけの話なんて面白くもなんともない。
慶子は早くも帰りたくなってきた。
慶子は思っていることが顔に出やすい。
さすがに仕事中は極力気をつけているけれど、プライベートになるとボロが出てしまいがちだ。
「慶子さん、やっぱり僕の話なんてつまらないですよね」
「え、いいえ、そんなことは…」
「いいんです、僕、女性と話してても堅い話ばかりしてしまって、よく相手をしらけさせてしまうんです」
和希はそう言うと悲しそうな表情を浮かべた。
「そ、それは私も一緒ですよ。もうずっと仕事一筋でこの年まで生きてきちゃったもんですから、気の利いた話とか全然できなくて。だから、正直男性とお話しするのは苦手なんです」
「そうだったんですか。よかった…、て言うのは失礼か。もう、本当にダメですね」
和希はそう言うと頭をポリポリと掻いた。
二人の間にやっと笑いが起きた。
「もう少し本音で話していいですか?遅かれ早かれボロがでると思いますから」
慶子は思い切って切り出した。
「いいですよ!僕もその方が助かります」
「よかった。実は、世間話とか本当に苦手で、さっきからもう早く帰ることしか考えてなかったんです。ごめんなさい」
「僕も似たようなもんです。仕事だと違うスイッチが入るんですけど、普段は本当にダメダメです」
「私、本当のこと言うと、今日のお見合い最初からお断りするつもりで来たんです。正直、クリニックを始めてまだ一年も経ってなくて、結婚とか全然考えられないんです。誤解しないでくださいね、和希さんがどうこうって訳じゃないですからね」
慶子はとても受け入れてもらえるとは思えなかったけれど、もうこれ以上茶番を続けることはできなかった。
「慶子さんって本当に嘘がつけないんですね。普通、こういう時ってそう思ってても取りあえず話を合わせて、後日断るもんでしょ?」
そう言うわりには、和希は全く怒っている様子はない。
「ごめんなさい」
だって仕方ないじゃん。
本当にそういうの苦手なんだもん。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる