ホストと女医は診察室で

星野しずく

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ホストと女医は診察室で.30

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 慶子さん面白い人だったな…。

 和希は一人暮らしのマンションに帰るとそんなことを考えていた。



 正直見合いの前は、慶子と同じで最初から親のために行くのだ、それも仕事のうちだと考えていた。

 しかし慶子に会って自分でも驚くくらい自然に話せて、しかも普通に楽しかったのだ。

 あくまで友達としてと慶子が言ってくれたおかげでもあるけれど、女友達というのも和希には初めての経験で、新鮮だった。

 慶子の気持ちなど知るはずもない和希は、慶子とこれから友人として付き合えることを嬉しいと感じていた。



 大学の時も和希の外見に惹かれて近づいてくる女性はいたけれど、実際に交際が始まると、つまらない、一緒にいても楽しくないと言われ、すぐにフラれた。

 男友達も、和希と同じ位真面目な性格の数人と親しくしているだけだ。

 しかも、皆自分から遊びに誘ったりすることはあまりしないため、大学を卒業した途端にパタリと連絡が途絶えた。

 和希から誘えば断ることはないのだろうが、和希もやはり誘うのが苦手で、ラインくらいはするのだが、卒業以来一度も顔を合わせていない。

 そんなこともあり、和希の気持ちはおのずと慶子に傾いていくのだった。



 連絡先も交換したことだし、誘ってみようかな。

 和希はさっき会ったばかりだというのに、さっそくメッセージを送った。

『今度食事でもしましょう。僕は比較的自由がききますから、日にちは慶子さんに合わせます。お返事待ってます』



「えっ…、予定と違うんだけど」

 そんな言葉が口をついて出てしまった。

 まいったな…。

 自分から友達になろうと言った手前断ることもできない。

「ああ、もう、せっかく一つ片付いたと思ったのに、自分から面倒なこと引き寄せてどうすんの」

 慶子は自分のコミュニケーション能力の低さを呪った。



 とりあえず返事をしないと…。

 でも、とても断れないよな~。

『早速お誘いありがとうございます。来週の土曜日の夜なら空いています』

 和希が聖夜の弟でなければ、こんな付き合いもいいなと思えた。

 だけど、和希に会えば必ず聖夜のことを思い出してしまうのかと思うと憂鬱になる。



『来週の土曜日なら僕も空いてます。六時くらいにお宅にお迎えに行きますね』

 和希からはすぐに返事が送られてきた。

 あ~あ、何やってるんだろうわたし…。

 慶子は頭を抱えた。



 和希は慶子との約束を取り付けることができて、早くもソワソワと浮かれた気持ちになっていた。

「土曜日が楽しみだな~」

 などとのんきにつぶやいているとスマホから着信音が聞こえた。

「え、まさか慶子さん!」

 しかしそこには孝輔という文字が表示されている。

 え、兄さんから?
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