ホストと女医は診察室で

星野しずく

文字の大きさ
37 / 67

ホストと女医は診察室で.37

しおりを挟む
 真面目だけど、お酒を飲むと少しおっちょこちょいな面もある。

 そんな風に慶子のことを想ってみても今の自分ではどうすることもできないのに…。

 慶子には和希がお似合いだ。



 だけど、心の奥では小さな火種がくすぶったまま消えていないことも分かっていた。

 ただ、今はそれにも目をつぶってただ見過ごすことしか出来ないことも分かっている。

 来月末には一号店をオープンさせる予定だ。

 慶子のことを考えている暇などないのに、考えないようにすればするほど、彼女の顔がチラついてしかたなかった。



 慶子と和希はお互いの都合を合わせて、月に一回のペースで会うことにしていた。

 慶子はあまり乗り気ではないのだが、和希が積極的に誘ってくるためそういうところに落ち着いたという感じだ。



 慶子はあれからも休みの日には自分磨きと称してエステに通っていた。

 更にエステで紹介されたネイルにもハマり、業務に支障のない程度のものを施してもらっている。

 休みの日にこういう予定を入れるようにしたのは、やはり聖夜のことがあってからだ。

 暇な時間ができるとやっぱり聖夜のことを考えてしまう。

 もう会うこともないと分かっていても、そればかりはどうしようもなかった。

 だから、そんなことを考える時間がないように、そしてどうせなら自分の仕事にプラスになるようにと、エステやネイルに通っているのだ。



 慶子にしてみればそんな理由なのだが、会うたびに綺麗になっていく慶子のことを和希は複雑な思いで見つめていた。

 見合の相手としてはお互いなしと公言してしまった。

 そして友達としてなら付き合えるということでスタートしたのが今の二人の関係だ。

 それなのに、自分ばかりが女性としての慶子にどんどん惹かれてしまっている…。

 友達だから会ってくれている彼女に惹かれているなどと言えるはずもなく、和希は美しくなっていく慶子のことを褒めることすらできなかった。



 兄である孝輔とのその後の関係も気になるが、本人を前にしては直接尋ねることが出来ないでいた。

 慶子が孝輔に惹かれていることを知ってしまったら、自分が平常心でいられる気がしなかったから…。

 数年前に家を出ていってしまった兄だが、慶子と出会ってからはその動向を以前よりも正確に把握しておきたい衝動に駆られた。

 それは弟と兄という関係から来ている部分もあれば、男として慶子にどう思われるかということとも関係している。



 幸いホストクラブやホストたちはSNSで多くの情報を流している。

 SNSで自分の日常を切り売りしてくれているおかげで、最近の動向が手に取る様に分かる。

 ここでもやはり兄はすごいと思わされる羽目になるのだが、孝輔が近々自分の店を出すということを知った。

 慶子は知っているだろうか…。

 もし知っているのであれば慶子はやはり兄に近い存在である可能性が高くなる。



「久しぶり。どう最近は忙しいですか?」

 今日は一ヶ月に一度の食事会の日だ。

 益々美しくなった慶子に、和希は心臓の高鳴りを抑えることができない。

 うっかりすると声が上ずってしまいそうだ。



「ええ、おかげさまで。またスタッフを増やしたの」

「へえ、すごいですね。慶子さんはやり手なんだな」

「そんなわけないじゃない。でもね、何だか自分がエステやネイルに行き始めて、余計に患者さんの気持ちが分かる様になった気がするの」

 慶子はお気に入りのネイルサロンで手入れしてもらった爪を眺めながら言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...