ホストと女医は診察室で

星野しずく

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ホストと女医は診察室で.54

 慶子はクリニックの鍵を開けると聖夜をこの間と同じく第二診察室に招き入れた。



 慶子は仕事の邪魔になるため、髪を後ろで束ねている。

 仕事が終わったばかりで、髪はまだそのままだった。

 綺麗なうなじ…、そそるな…。

 聖夜がそんな不埒なことを考えているとも知らず、慶子は無防備なその姿をさらしていた。



「今日はお一人なんですね」

 慶子はさっそく警戒した態度を見せ始める。

「俺はあっちこっち動き回ってるから、そのついでにってスタッフに頼まれちゃってさ」

 忙しい自分が他の時間を削ってわざわざやってきたことは絶対に気付かれてはならない。



「で、その書類というのは?」

「事業内容の欄なんだけど、こんな感じでいいかな」

「ちょっと見せてください」

 慶子は聖夜から受け取った書類を丁寧にチェックした。



「問題ないと思いますよ」

「そっか、よかった」

 慶子の表情からは、用が済んだのならさっさと帰って欲しいというのがありありと見て取れる。

 しかし、聖夜はあえてそれには気づかないふりをした。



「慶子さん、俺の弟と見合したあと何かあった?」

 聖夜はなるべくサラリと話を切り出した。

「えっ…」



 和希との見合いの話を聖夜とするのはこれが初めてだ。

 しかし、聖夜は和希の実の兄なのだから見合いのことを知っているのは当然だろう…。

 だけど、見合のあとのことを自分に聞いてくるというのはどういうことだろうか?

 もしかしたら和希が全部話してしまったのかもしれない…。

 そうだ…、和希は元々聖夜と違って甘えん坊なところがある。

 その上、この間妊娠していないことを伝えた時の様子はかなりおかしかったと言わざるを得ない。



「和希さんは聖夜さんに全部話したんですか?」

 慶子は真剣な表情で聖夜に尋ねた。

 これは明らかに何かがあったのだと聖夜は確信した。

「ああ…、やっぱり兄弟だからね」

 聖夜は慶子のガードを解くために嘘をついた。



「そうですか…、そうですよね実の兄弟ですもんね…。見た目はそっくりですしね」

 慶子はその見た目のせいで、和希と会っていても聖夜のことが頭をよぎり、随分迷惑したのだ。



「あんな風になってしまったのは和希さんだけが悪いんじゃないんです。聖夜さんの時と同じで、私がお酒を飲みすぎたことがそもそもの原因なんですから…」

 酒を飲みすぎた?それって、まさか…。

 聖夜は自分と慶子が初めて体を重ねた時のことを嫌でも思い出すことになる。

 だけど、全部和希から聞いて知っていると言ってしまった今、そのことで驚く訳にはいかない。



「それにしてもさ、あいつ随分まいってるみたいで、仕事もミスばかりして親父に叱られてるらしいよ」

「そうですか…。和希さんは妊娠してると信じてましたから、私が妊娠していないのを知って随分ショックだったんでしょうね」

 慶子は苦悩の表情を浮かべた。



 に、妊娠!?

 和希のやつがそんな無謀なことをしたのか…?

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