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誰かイケメン達を止めてくれませんか!!.05

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「大丈夫、ねえ、起きられる」

 目を覚ますと、至近距離に祥吾くんの顔がある。

「うわああああああ!!」

 みゆうは飛び起きると壁際まで後ずさった。

「ごめん、驚かせちゃったね。だけど、お風呂に入って君の髪を洗いたいんだ。ダメかな?」

 ダメなはずないですよ。

 そんな勿体ないこと言うはずないじゃないですか。

 だけど、お風呂に入るってことは私も脱ぐんだよね。

 あ~、無理無理。

 こんな完璧ボディの前にさらせる身体は持ち合わせておりません。

「ムリです」

「それは困るんだ。どうしても君の髪を洗いたい。どうしたらいいかな?」

 なぜだか分からないが、昨日のすばるくんといい、突然やってくる彼らは何かしらの使命を与えられているようだ。

「は、裸じゃなかったらいいです。水着を着てもいいなら」

 その気になっている自分がおぞましい。

 この体をさらす恐怖よりも、祥吾くん触れられる欲望の方が勝った結果だ。

「あー、それいいね。じゃあ、そうしよう」

 みゆうは、オシャレな水着など一つも持っていない。

 水着=スクール水着だ。

 タンスの奥から地味なそいつを引っ張り出すとお風呂場へ向かった。

 水着に着替えを終え、脱衣所の外で待っていた祥吾くんを呼んだ。

「おじゃましま~す」

 祥吾くんが普通の一軒家の普通の風呂場にいる。

「じゃ、髪を濡らすね」

 ギャップの激しさが現実との乖離を起こす。

 しかし、祥吾くんがみゆうの髪を濡らしているお湯はとても暖かい。

 シャンプーを泡立てると祥吾くんの手がみゆうの髪にスッと入ってきた。

「ひうっ!」

 美容室で受けるシャンプーは気持ちいい。

 祥吾くんはシャンプーのプロでもなんでもない。

 だけど祥吾くんが触れ、優しく頭皮をマッサージしてくれているという行為はそれをたやすく凌駕した。

 みゆうは毛細血管はもちろん、細い血管の何本かは確実にブチ切れたと自信を持って言える。

 体内のあらゆる場所で小さな爆弾が爆発している。

 今に穴という穴から訳の分からない液体が流れ出てくるような気がする。

 シャワーの暖かさと、祥吾くんが髪をすすいでくれる心地よさに、もういっそこのまま死んでしまってもいいとさえ思ってしまった。
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