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第一章
2.巻き戻ったら籠の鳥状態だったので寝ます
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女神ラーヴァの愛し子は必ず黒髪紅眼を持つ。
そしてこの国でその色を持つ人間は滅多にいない。
エリスティアがそのことを知ったのは第二王子アキムに出会ってからだった。
何故かというと彼女の周りにそのことを知る者が居なかったからだ。
エリスティアの父、フィリス男爵も後者の情報しか知らなかった。
だから彼もエリスティアも悲惨な運命を辿ることになったのかもしれない。
男爵も、そしてエリスティアの出産時に亡くなった彼の妻も見事な金髪の持ち主だった。
◇◇◇
窓の外から聞こえる小鳥の鳴き声。
それを切っ掛けにエリスティアは覚醒した。
男爵家の長女の部屋とは思えない程狭く殺風景な室内。
僅かな懐かしさと、その数倍も億劫な気持ちを抱えて黒髪の聖女は寝台からおりた。
簡素な机の引き出しを開けると小さな手鏡が出てくる。
そこに映った子供はやはり黒髪に赤い瞳だった。
十年前のエリスティアがそこにはいた。
「あーあ……」
寝間着姿で黒髪の少女は溜息を吐く。
エリスティアは生まれてからずっと屋敷内で隠すように育てられていた。
王宮での過酷な暮らしで半ば忘れていたが、戻ってみればうんざりした気持ちになる。
当主である父の意向だ。母はエリスティアを出産直後に亡くなっていた。
両親とは全く似ていない子供だったから、誰にも見せたくなかったのだろう。
なぜなら家の恥になる。
屋敷内にもエリスティアの自由は無かった。
物心ついた時から彼女の世界はこの小さな自室だけ。
たまに足腰が弱らないよう庭を散歩する権利を与えられた。
だがそれも夜だけだった。
更に身に着けるものも家具も全て飾りの無い質素過ぎるもの。
食事も豪華さとは程遠いものだった。
ある意味囚人のようなものだ。
実際父にとってエリスティアは自分の妻を殺した罪人なのだろう。
不義の子という可能性を考えていてもおかしくない。
女神の愛し子の特徴を知らないなら黒髪紅眼の男と妻が浮気したと考える方が自然だろう。
そう考えると、飢えさせないだけまだ温情はあるのかもしれない。
大人の精神を持ったまま若返ったエリスティアはそう考える。
「それに少なくともこき使われて死ぬことは無さそうだし……」
彼女は呟き、再度寝台へと戻った。
王宮で自室に用意された物より何倍も粗末だったが、そもそもあの豪奢なベッドに身を横たえることは何回あっただろう。
王族たちは肥満体が多くそして体に不調を抱えてるものも多かった。
エリスティアの死の原因となったのはセイナ王妃だったが、疲労の蓄積は彼女への奉仕だけが理由ではないのだ。
「痩せ型の体型だったの、アキム様ぐらいだったかしら……」
そう言いながら少女に戻ったエリスティアは睡魔に身を委ねる。
この時代の彼女はほぼ軟禁状態で行動の自由は無かったが、自由時間だけは大量にあった。
王宮で死ぬ程エリスティアが欲しかったものだ。
本当に死んでから与えられるとは。
「することはいっぱいあるけれど……今は気が済むまで、寝ようっと」
過労死した聖女は死に戻って最初に朝寝を堪能することにした。
眠りたい時に眠れるとはなんて幸福なのだろう。
そしてこの国でその色を持つ人間は滅多にいない。
エリスティアがそのことを知ったのは第二王子アキムに出会ってからだった。
何故かというと彼女の周りにそのことを知る者が居なかったからだ。
エリスティアの父、フィリス男爵も後者の情報しか知らなかった。
だから彼もエリスティアも悲惨な運命を辿ることになったのかもしれない。
男爵も、そしてエリスティアの出産時に亡くなった彼の妻も見事な金髪の持ち主だった。
◇◇◇
窓の外から聞こえる小鳥の鳴き声。
それを切っ掛けにエリスティアは覚醒した。
男爵家の長女の部屋とは思えない程狭く殺風景な室内。
僅かな懐かしさと、その数倍も億劫な気持ちを抱えて黒髪の聖女は寝台からおりた。
簡素な机の引き出しを開けると小さな手鏡が出てくる。
そこに映った子供はやはり黒髪に赤い瞳だった。
十年前のエリスティアがそこにはいた。
「あーあ……」
寝間着姿で黒髪の少女は溜息を吐く。
エリスティアは生まれてからずっと屋敷内で隠すように育てられていた。
王宮での過酷な暮らしで半ば忘れていたが、戻ってみればうんざりした気持ちになる。
当主である父の意向だ。母はエリスティアを出産直後に亡くなっていた。
両親とは全く似ていない子供だったから、誰にも見せたくなかったのだろう。
なぜなら家の恥になる。
屋敷内にもエリスティアの自由は無かった。
物心ついた時から彼女の世界はこの小さな自室だけ。
たまに足腰が弱らないよう庭を散歩する権利を与えられた。
だがそれも夜だけだった。
更に身に着けるものも家具も全て飾りの無い質素過ぎるもの。
食事も豪華さとは程遠いものだった。
ある意味囚人のようなものだ。
実際父にとってエリスティアは自分の妻を殺した罪人なのだろう。
不義の子という可能性を考えていてもおかしくない。
女神の愛し子の特徴を知らないなら黒髪紅眼の男と妻が浮気したと考える方が自然だろう。
そう考えると、飢えさせないだけまだ温情はあるのかもしれない。
大人の精神を持ったまま若返ったエリスティアはそう考える。
「それに少なくともこき使われて死ぬことは無さそうだし……」
彼女は呟き、再度寝台へと戻った。
王宮で自室に用意された物より何倍も粗末だったが、そもそもあの豪奢なベッドに身を横たえることは何回あっただろう。
王族たちは肥満体が多くそして体に不調を抱えてるものも多かった。
エリスティアの死の原因となったのはセイナ王妃だったが、疲労の蓄積は彼女への奉仕だけが理由ではないのだ。
「痩せ型の体型だったの、アキム様ぐらいだったかしら……」
そう言いながら少女に戻ったエリスティアは睡魔に身を委ねる。
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本当に死んでから与えられるとは。
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眠りたい時に眠れるとはなんて幸福なのだろう。
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