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三十七話 男装の理由
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アルの今生の姉、ロゼマリア。彼女は入学以来常に学年一位の成績を維持していた才女だった。
しかしそれを許さない存在がいた。アリオス殿下だ。
エミアを威圧した時と同じように女性が自分より上の順位にいるのは許さんとロゼも彼にいちゃもんをつけられた。
そして彼女は男装をした。それだけでなく髪色もアリオス殿下に似せた。当時は髪型もそっくりにしたらしい。
「あの時の馬鹿殿は本当に、髪だけじゃなく顔まで真っ赤にして……最高に笑えたね」
そう心底楽しそうに笑いながらロゼは私に一年前の騒動を話してくれた。ちなみに馬鹿殿とはアリオス殿下のことだ。
エミアは婚約者であるアリオスの我儘に成績を下げることで応じたがロゼは彼になりきることにしたのだそうだ。
「だって本人は学年一位なんて取れそうになかったからね」
ロゼが不在の間は弟のアルが首席だった為その予想は当たっていたことになる。そもそもアリオス殿下は次席という訳でもないらしい。
成績が物凄く悪い訳ではないがお世辞にも上位とは言えないとアルが言っていた。
だからエミアはあそこまで成績を下げる必要があったのかと私は納得し益々殿下に対し情けない気持ちになった。
「だから僕が絡まれたのは姉さんの件での八つ当たりだね」
そう溜息を吐きながらアルはロゼが持参したハーブティーを飲んだ。
私も相伴したがアルのブレンドは違い爽やかで飲みやすい味だった。
アルの言葉に対して、でもと私は思う。
「じゃあアリオス殿下は自分よりも成績のいい生徒全員にそんな馬鹿な脅しをかけたの?」
「それはしなかったようだ。私の件で大恥をかいたからだろうね」
突然髪を染め男装を始めたロゼは教師や生徒からの質問攻めにあった。そして素直に殿下との件を話した。
更に短期間だが『学年一位のアリオス殿下』として振舞ったりもしたらしい。第二王子に対し無礼極まりないが想像すると笑えてくる。
「でもやり過ぎてしまって馬鹿殿火山が噴火しそうになったから体調不良になって領地に戻っていたのさ」
実家が僻地で助かったよ。そう涼し気な顔で言うが凄い度胸だと思う。
ちゃんとタイミングを見極めて逃走に成功しているのが羨ましい。
「そのせいでやっと療養が終わって入学できた僕が苦労したけれどね」
ほぼ最初からあの男に絡まれ続けている。
恨みがましい視線を眼鏡の向こうから放ちながらアルは言った。私は彼の言葉の一部に引っかかり聞き返す。
それに回答したのはアルではなく姉のロゼだった。
「療養?」
「そう、アルバートは昔は病弱でね。入学時期も長患いをしていたから……私と入れ違うように学院に来たのさ」
だから互いに制服姿で顔を合わせるのは今日が初めてなんだよ。そう嬉しそうに真紅の麗人は笑った。
しかしそれを許さない存在がいた。アリオス殿下だ。
エミアを威圧した時と同じように女性が自分より上の順位にいるのは許さんとロゼも彼にいちゃもんをつけられた。
そして彼女は男装をした。それだけでなく髪色もアリオス殿下に似せた。当時は髪型もそっくりにしたらしい。
「あの時の馬鹿殿は本当に、髪だけじゃなく顔まで真っ赤にして……最高に笑えたね」
そう心底楽しそうに笑いながらロゼは私に一年前の騒動を話してくれた。ちなみに馬鹿殿とはアリオス殿下のことだ。
エミアは婚約者であるアリオスの我儘に成績を下げることで応じたがロゼは彼になりきることにしたのだそうだ。
「だって本人は学年一位なんて取れそうになかったからね」
ロゼが不在の間は弟のアルが首席だった為その予想は当たっていたことになる。そもそもアリオス殿下は次席という訳でもないらしい。
成績が物凄く悪い訳ではないがお世辞にも上位とは言えないとアルが言っていた。
だからエミアはあそこまで成績を下げる必要があったのかと私は納得し益々殿下に対し情けない気持ちになった。
「だから僕が絡まれたのは姉さんの件での八つ当たりだね」
そう溜息を吐きながらアルはロゼが持参したハーブティーを飲んだ。
私も相伴したがアルのブレンドは違い爽やかで飲みやすい味だった。
アルの言葉に対して、でもと私は思う。
「じゃあアリオス殿下は自分よりも成績のいい生徒全員にそんな馬鹿な脅しをかけたの?」
「それはしなかったようだ。私の件で大恥をかいたからだろうね」
突然髪を染め男装を始めたロゼは教師や生徒からの質問攻めにあった。そして素直に殿下との件を話した。
更に短期間だが『学年一位のアリオス殿下』として振舞ったりもしたらしい。第二王子に対し無礼極まりないが想像すると笑えてくる。
「でもやり過ぎてしまって馬鹿殿火山が噴火しそうになったから体調不良になって領地に戻っていたのさ」
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