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公爵令息と対等に話すとか普通に無理。
当然俺はそう思い主張したがイオンが前言撤回することは無かった。
中途半端な敬語の使い方が気持ち悪いと言われてはぐうの音も出ない。
何を言うか決まっている分にはそれなりに上手くやれていた筈なのだ。
だから今まで他貴族の家に配達に行って無礼だと咎められることは無かった。
ただイオンについてはイレギュラーばかりで取り繕うのが間に合わない。
だから適当な言葉遣いで良いと言われるのは有難いのかもしれない。
でもプライドのが高くて貴族であることを鼻にかけているイオンが平民の俺にそんなことを許す理由が理解できない。
言葉遣いが気に入らないなら敬語を徹底するよう命じる方が自然だ。
もしくは他の貴族のように俺とは滅多に会話せず使用人を介したやり取りをする。
イオンの場合は他の貴族と全然違う。
向こうから勝手に店に来るし寝室に招き入れるし敬語を使うなと言ってくる。
だからどういう距離感で接すればいいのか全然わからない。
だからそう言った意味でも敬語で一線を引いておきたかったのだが。
「ならお前の敬語が崩れる度に毎回叱責して店に苦情を入れるぞ」
「……陰湿過ぎる」
「いいぞ、その調子で行け」
結局こんなやりとりの結果イオンの要望通りになった。その調子ってどの調子だ。
まあいいか。これからは今日以上に会話することも顔を合わせることも無いだろう。そう俺が自分を納得させていた時だった。
「そうだ。明日から毎日お前がケーキを持ってこい」
「えっ無理」
思わず敬語を忘れて返してしまい口を抑える。
「やっぱりすぐ口調が崩れてる。良かったな、僕が寛大で」
にんまりと笑うイオンにどこがだと言い返したくなった。
正直一旦出直して冷静になってから仕切り直したい気分だ。
多分一度帰ったら面倒臭くなってゴールディング公爵邸に向かわないと思うけれど。
だって店から高級住宅地までそれなりに遠いのだ。しかも公爵邸は敷地が広すぎる。
偶になら良いが毎日とか配達に行きたくない。だから使用人を店に寄越して欲しい。
それに菓子店にだって定休日がある。毎日は無理だ。
「毎日は無理ですよ」
「ですよが余計だ」
「……毎日は無理」
「何故だ」
「休まず働ける人間はいない」
「交代で休めばいいだろう」
「うちは家族経営でケーキを作れるのは父だけなので」
「どうしてもっと人を雇わない?」
心底不思議そうに言われて戸惑う。
人員補充についてはイオンに指摘されるより前に家族で議題にしたことはある。
そしてパティシェ見習いを雇ったこともある。
そいつは他店のスパイだったのでケーキのレシピを盗むとさっさと辞めてしまった。数年前のことだ。
別に隠す必要も無いと思い俺はイオンに理由を話した。
「なんだその卑怯者は! 犯罪にはならないのか!」
「姉が然るべきところへ相談したらしいですけれど何の罪に該当するのか判断が難しいと言われたそうです」
「何だと、だったらそいつの名前と店の名前を教えろ。ゴールディング家が裁きを与えてやる!」
「あっ、もう無いです」
「無い、だと?」
又中途半端な敬語を使ってしまった。
しかしイオンはそれを指摘して来なかった。だったらもう咎められるまでチャンポンで良いかと開き直る。
「その店潰れました。レシピだけ真似しても材料に拘らなかったみたいで」
「……そういうことか」
「結果うちの店からレシピを盗んだ事実だけが拡散されて評判落ちて終わりましたね」
たとえばその店とうちの店の距離が隣町レベルで離れていたり、うちの店が常に満員で売り切れてばかりだったり、その店の方が安価だったりしたら話は違っていたかもしれない。
でも別にそんなことはなかった。
当然俺はそう思い主張したがイオンが前言撤回することは無かった。
中途半端な敬語の使い方が気持ち悪いと言われてはぐうの音も出ない。
何を言うか決まっている分にはそれなりに上手くやれていた筈なのだ。
だから今まで他貴族の家に配達に行って無礼だと咎められることは無かった。
ただイオンについてはイレギュラーばかりで取り繕うのが間に合わない。
だから適当な言葉遣いで良いと言われるのは有難いのかもしれない。
でもプライドのが高くて貴族であることを鼻にかけているイオンが平民の俺にそんなことを許す理由が理解できない。
言葉遣いが気に入らないなら敬語を徹底するよう命じる方が自然だ。
もしくは他の貴族のように俺とは滅多に会話せず使用人を介したやり取りをする。
イオンの場合は他の貴族と全然違う。
向こうから勝手に店に来るし寝室に招き入れるし敬語を使うなと言ってくる。
だからどういう距離感で接すればいいのか全然わからない。
だからそう言った意味でも敬語で一線を引いておきたかったのだが。
「ならお前の敬語が崩れる度に毎回叱責して店に苦情を入れるぞ」
「……陰湿過ぎる」
「いいぞ、その調子で行け」
結局こんなやりとりの結果イオンの要望通りになった。その調子ってどの調子だ。
まあいいか。これからは今日以上に会話することも顔を合わせることも無いだろう。そう俺が自分を納得させていた時だった。
「そうだ。明日から毎日お前がケーキを持ってこい」
「えっ無理」
思わず敬語を忘れて返してしまい口を抑える。
「やっぱりすぐ口調が崩れてる。良かったな、僕が寛大で」
にんまりと笑うイオンにどこがだと言い返したくなった。
正直一旦出直して冷静になってから仕切り直したい気分だ。
多分一度帰ったら面倒臭くなってゴールディング公爵邸に向かわないと思うけれど。
だって店から高級住宅地までそれなりに遠いのだ。しかも公爵邸は敷地が広すぎる。
偶になら良いが毎日とか配達に行きたくない。だから使用人を店に寄越して欲しい。
それに菓子店にだって定休日がある。毎日は無理だ。
「毎日は無理ですよ」
「ですよが余計だ」
「……毎日は無理」
「何故だ」
「休まず働ける人間はいない」
「交代で休めばいいだろう」
「うちは家族経営でケーキを作れるのは父だけなので」
「どうしてもっと人を雇わない?」
心底不思議そうに言われて戸惑う。
人員補充についてはイオンに指摘されるより前に家族で議題にしたことはある。
そしてパティシェ見習いを雇ったこともある。
そいつは他店のスパイだったのでケーキのレシピを盗むとさっさと辞めてしまった。数年前のことだ。
別に隠す必要も無いと思い俺はイオンに理由を話した。
「なんだその卑怯者は! 犯罪にはならないのか!」
「姉が然るべきところへ相談したらしいですけれど何の罪に該当するのか判断が難しいと言われたそうです」
「何だと、だったらそいつの名前と店の名前を教えろ。ゴールディング家が裁きを与えてやる!」
「あっ、もう無いです」
「無い、だと?」
又中途半端な敬語を使ってしまった。
しかしイオンはそれを指摘して来なかった。だったらもう咎められるまでチャンポンで良いかと開き直る。
「その店潰れました。レシピだけ真似しても材料に拘らなかったみたいで」
「……そういうことか」
「結果うちの店からレシピを盗んだ事実だけが拡散されて評判落ちて終わりましたね」
たとえばその店とうちの店の距離が隣町レベルで離れていたり、うちの店が常に満員で売り切れてばかりだったり、その店の方が安価だったりしたら話は違っていたかもしれない。
でも別にそんなことはなかった。
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初コメ失礼致します。いつも更新を楽しみにさせていただいています。
46と47の話が一緒な気がします……💦確認をお願いします🙇♀️
ご指摘有難う御座います。修正致しました
43と44の内容が全く同じに思います。
こちらの見間違いであれば、このコメントは無視してください。
ご指摘ありがとうございます。修正致しました。
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