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24.帰路の途中
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まあ俺の感情や評価なんてあの二人には何の影響も与えないだろう。
俺は主人公じゃない。
自分の人生の主人公ではあるが、アリオ・ブルームという人物自体はゲーム内では脇役だ。
攻略ヒロインの影の薄い弟でしかない。
メインヒロインであるディエと、その婚約者で悪役令息であるイオンの間に割って入るなど有り得ない。
イオンが雇ったチンピラが父の菓子店の常連客という妙な縁で、関りは出来たがそれも今回限りだ。
ディエがイオンに吹き込んだ嘘は一応否定出来た筈だ。
少なくとも俺が彼女に一切恋愛感情を抱いていないことはあのイオンにも理解出来ただろう。
ディエにも俺は最初から素っ気ない態度を取り続けている。
そのせいでイオンに嘘を吹き込むという報服をされたのかもしれないが。
二人とも身勝手で腹は立つけれど、起こり続けるよりもう関わり合いにはなりたくない気持ちが強い。
ゴールディング公爵邸を出てからモヤモヤと考え続けて出した結論はこれだった。
イオンは思い込みの強い権力持ちのアホでディエは可憐な顔で嘘を吐く悪女気質だ。
穏やかに生きていきたいなら避けるべき人物たちである。
この二人から悪感情を向けられて五体満足で公爵邸から出てこられたのは不幸中の幸いだ。
無邪気に安堵できないのは食べるどころか箱から出されもせず潰されたケーキがあるからだ。
「……持って帰れば良かったな」
きっとメイドにでも片付けられゴミ箱行きにされるだろう。
予約時に代金は貰っていたが、自分の小遣いから返金してでも取り返せば良かった。
ぐちゃぐちゃになっただけだから食べる分には問題無いだろう。
駄目になったスポンジとクリームや果物を器に交互に盛って簡単トライフルにしてもいい。
味は間違いなく美味しいのだから。
父親に配達したケーキについて尋ねられたらと思うと気が重い。
きっと俺は言葉を誤魔化してケーキが潰されたことを気づかれないようにする。
嘘を吐いてしまうかもしれない。ディエのことを責められない。
でもきっと父親は気づいてしまう。何となくそう思うのだ。
だからって俺に対して怒ったりはしないだろうけど。イオンについても何も言わないだろう。
姉のパルは確実に激怒するから寧ろ隠したいのは彼女にだ。
相手はただの迷惑客ではなく高位貴族なのだから。
そう考えると結局ケーキはゴールディング邸に置き去りにするしか無かったのかもしれない。
あの家の使用人たちが勿体ないとこっそり腹に収めてくれるのを祈ろう。
俺がそんな風に考えていると突然声が投げかけられた。
「おい、あんた。さっきからそこにいるが具合でも悪いのか?」
「えっ、あ、いや大丈夫です!」
通行人に心配され慌てて否定する。
木陰で軽く休息していたつもりだったが気付かず長居してしまったようだ。
近くに公園もあるのに、だらだらと木にもたれかかっていたら怪しまれるのも仕方ない。
俺はそそくさと街路樹の一本から体を離した。
大人しく公園のベンチで休めばよかったのに要らない恥をかき知らない相手に心配をかけてしまった。
いつまでも休んでいるわけにはいかないし帰りが遅くなれば家族が心配するだろう。
重い足取りで道を歩いているとどんどん見慣れた景色に変わる。
露店や店が並ぶ商店街の光景に何だか長旅から帰って来たようにほっとする。
ただゴールディング公爵邸へ配達に行っただけなのに。
考えながらも足を進めていくと徐々に花の香りが強くなる。
続いて快活な青年の声。
「おっ、アリオじゃねー……か」
聞き慣れた低音で気づく。
そうか、もうポプラの花屋の近くまで来てたのか。
俺も彼に挨拶を返そうとしたが、緑髪の青年は先程まで浮かべていた笑顔を消していた。
そして速足で店から出て俺の傍まで来る。
どうしたんだと不思議がる暇も無くがっしりと肩を抱かれた。
「おい、ちょっと家までこい」
「は、何でだよ」
「……馬鹿、そんな顔で家に帰る気か!」
よくわからないままポプラに抱きかかえられるように俺は彼の家まで引きずり込まれた。
俺は主人公じゃない。
自分の人生の主人公ではあるが、アリオ・ブルームという人物自体はゲーム内では脇役だ。
攻略ヒロインの影の薄い弟でしかない。
メインヒロインであるディエと、その婚約者で悪役令息であるイオンの間に割って入るなど有り得ない。
イオンが雇ったチンピラが父の菓子店の常連客という妙な縁で、関りは出来たがそれも今回限りだ。
ディエがイオンに吹き込んだ嘘は一応否定出来た筈だ。
少なくとも俺が彼女に一切恋愛感情を抱いていないことはあのイオンにも理解出来ただろう。
ディエにも俺は最初から素っ気ない態度を取り続けている。
そのせいでイオンに嘘を吹き込むという報服をされたのかもしれないが。
二人とも身勝手で腹は立つけれど、起こり続けるよりもう関わり合いにはなりたくない気持ちが強い。
ゴールディング公爵邸を出てからモヤモヤと考え続けて出した結論はこれだった。
イオンは思い込みの強い権力持ちのアホでディエは可憐な顔で嘘を吐く悪女気質だ。
穏やかに生きていきたいなら避けるべき人物たちである。
この二人から悪感情を向けられて五体満足で公爵邸から出てこられたのは不幸中の幸いだ。
無邪気に安堵できないのは食べるどころか箱から出されもせず潰されたケーキがあるからだ。
「……持って帰れば良かったな」
きっとメイドにでも片付けられゴミ箱行きにされるだろう。
予約時に代金は貰っていたが、自分の小遣いから返金してでも取り返せば良かった。
ぐちゃぐちゃになっただけだから食べる分には問題無いだろう。
駄目になったスポンジとクリームや果物を器に交互に盛って簡単トライフルにしてもいい。
味は間違いなく美味しいのだから。
父親に配達したケーキについて尋ねられたらと思うと気が重い。
きっと俺は言葉を誤魔化してケーキが潰されたことを気づかれないようにする。
嘘を吐いてしまうかもしれない。ディエのことを責められない。
でもきっと父親は気づいてしまう。何となくそう思うのだ。
だからって俺に対して怒ったりはしないだろうけど。イオンについても何も言わないだろう。
姉のパルは確実に激怒するから寧ろ隠したいのは彼女にだ。
相手はただの迷惑客ではなく高位貴族なのだから。
そう考えると結局ケーキはゴールディング邸に置き去りにするしか無かったのかもしれない。
あの家の使用人たちが勿体ないとこっそり腹に収めてくれるのを祈ろう。
俺がそんな風に考えていると突然声が投げかけられた。
「おい、あんた。さっきからそこにいるが具合でも悪いのか?」
「えっ、あ、いや大丈夫です!」
通行人に心配され慌てて否定する。
木陰で軽く休息していたつもりだったが気付かず長居してしまったようだ。
近くに公園もあるのに、だらだらと木にもたれかかっていたら怪しまれるのも仕方ない。
俺はそそくさと街路樹の一本から体を離した。
大人しく公園のベンチで休めばよかったのに要らない恥をかき知らない相手に心配をかけてしまった。
いつまでも休んでいるわけにはいかないし帰りが遅くなれば家族が心配するだろう。
重い足取りで道を歩いているとどんどん見慣れた景色に変わる。
露店や店が並ぶ商店街の光景に何だか長旅から帰って来たようにほっとする。
ただゴールディング公爵邸へ配達に行っただけなのに。
考えながらも足を進めていくと徐々に花の香りが強くなる。
続いて快活な青年の声。
「おっ、アリオじゃねー……か」
聞き慣れた低音で気づく。
そうか、もうポプラの花屋の近くまで来てたのか。
俺も彼に挨拶を返そうとしたが、緑髪の青年は先程まで浮かべていた笑顔を消していた。
そして速足で店から出て俺の傍まで来る。
どうしたんだと不思議がる暇も無くがっしりと肩を抱かれた。
「おい、ちょっと家までこい」
「は、何でだよ」
「……馬鹿、そんな顔で家に帰る気か!」
よくわからないままポプラに抱きかかえられるように俺は彼の家まで引きずり込まれた。
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