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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】

Summer Breeze【1−13】

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「――なるほど。じゃあ、まずはボランティア先と回数や期間の話し合いが必要になるわね」
「あとは、花の種や苗のセレクトと確保も優先しないと、だろ?」
「そうね。そっちは亨とチカちゃんに任せるわ。私は受け入れ先の検討をして、交渉に行ってくる」
「了解。あとは――」

 うわぁ、展開早い。
 尋ねられたことに私がちょっと答えたら、すぐに理解して次の質問がきて、どんどん計画が進んでいくのよ。すごいわ。
 しかも、藤沢先輩と野崎先輩がそれぞれ質問しながらノートをとって進めていくんだけど、それを横でチカちゃんがPCに入力していって、議事録を同時作成してる。
 連携プレーと無駄のなさの両方に、感心するを通り越して圧倒されちゃう。

「白藤さん、今日はありがとう。ものすごく助かったわ」
「あ、いえ。少しでもお役に立てたなら嬉しいです」
 打ち合わせは一時間ほどで終わった。ほっと肩の力を抜いたところで、野崎先輩が今度はホットココアを出してくれた。さっぱりしたオレンジ風味で、これまた美味しい。
「ところで白藤さん。変なこと聞くけど、あなた、彼氏いる?」
「え? あ、はい」
 突然の質問に戸惑ったけど、正直に頷いた。奏人がどうかしたのかしら。
「そう、いるのね。あのね、言いにくいんだけど見えてるわよ。ここ。――彼の刻印しるしが」
「しっ! ししっ、しいぃっ?」
 ここ、と藤沢先輩が声をひそめて差してきたのは耳朶から少し下がった位置。セーラーの襟との境目。
 しるしっていうのは、ボストンに発つ直前、たくさんのキスと一緒に奏人が刻んでいった、その名残だ。きっと。

 そこをパチンっと音がするほどに急いで手で隠したけど、もう遅いんだよね。
 そして、自分のその動きで、ふと思い出した。その位置は、さっき煌先輩が触れてきたのと全く同じ場所だということ。
 え? 待って?
 じゃあ……じゃあじゃあ! 煌先輩が言ってた『土岐か?』っていうのは、そっちの意味での質問だったってことっ?
 いやあぁっ。恥ずかしいっ!


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