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壱
喋る猫とお友だちに 【1】
しおりを挟む二匹の猫が、顔を寄せ合っている。
なんと、微笑ましい。
どちらも、真綿のごとく美しい、真白き猫だ。
陽の光を弾いて煌めいている、滑らかで柔らかな被毛。ふわふわの細毛を、これでもかと互いにくっつけ、すりすりし合っている。
あぁ。まことに、なんと微笑ましいのか。もふもふが、二匹。二匹も!
「うーん、もふもふぅ……」
「お前、最近よく見かけるな。柄の悪い奴らを引き連れて、でかい面してる新参者だろ?」
「あーら、お言葉ですけど。アタシ、とっても美しいだけで顔はでかくないのよ。それと、引き連れてるんじゃなくて、皆、アタシを慕って勝手についてくるの。柄が悪い子たちなのは否定しないけどー」
……え?
「ほぅ、お前を慕って勝手に? 親分ってことか? 新参者のくせに俺と同じって言いたいのか。許せんな」
「えー? 親分って、なんか響きが嫌だわ。せめて『頭領』にしてくれない? アタシ、呼び名にもこだわるの。何せ、美の追求者ですものっ」
ちょっ……何これ。猫が喋ってる?
「なんだ、こら。『親分』の何が悪い」
「何よ。アタシは正直に言っただけよ」
しかも、仲良くすりすりしてたんじゃなくて、因縁つけ合ってたのか? 全く逆っ?
「ああぁっ?」
「何よぅっ!」
「ちょっ! ちょっと待ってくださーい!」
嘘だろ? 夢だろ? 信じられないっ。
そう思いながらも、二匹の猫が顔を擦りつけ、睨み合ってる場に飛び出していた。
今は、まだ陽も高い昼間。こんな時間に夢を見ているはずがない。
でも、残暑が見せてきた幻かもしれない。
「あのっ! あなたたち、今、喧嘩してるんですか? 喋ってましたよね? 口喧嘩してましたよね? どうして、猫の鳴き声じゃなくて、わざわざ人語で喧嘩してるんですかぁっ?」
けれど、夢か幻かなんて、どうでもいい。一番知りたいことを、ただ喚いていた。
「あ? 人の言葉を俺が喋ったら、おかしいのか?」
「やだぁ。アタシは全能の美猫だから、人語くらい楽勝なのよ?」
「え? そう……ですか。お答えくださり、ありがとうございます」
勢い込んでぶつけた問いは、「そんなの当然!」とでも言いたげな表情の二匹によって、ちゅるっと流された。
あれ? 今までの僕の認識がおかしかったのか? 猫は喋って当たり前、だった?
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