転生したら奴隷だったので人生絶望的かと思ったけれど豪運スキルをきっかけになんだかんだうまくやれてます

小龍ろん

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邪気封滅

129. ラーチェさんの誤算

 神託は終わり、気がつけばゴツゴツした岩だらけの荒野に戻っていた。久しぶりに会えた廉君との別れは名残惜しかったけど、使徒になったからにはちょくちょく会う機会もあるはずだ。そう考えると寂しくはないね。

『お、トルト、もう終わったのか?』

 少しぼうっとしていたら、シロルが尻尾を揺らしながら話しかけてきた。そういえばシロルには神託とかないのかな? 一緒に廉君の家に行けたらいいのに。

「うん。どのくらい経った?」
『あんまりだな。ほら、マッソたちもまだ話してるぞ』

 シロルの指摘通り、マッソさんたちは案内人とまだ話しているところだった。ハルファに神託が下りたところを見たことがあるから知ってたけど、本当に体感時間と大きな差があるんだなぁ。

「あ、そうだ。僕、廉君……運命神様の使徒になったよ」
『ふぅん。何か変わるのか?』
「んー? あんまり変わらないかな。直接神託が下されるようになったくらい」
『そうなのか。まあ、直接呼ばれた方が便利だな!』

 今まではパンドラギフトを介したやり取りしかできなかったからね。ちなみに、ギフトを開けたときの手紙に書かれた短文は、どうにか情報をやり取りできないかという廉君の悪あがきだったみたい。基本的に、使徒や巫女以外に対しては、スキルなどを介しての干渉しかできないという決まりがあるみたい。アイテムの説明書をつけるのはギリギリ問題なくて、文章量の5%くらいなら誤字が許されるんだとか。冒頭の一文は全部誤字だって言い張るつもりみたいだよ。さすがに無理があると思うけど。

「おお、トルト少年の用事も済んだか。では、我が輩らはこれで失礼する。やらねばならんことがあるのでな」

 僕がみんなの傍に戻ったところで、マッソさんも話を切り上げたようだ。案内人の男性に挨拶をしてアイングルナに戻った。

「導師会への報告は我が輩に任せるといい。ギルドへの報告はラーチェがいるが……まあ、ローウェルたちも報告をしておいてもらえると助かる」
「ニャんだか含みがあるニャ~? でも、面倒くさいから、その方があたしも助かるニャ!」

 ともかく、謎の鍵に関する探索はこれで一区切りだ。グルナ導師会への報告はマッソさんが請け負ってくれるそうだ。代わりに、鍵をマッソさんに手渡すことになった。まあ、これは仕方がない。十階層ずつとはいえ、ダンジョン内を瞬時に移動できるなんて、実際に証拠がなければ信じられないだろうからね。便利だったから、ちょっと惜しいけど。

 ゴドフィーが残したと思われる文書はマッソさんに手渡したけど、倉庫らしき部屋から押収したものは、そのまま僕が預かっている。まあ、結構量があったからね。置く場所にも困るだろうし。

 去って行くマッソさんを見送って、僕たちもギルドに報告だ。

「……ニャ? しまったニャ! ショートカットを使ったから、予定よりも早く戻ってきてしまったニャ!」

 気付いちゃったみたいだね。復路を丸々短縮できたから、予定していた日数の半分で往復しちゃったんだ。つまりラーチェさんの自由時間も半分になったってこと。その分、仕事も溜まっていないはずだから、悪いことばかりでもないんだけどね。

「ま、まだ戻るには早いと思うニャ! そうニャ! 変な声が聞こえる特殊個体がまだどこかにいるはずニャ! 誰かが倒してしまわないように、あたしたちで倒して回るのはどうニャ?」

 よほど書類仕事に戻りたくないのか、抵抗を続けるラーチェさん。たしかに、特殊個体については気になるところだけど……。

「それはそれとして報告には戻らないと駄目ですよ。もし、特殊個体の討伐をするとしても、バッフィさんを説得してからですね」
「そんなの、無理ニャ……」

 分の悪さを感じてか、ラーチェさんは大袈裟に肩を落とす。とはいえ、それ以上は抵抗することなく、素直にギルドまでついてきた。

「あら、みなさんお帰りなさい。予定よりずいぶん早いですね」

 すでに冒険者ギルドも閉めるような時間だ。そのせいもあってか、受付に並ぶ冒険者の数も少ない。すぐに、バッフィさんと話すことができた。終了間際で申し訳ないけど、今回の探索で知り得た情報を残さず説明していく。

「なるほど、たしかに厄介な状況です。特殊個体には手を出さないように通達はしますが……特殊個体と気がつかずに討伐してしまう可能性はありますからね。ラーチェさんの言うとおり、積極的に排除してしまった方がいいかもしれません」
「その通りニャ! というわけで、あたしが……」
「ラーチェさんには別のお仕事がありますよ? 他のことをやっている余裕があるなら、仕事を本来の量に戻しましょうか?」
「……あたしは、大人しく書類仕事をするニャ」

 あんなに書類仕事を嫌がっていたラーチェさんが、一瞬で大人しくなった。バッフィさんはさすがだね。

 その件は、僕たちへの指名依頼ということになった。ハルファの鎮めのうたがあれば、声の影響から抜け出せるだろうというのが、指名を受けた理由だ。みんなで相談した結果、この依頼は受けることにした。この件は気になっているし、もし上手く倒せたらもう一度鍵が手に入るかもしれないからね。
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