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邪気封滅
173. 召喚命令
どうにか邪教徒との決着をつけなくちゃと考えている矢先のことだった。導師会に動きがあったんだ。でも、それは邪教徒を排除しようとする動きではなく、僕たちへの妨害行為。筋肉焼き屋台の禁止命令だった。表向きの理由は人気がありすぎて混雑を引き起こしているからというもの。事実ではあるけど、いきなり禁止するというのは乱暴な措置だ。一応、導師会が用意した店舗での営業は認めるって話だけど……そのお店は導師会の監督が入るとかなんとか。明らかに、邪気浄化作戦を妨害しにきている。
厄介なことに、導師会の指示に従う警備隊の人達は邪気に洗脳されているわけでもない普通の人なんだよね。試しにクリーンを使ってみたけど、特におかしな反応はなかった。彼等は、統治組織である導師会に従っているだけなんだ。もっとも、今回の措置に疑問はあるようだけどね。それでも、導師会には長年築いてきた信頼がある。今回のことも何らかの意味があるのだろうと、粛々と指示を全うしているようだ。
そうなると、戦士団の人達も無理を通すわけにもいかず、筋肉焼きの屋台は畳むことになった。一番しょんぼりしているのはシロルだ。彼は筋肉焼きの屋台が増えることを誰よりも喜んでいたからね。実は僕もしょんぼりしている。例の特製爪楊枝を禁止命令が出る前日に作り貯めたところだったんだ。僕の収納リングには1000個くらいの爪楊枝が残っている。これ、どうすればいいの?
「目立つのを控えてきたけど……もう完全に敵対視されてるよね」
「……トルトの認識はともかく。俺たちと戦士団の協力関係については調べればすぐにわかるだろうからな」
僕の言葉にローウェルが同意した。頭に余計な言葉がついていたけど。
え、僕、目立つのを控えてたよね?
僕の作ったクリーンの魔道具が商業ギルド経由で人気になったり、アレンの辻クリーン騒動が都市伝説になりかけたりしたけど、それは僕のせいではないはず。
「だったら、もう一回歌う?」
ハルファが提案しているのは、飛行船から歌を届けたあの作戦のことだろう。無理をしてマナ切れを起こしたというのに、彼女はやる気満々だ。邪気転換の指輪でマナ回復速度が上昇しているから、以前よりは負担が少ないとは思うけど。
『ラムヤーダス様はなんて言ってたんだ?』
「精霊神の協力もあって、アイングルナの邪気はかなり急速に減っているみたいだよ。もう少しすれば干渉もできそうだから、それまであんまり無理しないようにって」
アイングルナのダンジョンは結界でも張られているのか、廉君にも干渉できない状態だった。だけど、邪気が減少してその状態を維持できなくなりつつあるらしい。僕も毎日せっせと爪楊枝を作ったからね。そのマナ消費で邪気を運命素に変換する手助けになったはずだ。
「うーん。じゃあ、まだ歌作戦はやめておいた方がいいね」
「そうだね」
巨鳥は浄化してしまったけど、他の戦力がないとは限らない。グレイトバスターズを利用して魔物の素材を集めようとしていたみたいだしね。きっと、素材から邪神の眷属みたいなもんを作る技術があるんだろう。クリーンで浄化はできるだろうけど、遠くには届かないので、飛行船で戦うと不利なんだよね。
そんなとき、マジックハウスの外で見張りをしていたアレンが飛び込んできた。僕らはいまだに爆発した宿屋に部屋を取っている。壊れた建物は僕がゴーレムで土壁を作って簡易的に修理していた。
「タイヘンダ、カコマレテマス!」
「え? 何に?」
「ケイビタイ、デス」
とにかく状況を確認しようと、僕らはマジックハウスの外に出た。窓から外を覗くと、たしかに宿屋を囲むように警備隊の人達がいる。人数は30人くらいかな。ちょっと穏やかな様子ではない。念のため、マジックハウスは回収しておこう。
「どうする?」
「逃げられなくはないけど……逃げたらややこしくなるよね」
「少なくとも街にはいられないだろうな」
ローウェルと軽く話し合う。結論として、とりあえず話を聞いてみることにした。判断はそれからでも遅くはない。宿屋に迷惑をかけないように、こちらから外に出る。これで、僕らに全く関係なかったら笑い話なんだけどね。
「君たちが栄光の階か。む? 一人多いな」
残念ながら笑い話にはならなかったみたい。隊長らしいおじさんが僕らを見るなり、そう言った。一人多いというのは、アレンのことだろう。ちょうどいいから、彼には冒険者ギルドに向かって貰おう。事情の説明役だ。隊長さんに気付かれないように、ひとつ魔法をかけて一旦宿屋に戻って貰った。
あらためて警備隊と向き合う。
「仰々しくて申し訳ない。君たちには導師会への召喚命令が出ているんだ。しかも、今すぐと言われていて……すまないが一緒についてきてくれるか」
隊長さんは悪い人ではなさそうだね。本当に申し訳なさそうだ。他の人達にも戸惑いが見える。やっぱり、警備隊の人達は洗脳されていない一般人みたい。導師会の強引ともいえる命令に納得し切れていない様子だ。まあ、こちらはローウェル以外まだ子供だからね。罪悪感があるのかもしれない。
「……どうする?」
念のためという感じでローウェルが尋ねてきた。と言われても、いい人そうなこの人達を蹴散らして逃げるのも躊躇われるよね。もし、それを見越しての人選ならまんまと術中にはまったことになるけど、僕らは大人しくついていくことにした。
危険かもしれないけど、導師会の様子は知りたいと思っていたしね。もし、洗脳されている人がいたとしてもクリーンで解除すれば大丈夫だよ。たぶん。
厄介なことに、導師会の指示に従う警備隊の人達は邪気に洗脳されているわけでもない普通の人なんだよね。試しにクリーンを使ってみたけど、特におかしな反応はなかった。彼等は、統治組織である導師会に従っているだけなんだ。もっとも、今回の措置に疑問はあるようだけどね。それでも、導師会には長年築いてきた信頼がある。今回のことも何らかの意味があるのだろうと、粛々と指示を全うしているようだ。
そうなると、戦士団の人達も無理を通すわけにもいかず、筋肉焼きの屋台は畳むことになった。一番しょんぼりしているのはシロルだ。彼は筋肉焼きの屋台が増えることを誰よりも喜んでいたからね。実は僕もしょんぼりしている。例の特製爪楊枝を禁止命令が出る前日に作り貯めたところだったんだ。僕の収納リングには1000個くらいの爪楊枝が残っている。これ、どうすればいいの?
「目立つのを控えてきたけど……もう完全に敵対視されてるよね」
「……トルトの認識はともかく。俺たちと戦士団の協力関係については調べればすぐにわかるだろうからな」
僕の言葉にローウェルが同意した。頭に余計な言葉がついていたけど。
え、僕、目立つのを控えてたよね?
僕の作ったクリーンの魔道具が商業ギルド経由で人気になったり、アレンの辻クリーン騒動が都市伝説になりかけたりしたけど、それは僕のせいではないはず。
「だったら、もう一回歌う?」
ハルファが提案しているのは、飛行船から歌を届けたあの作戦のことだろう。無理をしてマナ切れを起こしたというのに、彼女はやる気満々だ。邪気転換の指輪でマナ回復速度が上昇しているから、以前よりは負担が少ないとは思うけど。
『ラムヤーダス様はなんて言ってたんだ?』
「精霊神の協力もあって、アイングルナの邪気はかなり急速に減っているみたいだよ。もう少しすれば干渉もできそうだから、それまであんまり無理しないようにって」
アイングルナのダンジョンは結界でも張られているのか、廉君にも干渉できない状態だった。だけど、邪気が減少してその状態を維持できなくなりつつあるらしい。僕も毎日せっせと爪楊枝を作ったからね。そのマナ消費で邪気を運命素に変換する手助けになったはずだ。
「うーん。じゃあ、まだ歌作戦はやめておいた方がいいね」
「そうだね」
巨鳥は浄化してしまったけど、他の戦力がないとは限らない。グレイトバスターズを利用して魔物の素材を集めようとしていたみたいだしね。きっと、素材から邪神の眷属みたいなもんを作る技術があるんだろう。クリーンで浄化はできるだろうけど、遠くには届かないので、飛行船で戦うと不利なんだよね。
そんなとき、マジックハウスの外で見張りをしていたアレンが飛び込んできた。僕らはいまだに爆発した宿屋に部屋を取っている。壊れた建物は僕がゴーレムで土壁を作って簡易的に修理していた。
「タイヘンダ、カコマレテマス!」
「え? 何に?」
「ケイビタイ、デス」
とにかく状況を確認しようと、僕らはマジックハウスの外に出た。窓から外を覗くと、たしかに宿屋を囲むように警備隊の人達がいる。人数は30人くらいかな。ちょっと穏やかな様子ではない。念のため、マジックハウスは回収しておこう。
「どうする?」
「逃げられなくはないけど……逃げたらややこしくなるよね」
「少なくとも街にはいられないだろうな」
ローウェルと軽く話し合う。結論として、とりあえず話を聞いてみることにした。判断はそれからでも遅くはない。宿屋に迷惑をかけないように、こちらから外に出る。これで、僕らに全く関係なかったら笑い話なんだけどね。
「君たちが栄光の階か。む? 一人多いな」
残念ながら笑い話にはならなかったみたい。隊長らしいおじさんが僕らを見るなり、そう言った。一人多いというのは、アレンのことだろう。ちょうどいいから、彼には冒険者ギルドに向かって貰おう。事情の説明役だ。隊長さんに気付かれないように、ひとつ魔法をかけて一旦宿屋に戻って貰った。
あらためて警備隊と向き合う。
「仰々しくて申し訳ない。君たちには導師会への召喚命令が出ているんだ。しかも、今すぐと言われていて……すまないが一緒についてきてくれるか」
隊長さんは悪い人ではなさそうだね。本当に申し訳なさそうだ。他の人達にも戸惑いが見える。やっぱり、警備隊の人達は洗脳されていない一般人みたい。導師会の強引ともいえる命令に納得し切れていない様子だ。まあ、こちらはローウェル以外まだ子供だからね。罪悪感があるのかもしれない。
「……どうする?」
念のためという感じでローウェルが尋ねてきた。と言われても、いい人そうなこの人達を蹴散らして逃げるのも躊躇われるよね。もし、それを見越しての人選ならまんまと術中にはまったことになるけど、僕らは大人しくついていくことにした。
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