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異形侵攻
201. 巨大ゴーレム、ふたたび
アレンたちがクロムビートルを倒したころには、ゼフィルたちも担当していた二体を撃破している。横目に見ていたけど、危なげなく戦っていた。ゼフィルとマールが一体ずつ受け持ち、リックが射撃で牽制、そしてエイナが大火力魔法で一気に仕留めるという形。見事な連携だね。
さて、向かってきた四体は倒したけれども、甲虫たちはまだまだ大量に残っている。多分、集まった冒険者の数の10倍……下手したら20倍くらいいるかもしれない。ただ、クロムビートルは基本的に縄張りの外に関しては無関心だ。ちょっとずつ、釣り出せば大勢を相手にする必要はない。
「戦いやすいが、こうも多いと面倒だな!」
「安全のためだ。我慢しろ」
何度目かの釣り出しを終わらせたところで、ゼフィルがぼやく。それをたしなめたのはローウェルだ。とはいえ、彼だってうんざりしていると思う。何しろ、クロムビートルの群れは少しも減っているようには見えない。いや、後ろを振りかえると大量の死骸が転がっているから、かなりの数を倒しているはずなんだけどね。
「報告よりも数が多いみたいだね」
「もう! 斥候は何やってるの!」
リックとマールは依頼を受けたときに聞いた情報との食い違いを指摘している。マールは偵察がしっかりしていなかったと考えているようだけど、さすがにこの数の差を間違えるかな?
「ひょっとしたら追加で集まってきてるのかも」
「そうかもしれないな……」
可能性を指摘すると、ローウェルが渋い表情で同意した。現在進行形で増えていたら、終わりが見えないからね。ただでさえ、あまりの数に辟易としているのに。
不意に甲高い笛の音が響いた。撤退の合図だ。続いて、リーダーの張り上げる声が聞こえる。
「事前の情報との食い違いが多い! 戦力が不足する可能性も考えて一旦ベルヘスに撤収する! 虫どもを刺激しないようにしろよ!」
慎重を期して立て直すつもりみたいだ。事前情報と違っている時点で、何が起こるかわからないからね。妥当な指示だと思う。
だけど、その決断は少し遅かったのかもしれない。
「……来てる」
ぼそりとエイナが呟いた。彼女の視線の先は、クロムビートルたちが蠢く東の彼方。慌ててそちらに視線を向けると、甲虫の群れがこちらに迫ってくるところだった。僕らはその場から動いていないはずなのに。
「ちっ! 撤退中止! あの群れを街に近づけるわけにはいかん! 踏みとどまって戦え!」
状況を把握したリーダーから命令の変更が伝えられる。たしかに、このまま僕らが逃げたら、それを追ってあいつらがベルヘスになだれ込んでくるだろう。それに、移動速度は甲虫たちの方が早い。闇雲に逃げても背後から襲われるだけだ。
リーダーの指示で一番経験の浅いCランクパーティーが街へと走る。ギルドへの応援を頼んだのだろう。
「何あれ!?」
「カブトムシ? でも、他のとはちょっと違う……?」
ハルファとスピラが何かを見つけたみたい。それは虫たちの先頭を行く個体のようだ。一見するとカブトムシタイプのクロムビートルなんだけど、一回り大きいし風格がある。ちょっと強そうだ。
「くそっ! ヘラクレスだ! Cランクは相手にするなよ! Bランクで当たれ!」
リーダーから指示が飛ぶ。
あれはヘラクレスという個体みたい。ヘラクレスオオカブトかな? よくわからないけど、おそらくカブトムシ型よりも強力な個体なんだろうね。
飛来してくる甲虫たち。この場から攻撃魔法を仕掛けるにはまだ少し距離がある。というわけで、いつものごとく、ゴーレムによる特攻を敢行することにした。多くの虫の縄張りに侵入してしまうから釣り出し作戦には使えない戦法だけど、この状況なら関係ないからね。
その場で作った空気ゴーレム数体にストックしておいた付与魔道具を持たせて送り出す。彼らはシャドウリープで敵前に迫り、周囲にシュレッディングストームを解き放った。
「なんだ!?」
「こちらの攻撃か?」
突然発生した広範囲の暴風攻撃に冒険者たちから驚きの声があがる。とはいえ、動揺は少ない。標的は虫たちだからね。
飛んでいる魔物に暴風の攻撃は有効。軽い奴が多いから風の影響を受けやすいんだ。荒々しい風に翻弄されて、上手く飛べずに地面に激突する個体も多い。とはいえ、大部分はそのままこちらに向かってくる。いくらかはダメージを与えられたはずだけど。
ある程度近づいてきたところで、魔法使いたちが範囲攻撃を放ち始める。同じタイミングでシャラもシュレッディングストームを放った。もちろん、付与魔道具なしで。習得したのはファイアボールだけじゃなかったみたい。
遠距離攻撃でかなり削ったけれど、依然として虫たちの数は多い。すでに距離はかなり縮まっている。
「わふ!」
「なぁ!?」
シロルが前方に飛び出した。その身体がみるみる巨大化していく。それを見た冒険者たちからどよめきの声が上がった。事前に説明しておけばよかったかな。でも、こんな風に追い込まれるとは思ってなかったからね。
シロルは身を挺して盾になるつもりなんだろう。今のシロルならある程度は持ちこたえられるとは思うけど、それでも負担が大きすぎる。
仕方がない。またパニックが起きるかもしれないけど、巨大ゴーレムを作るしかない!
「ゴーレムを作ります! 下がって!」
周囲に警告して、クリエイトゴーレムを唱える。
大丈夫。ここは砂漠じゃないから、ホラーチックなゴーレムにはならないはず!
呪文の発動とともに、ゴゴゴと大地が鳴動して、小山のような巨体が身体を起こした。今回は身体が崩れていない。しっかりとした埴輪型だ!
「な、なんだ、あれは!」
「あ、新手の化け物か!?」
あ、あれ?
やっぱり怯えられている!?
さて、向かってきた四体は倒したけれども、甲虫たちはまだまだ大量に残っている。多分、集まった冒険者の数の10倍……下手したら20倍くらいいるかもしれない。ただ、クロムビートルは基本的に縄張りの外に関しては無関心だ。ちょっとずつ、釣り出せば大勢を相手にする必要はない。
「戦いやすいが、こうも多いと面倒だな!」
「安全のためだ。我慢しろ」
何度目かの釣り出しを終わらせたところで、ゼフィルがぼやく。それをたしなめたのはローウェルだ。とはいえ、彼だってうんざりしていると思う。何しろ、クロムビートルの群れは少しも減っているようには見えない。いや、後ろを振りかえると大量の死骸が転がっているから、かなりの数を倒しているはずなんだけどね。
「報告よりも数が多いみたいだね」
「もう! 斥候は何やってるの!」
リックとマールは依頼を受けたときに聞いた情報との食い違いを指摘している。マールは偵察がしっかりしていなかったと考えているようだけど、さすがにこの数の差を間違えるかな?
「ひょっとしたら追加で集まってきてるのかも」
「そうかもしれないな……」
可能性を指摘すると、ローウェルが渋い表情で同意した。現在進行形で増えていたら、終わりが見えないからね。ただでさえ、あまりの数に辟易としているのに。
不意に甲高い笛の音が響いた。撤退の合図だ。続いて、リーダーの張り上げる声が聞こえる。
「事前の情報との食い違いが多い! 戦力が不足する可能性も考えて一旦ベルヘスに撤収する! 虫どもを刺激しないようにしろよ!」
慎重を期して立て直すつもりみたいだ。事前情報と違っている時点で、何が起こるかわからないからね。妥当な指示だと思う。
だけど、その決断は少し遅かったのかもしれない。
「……来てる」
ぼそりとエイナが呟いた。彼女の視線の先は、クロムビートルたちが蠢く東の彼方。慌ててそちらに視線を向けると、甲虫の群れがこちらに迫ってくるところだった。僕らはその場から動いていないはずなのに。
「ちっ! 撤退中止! あの群れを街に近づけるわけにはいかん! 踏みとどまって戦え!」
状況を把握したリーダーから命令の変更が伝えられる。たしかに、このまま僕らが逃げたら、それを追ってあいつらがベルヘスになだれ込んでくるだろう。それに、移動速度は甲虫たちの方が早い。闇雲に逃げても背後から襲われるだけだ。
リーダーの指示で一番経験の浅いCランクパーティーが街へと走る。ギルドへの応援を頼んだのだろう。
「何あれ!?」
「カブトムシ? でも、他のとはちょっと違う……?」
ハルファとスピラが何かを見つけたみたい。それは虫たちの先頭を行く個体のようだ。一見するとカブトムシタイプのクロムビートルなんだけど、一回り大きいし風格がある。ちょっと強そうだ。
「くそっ! ヘラクレスだ! Cランクは相手にするなよ! Bランクで当たれ!」
リーダーから指示が飛ぶ。
あれはヘラクレスという個体みたい。ヘラクレスオオカブトかな? よくわからないけど、おそらくカブトムシ型よりも強力な個体なんだろうね。
飛来してくる甲虫たち。この場から攻撃魔法を仕掛けるにはまだ少し距離がある。というわけで、いつものごとく、ゴーレムによる特攻を敢行することにした。多くの虫の縄張りに侵入してしまうから釣り出し作戦には使えない戦法だけど、この状況なら関係ないからね。
その場で作った空気ゴーレム数体にストックしておいた付与魔道具を持たせて送り出す。彼らはシャドウリープで敵前に迫り、周囲にシュレッディングストームを解き放った。
「なんだ!?」
「こちらの攻撃か?」
突然発生した広範囲の暴風攻撃に冒険者たちから驚きの声があがる。とはいえ、動揺は少ない。標的は虫たちだからね。
飛んでいる魔物に暴風の攻撃は有効。軽い奴が多いから風の影響を受けやすいんだ。荒々しい風に翻弄されて、上手く飛べずに地面に激突する個体も多い。とはいえ、大部分はそのままこちらに向かってくる。いくらかはダメージを与えられたはずだけど。
ある程度近づいてきたところで、魔法使いたちが範囲攻撃を放ち始める。同じタイミングでシャラもシュレッディングストームを放った。もちろん、付与魔道具なしで。習得したのはファイアボールだけじゃなかったみたい。
遠距離攻撃でかなり削ったけれど、依然として虫たちの数は多い。すでに距離はかなり縮まっている。
「わふ!」
「なぁ!?」
シロルが前方に飛び出した。その身体がみるみる巨大化していく。それを見た冒険者たちからどよめきの声が上がった。事前に説明しておけばよかったかな。でも、こんな風に追い込まれるとは思ってなかったからね。
シロルは身を挺して盾になるつもりなんだろう。今のシロルならある程度は持ちこたえられるとは思うけど、それでも負担が大きすぎる。
仕方がない。またパニックが起きるかもしれないけど、巨大ゴーレムを作るしかない!
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大丈夫。ここは砂漠じゃないから、ホラーチックなゴーレムにはならないはず!
呪文の発動とともに、ゴゴゴと大地が鳴動して、小山のような巨体が身体を起こした。今回は身体が崩れていない。しっかりとした埴輪型だ!
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あ、あれ?
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