202 / 309
異形侵攻
202. リズミカルに叩く!
「あれがゴーレムだ。盾にして襲いかかってくる虫だけを相手にしろ!」
向かってきた甲虫を斬りつけながらローウェルが指示を出す。味方であると理解した冒険者たちも、すぐに気持ちを切り替えて防戦体勢をとった。
シロルとゴーレムが盾になっているとはいえ、敵の数は膨大。隙間を抜けて襲いかかってくる虫たちへと対応しきれなければ、待っているのは死だ。冒険者たちもそのことはよく理解している。
運が良いのか悪いのか。クロムビートルたちはベルヘスに向かわずに僕らに殺到してくる。幸運なことに、こいつらはデカいものを優先して攻撃するみたい。ゴーレムが囮として上手く機能している。ただ、ゴーレムの次に大きなシロルへの攻撃優先度も高いみたいなので、そちらも何とかしたい。
囮を増やすためにも、マナ回復ポーションを呷ってから、クリエイトゴーレムを発動。新たに二体のゴーレムを追加した。
ゴーレムは巨腕を振り回し、虫たちを叩きつぶそうとするけれど……なかなか攻撃が当たらないね。攻撃の勢いは凄いんだけど、虫たちはするりと避けてしまう。まあ、ゴーレムの役割は囮だ。仕事は十分に果たしている。
「ははは、あいかわらずぶっ飛んでるな、トルト! だが、おかげで戦いやすくなったぜ!」
ゼフィルが飛んで来た巨大カブトムシを大剣で打ち返しながら笑う。その隣ではマールがメイスでクワガタをボコボコにしている。小柄な体格から繰り出されているとは思えないほどメイスが轟音を響かせている。
「うーん、Bランクって凄いね。私たちが試験を受けても昇格できるの?」
「大丈夫だろう。トルトが少し普通じゃないだけだからな」
「いや、ローウェル。あなたもだけどね?」
また僕だけ普通じゃない扱いにしようとしたローウェルが、マールから突っ込まれている。まあ、瞬く間に甲虫三体をバラバラに切り捨てながら言った言葉に説得力は無いよね。
「女の子二人も大活躍しているし。普通というにはちょっと無理があるかな」
リックが苦笑いを浮かべながら言った。
ハルファとスピラはコンビを組んで虫たちを倒している。スピラがゴーレムに集る虫たちを氷の蔦で絡め取り凍てつかせ、それをハルファがショックボイスで粉砕するんだ。撃破数で言えば、二人がトップかもしれない。
まあ、そういうリックもあんまり人のことは言えない気がするけど。
彼は周囲の様子を把握して、飛んでいる虫たちの羽の付け根部分を的確に攻撃しているんだ。クロムビートルの殻を射貫くのが難しいとみて、飛行能力を削ることに専念しているんだろう。だからといって、簡単にやれる技ではないはずだ。
『ぬぅ……、あとはゴーレムに任せるぞ!』
ここで巨大化していたシロルが小さくなって戻ってきた。もうすでに代わりの囮役が三体いるしね。虫たちに集られて鬱陶しそうだったから、小さい方が攻撃に転じやすいと思ったのかもしれない。
ゴーレム三体が虫たちを引きつけてくれるおかげで、戦いは安定している。とはいえ、このまま殲滅とはいかなかった。
「ヘラクレスが突撃してくる! ゴーレムの術者を守れ!」
リーダーが警告を発する。
ゴーレムを攻撃をしても埒があかないと判断したのか、ヘラクレスが狙いを変えたんだ。幾らかの手下を引き連れて、こちらに突撃してくる。しかも、偶然なのか、それとも意図してなのかはわからないけど、狙いは僕みたい。もし、僕がゴーレムを作ったと知って襲ってきたのなら、他の虫たちと違って明確な知恵を持ってそうだね。
まあ、あのゴーレムたちは自律的に動いてるから、僕を襲ったところで止まったり消えたりしないんだけど。それに、向こうからやってきてくれるなら都合が良い。こういう強い個体が、他の虫たちに紛れて奇襲してくると厄介だからね。ここで確実に潰しておきたいところだ。
「おらぁぁ……よっ!」
高速で飛来してくるヘラクレスをゼフィルが横合いから大剣で殴る。ガンと大きな音を響いたものの、ヘラクレスに大きなダメージはなさそうだ。だけど、バランスを崩したことによって飛んでいられなくなったのか、一度着地して体勢を立て直そうとしている。
「はっ! ……さすがに斬れんか」
その隙を逃さずに斬撃を放ったのはローウェル。強烈な一撃は大角に鋭い傷跡を残したけれど、切断するには到らない。
とはいえ、ヘラクレスを怒らせるには十分だったみたい。奴の狙いが僕からローウェルに切り替わったようだ。再び飛び上がり、ローウェルに向けて突進しようとする動きを見せる。
だけど、それが実現することはなかった。
「捕まえた!」
突進攻撃直前、その進路上にスピラが氷の茨を生成。突っ込んできたヘラクレスの身体を這うように氷の結晶が侵食していく。
ヘラクレスがもがくたびに、氷の結晶がパキパキと音を立てて剥がれる。だけど、破壊と生成の速度が拮抗しているせいで、ヘラクレスに自由は訪れない。
こうなれば攻撃の絶好のチャンス。とはいえ、ヘラクレスの殻は他のクロムビートルに比べてもひときわ硬いみたいだから、生半可な攻撃じゃあ意味を成さないだろう。
「みんな離れて!」
というわけで、ゴーレムの出番だ。大振りの攻撃は飛び回る虫たちとは相性が悪いけど、拘束された状態なら関係ない。三体のゴーレムがヘラクレスを取り囲んで、リズムよく拳を叩き込んでいく。
「うわぁ……これは酷い」
「なんだか、哀れに見えてきたぜ」
一部の冒険者が何か言っているけど、気にしてはいられない。ローウェルの斬撃に耐えたことを思えば、かなり硬い相手だ。効率よくダメージを与えないと。
さすがのヘラクレスもこの攻撃には耐えられなかったようで、幾度か殴りつけたところで動かなくなった。
「よし、ヘラクレスは仕留めたな! あとは残りを狩るだけだ! ベルヘスの方向以外に逃げる奴はとりあえず放っておいていい! 最後まで気を抜くなよ」
状況を見たリーダーが指示を飛ばす。
ヘラクレスを倒したせいか、虫たちの行動が変化したみたい。さっきまでは一丸となって突撃してきたのに、一部に逃げ出すような個体が出てきたみたい。
ここまでくれば、それほど危険もない。ゴーレムは依然として囮としての役割を果たしているからね。
数が数だけに時間は掛かったものの、ギルドからの応援とも合流したことによって、どうにかクロムビートルの群れを撃退することができた。
向かってきた甲虫を斬りつけながらローウェルが指示を出す。味方であると理解した冒険者たちも、すぐに気持ちを切り替えて防戦体勢をとった。
シロルとゴーレムが盾になっているとはいえ、敵の数は膨大。隙間を抜けて襲いかかってくる虫たちへと対応しきれなければ、待っているのは死だ。冒険者たちもそのことはよく理解している。
運が良いのか悪いのか。クロムビートルたちはベルヘスに向かわずに僕らに殺到してくる。幸運なことに、こいつらはデカいものを優先して攻撃するみたい。ゴーレムが囮として上手く機能している。ただ、ゴーレムの次に大きなシロルへの攻撃優先度も高いみたいなので、そちらも何とかしたい。
囮を増やすためにも、マナ回復ポーションを呷ってから、クリエイトゴーレムを発動。新たに二体のゴーレムを追加した。
ゴーレムは巨腕を振り回し、虫たちを叩きつぶそうとするけれど……なかなか攻撃が当たらないね。攻撃の勢いは凄いんだけど、虫たちはするりと避けてしまう。まあ、ゴーレムの役割は囮だ。仕事は十分に果たしている。
「ははは、あいかわらずぶっ飛んでるな、トルト! だが、おかげで戦いやすくなったぜ!」
ゼフィルが飛んで来た巨大カブトムシを大剣で打ち返しながら笑う。その隣ではマールがメイスでクワガタをボコボコにしている。小柄な体格から繰り出されているとは思えないほどメイスが轟音を響かせている。
「うーん、Bランクって凄いね。私たちが試験を受けても昇格できるの?」
「大丈夫だろう。トルトが少し普通じゃないだけだからな」
「いや、ローウェル。あなたもだけどね?」
また僕だけ普通じゃない扱いにしようとしたローウェルが、マールから突っ込まれている。まあ、瞬く間に甲虫三体をバラバラに切り捨てながら言った言葉に説得力は無いよね。
「女の子二人も大活躍しているし。普通というにはちょっと無理があるかな」
リックが苦笑いを浮かべながら言った。
ハルファとスピラはコンビを組んで虫たちを倒している。スピラがゴーレムに集る虫たちを氷の蔦で絡め取り凍てつかせ、それをハルファがショックボイスで粉砕するんだ。撃破数で言えば、二人がトップかもしれない。
まあ、そういうリックもあんまり人のことは言えない気がするけど。
彼は周囲の様子を把握して、飛んでいる虫たちの羽の付け根部分を的確に攻撃しているんだ。クロムビートルの殻を射貫くのが難しいとみて、飛行能力を削ることに専念しているんだろう。だからといって、簡単にやれる技ではないはずだ。
『ぬぅ……、あとはゴーレムに任せるぞ!』
ここで巨大化していたシロルが小さくなって戻ってきた。もうすでに代わりの囮役が三体いるしね。虫たちに集られて鬱陶しそうだったから、小さい方が攻撃に転じやすいと思ったのかもしれない。
ゴーレム三体が虫たちを引きつけてくれるおかげで、戦いは安定している。とはいえ、このまま殲滅とはいかなかった。
「ヘラクレスが突撃してくる! ゴーレムの術者を守れ!」
リーダーが警告を発する。
ゴーレムを攻撃をしても埒があかないと判断したのか、ヘラクレスが狙いを変えたんだ。幾らかの手下を引き連れて、こちらに突撃してくる。しかも、偶然なのか、それとも意図してなのかはわからないけど、狙いは僕みたい。もし、僕がゴーレムを作ったと知って襲ってきたのなら、他の虫たちと違って明確な知恵を持ってそうだね。
まあ、あのゴーレムたちは自律的に動いてるから、僕を襲ったところで止まったり消えたりしないんだけど。それに、向こうからやってきてくれるなら都合が良い。こういう強い個体が、他の虫たちに紛れて奇襲してくると厄介だからね。ここで確実に潰しておきたいところだ。
「おらぁぁ……よっ!」
高速で飛来してくるヘラクレスをゼフィルが横合いから大剣で殴る。ガンと大きな音を響いたものの、ヘラクレスに大きなダメージはなさそうだ。だけど、バランスを崩したことによって飛んでいられなくなったのか、一度着地して体勢を立て直そうとしている。
「はっ! ……さすがに斬れんか」
その隙を逃さずに斬撃を放ったのはローウェル。強烈な一撃は大角に鋭い傷跡を残したけれど、切断するには到らない。
とはいえ、ヘラクレスを怒らせるには十分だったみたい。奴の狙いが僕からローウェルに切り替わったようだ。再び飛び上がり、ローウェルに向けて突進しようとする動きを見せる。
だけど、それが実現することはなかった。
「捕まえた!」
突進攻撃直前、その進路上にスピラが氷の茨を生成。突っ込んできたヘラクレスの身体を這うように氷の結晶が侵食していく。
ヘラクレスがもがくたびに、氷の結晶がパキパキと音を立てて剥がれる。だけど、破壊と生成の速度が拮抗しているせいで、ヘラクレスに自由は訪れない。
こうなれば攻撃の絶好のチャンス。とはいえ、ヘラクレスの殻は他のクロムビートルに比べてもひときわ硬いみたいだから、生半可な攻撃じゃあ意味を成さないだろう。
「みんな離れて!」
というわけで、ゴーレムの出番だ。大振りの攻撃は飛び回る虫たちとは相性が悪いけど、拘束された状態なら関係ない。三体のゴーレムがヘラクレスを取り囲んで、リズムよく拳を叩き込んでいく。
「うわぁ……これは酷い」
「なんだか、哀れに見えてきたぜ」
一部の冒険者が何か言っているけど、気にしてはいられない。ローウェルの斬撃に耐えたことを思えば、かなり硬い相手だ。効率よくダメージを与えないと。
さすがのヘラクレスもこの攻撃には耐えられなかったようで、幾度か殴りつけたところで動かなくなった。
「よし、ヘラクレスは仕留めたな! あとは残りを狩るだけだ! ベルヘスの方向以外に逃げる奴はとりあえず放っておいていい! 最後まで気を抜くなよ」
状況を見たリーダーが指示を飛ばす。
ヘラクレスを倒したせいか、虫たちの行動が変化したみたい。さっきまでは一丸となって突撃してきたのに、一部に逃げ出すような個体が出てきたみたい。
ここまでくれば、それほど危険もない。ゴーレムは依然として囮としての役割を果たしているからね。
数が数だけに時間は掛かったものの、ギルドからの応援とも合流したことによって、どうにかクロムビートルの群れを撃退することができた。
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。