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異形侵攻
203. 世界一高級な蜘蛛(もどき)
クロムビートルの討伐依頼から数日が経過した。
虫たちの一部が逃げ出したものの、大きな問題とはなっていないようで、依頼は無事達成と判断された。今は異常の原因を探っている段階みたいだ。
ヘラクレスが統率していたのではないかという意見もあったけれど、まだ他の原因を探っている段階。何故なら、ヘラクレスは強力な亜種だけど、ゴブリンキングのような上位種というわけじゃない。同種族を統率するような能力はないと言われているんだ。
他に可能性があるとすれば、何かから逃げてきたという可能性。
「クロムビートルの生息地である東の岩場に異常はなかった。さらに東に何かある可能性はあるが……あそこは立ち入れないからな」
そう教えてくれたのは、先日の件でリーダーを務めていた男性だ。彼は調査に関しても指揮をとっているんだけど、行き詰まっているみたい。
そこは、この辺り一帯における有力者であるギデルデ氏族にとって特別な場所らしい。基本的には立ち入りも許可されていないんだって。もちろん、異常が起きているのが明らかなら、話は別なんだろけどね。今のところ目に見えてわかる範囲で不審なところはないから、無理を通すのも難しいみたい。
ただ、やっぱり気になるよね。ガルナラーヴァが気にしていることにも関係があるかもしれないから。
こういうときに頼るべきはやはり権力者だ。幸いなことに、ギュスターさんに面会する用事がある。そのときにお願いしてみるのはありだろうね。
というわけで、ここ数日は頑張ってゴーレム作り。そして、ついに納品用の多脚ゴーレムが完成したんだ。
ギュスターさんが逗留している場所は聞いてある。氏族会議なんかのために用意されているゲストハウスがあるんだとか。大勢で押しかけるのもなんだから、僕一人で向かうことにしたんだけど……ちょっと心細い。ローウェルについてきてもらえば良かったかな。
たどり着いた先は大豪邸……かと思ったら、意外とこじんまりしている。いや、もちろん十分に立派なお屋敷なんだけど、思ったほどじゃなかった。有力者たちが連れる護衛の人数を考えると、複数の有力者が集まったら確実に収容キャパを超えるはずだ。
ということは、全ての有力者たちがここに集まるわけではなくて、ここはレイノス氏族に割り当てられた場所ってことかな。他の氏族関係者がいないのなら、幾分気は楽だ。
門で見張っていたのは知り合いの護衛の人だったので、用件を伝えるとすぐに通してもらえた。案内に従ってたどり着いたのは、屋敷の庭だ。そこにはギュスターさんに加えて、見知らぬ男性がいた。
男性の年齢はギュスターさんと同じくらいかな。引き締まった体は戦士のように見えるけど、護衛という雰囲気じゃない。ギュスターさんと対等に話していることから親族なのかもね。あんまり似てないけど。
「おお、トルト! 良く来たな。例のものが完成したとか」
「はい。納品しようと思って持ってきたんですけど……」
この場で出しても良いのかな?
多脚ゴーレムはパッと見、蜘蛛型の魔物に見えなくもない。ギュスターさんや護衛の人達はすでに見ているから大丈夫だろうけど、初見の人にいきなり見せていいものかな。さすがの僕も、異形のゴーレムを見た人々が思った以上に驚くことは学んだ。
「この男のことなら、気にしなくていい。さあ、早く見せてくれ」
こちらの躊躇に気がついたギュスターさんが急かしてくる。ギュスターさんはこう言っているし、例の男性も問題ないとばかりに頷いたので、ギュスターさん用の多脚ゴーレムを収納リングから取り出した。
と言っても、稼働状態のゴーレムは収納リングに入らないから、今は抜け殻のような状態だ。ギュスターさんの許可を取って、改めてクリエイトゴーレムを使うと停止していたゴーレムが動き出した。
「おお、以前見たものよりも立派だな!」
それを見たギュスターさんが笑顔を浮かべて手を叩く。結構、手間を掛けたから気に入ってくれて良かったよ。
最初は、マナ充填機能だけつければいいかなと思ってたんだけどね。材料の受け渡しのとき、ルランナさんに用途を聞かれたから、軽い気持ちで話したら――……
「高額の報酬をいただくのでしたら、それに見合った性能にしませんと!」
と言われてしまった。
まあ、確かに報酬に白金貨一枚をもらうのに、ゴーレムを作って「はい、おしまい」ではちょっと不義理な気もする。ギュスターさんはゴーレム好きの同志なわけだし、できれば喜んでもらいたいと僕も思っていたんだ。ルランナさんが監修してくれるというから協力してもらった。
まず、乗り心地を考えてシートを設置。視界は狭まるけど、安全のために前面以外は壁で覆ってコックピットのようになっている。また、快適性を上げるために、冷風機能付きだ。スイッチを押すと、ゴーレムが備え付けの付与魔道具を使う、という形で冷風を噴射させる。仕組みは単純で、氷の礫を生成するアイスブリッドと微風を吹かせるブリーズを組み合わせただけだ。アイスブリッドの魔法はこの機能ために、新しく習得した。
また、魔物と間違えられないように従魔の印をよく見える部分に刻印。加えて、貴人が乗るのなら、紋章を掲げる可能性を考慮して、取り付け部分を作っておいた。こういう紋章は許可無く勝手に作ると怒られちゃうので、引き渡し後にギュスターさんのほうで取り付けてもらう形だ。
その甲斐もあって、納品用の多脚ゴーレムはなかなか高級感が溢れる出来に仕上がったと思う。これなら、ギュスターさんが乗ったとしても違和感はない……はず。残念ながら、ハルファたちの同意は得られなかったけど。
虫たちの一部が逃げ出したものの、大きな問題とはなっていないようで、依頼は無事達成と判断された。今は異常の原因を探っている段階みたいだ。
ヘラクレスが統率していたのではないかという意見もあったけれど、まだ他の原因を探っている段階。何故なら、ヘラクレスは強力な亜種だけど、ゴブリンキングのような上位種というわけじゃない。同種族を統率するような能力はないと言われているんだ。
他に可能性があるとすれば、何かから逃げてきたという可能性。
「クロムビートルの生息地である東の岩場に異常はなかった。さらに東に何かある可能性はあるが……あそこは立ち入れないからな」
そう教えてくれたのは、先日の件でリーダーを務めていた男性だ。彼は調査に関しても指揮をとっているんだけど、行き詰まっているみたい。
そこは、この辺り一帯における有力者であるギデルデ氏族にとって特別な場所らしい。基本的には立ち入りも許可されていないんだって。もちろん、異常が起きているのが明らかなら、話は別なんだろけどね。今のところ目に見えてわかる範囲で不審なところはないから、無理を通すのも難しいみたい。
ただ、やっぱり気になるよね。ガルナラーヴァが気にしていることにも関係があるかもしれないから。
こういうときに頼るべきはやはり権力者だ。幸いなことに、ギュスターさんに面会する用事がある。そのときにお願いしてみるのはありだろうね。
というわけで、ここ数日は頑張ってゴーレム作り。そして、ついに納品用の多脚ゴーレムが完成したんだ。
ギュスターさんが逗留している場所は聞いてある。氏族会議なんかのために用意されているゲストハウスがあるんだとか。大勢で押しかけるのもなんだから、僕一人で向かうことにしたんだけど……ちょっと心細い。ローウェルについてきてもらえば良かったかな。
たどり着いた先は大豪邸……かと思ったら、意外とこじんまりしている。いや、もちろん十分に立派なお屋敷なんだけど、思ったほどじゃなかった。有力者たちが連れる護衛の人数を考えると、複数の有力者が集まったら確実に収容キャパを超えるはずだ。
ということは、全ての有力者たちがここに集まるわけではなくて、ここはレイノス氏族に割り当てられた場所ってことかな。他の氏族関係者がいないのなら、幾分気は楽だ。
門で見張っていたのは知り合いの護衛の人だったので、用件を伝えるとすぐに通してもらえた。案内に従ってたどり着いたのは、屋敷の庭だ。そこにはギュスターさんに加えて、見知らぬ男性がいた。
男性の年齢はギュスターさんと同じくらいかな。引き締まった体は戦士のように見えるけど、護衛という雰囲気じゃない。ギュスターさんと対等に話していることから親族なのかもね。あんまり似てないけど。
「おお、トルト! 良く来たな。例のものが完成したとか」
「はい。納品しようと思って持ってきたんですけど……」
この場で出しても良いのかな?
多脚ゴーレムはパッと見、蜘蛛型の魔物に見えなくもない。ギュスターさんや護衛の人達はすでに見ているから大丈夫だろうけど、初見の人にいきなり見せていいものかな。さすがの僕も、異形のゴーレムを見た人々が思った以上に驚くことは学んだ。
「この男のことなら、気にしなくていい。さあ、早く見せてくれ」
こちらの躊躇に気がついたギュスターさんが急かしてくる。ギュスターさんはこう言っているし、例の男性も問題ないとばかりに頷いたので、ギュスターさん用の多脚ゴーレムを収納リングから取り出した。
と言っても、稼働状態のゴーレムは収納リングに入らないから、今は抜け殻のような状態だ。ギュスターさんの許可を取って、改めてクリエイトゴーレムを使うと停止していたゴーレムが動き出した。
「おお、以前見たものよりも立派だな!」
それを見たギュスターさんが笑顔を浮かべて手を叩く。結構、手間を掛けたから気に入ってくれて良かったよ。
最初は、マナ充填機能だけつければいいかなと思ってたんだけどね。材料の受け渡しのとき、ルランナさんに用途を聞かれたから、軽い気持ちで話したら――……
「高額の報酬をいただくのでしたら、それに見合った性能にしませんと!」
と言われてしまった。
まあ、確かに報酬に白金貨一枚をもらうのに、ゴーレムを作って「はい、おしまい」ではちょっと不義理な気もする。ギュスターさんはゴーレム好きの同志なわけだし、できれば喜んでもらいたいと僕も思っていたんだ。ルランナさんが監修してくれるというから協力してもらった。
まず、乗り心地を考えてシートを設置。視界は狭まるけど、安全のために前面以外は壁で覆ってコックピットのようになっている。また、快適性を上げるために、冷風機能付きだ。スイッチを押すと、ゴーレムが備え付けの付与魔道具を使う、という形で冷風を噴射させる。仕組みは単純で、氷の礫を生成するアイスブリッドと微風を吹かせるブリーズを組み合わせただけだ。アイスブリッドの魔法はこの機能ために、新しく習得した。
また、魔物と間違えられないように従魔の印をよく見える部分に刻印。加えて、貴人が乗るのなら、紋章を掲げる可能性を考慮して、取り付け部分を作っておいた。こういう紋章は許可無く勝手に作ると怒られちゃうので、引き渡し後にギュスターさんのほうで取り付けてもらう形だ。
その甲斐もあって、納品用の多脚ゴーレムはなかなか高級感が溢れる出来に仕上がったと思う。これなら、ギュスターさんが乗ったとしても違和感はない……はず。残念ながら、ハルファたちの同意は得られなかったけど。
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